第十四話
帰宅後。日暮が見つけてくれた三枚のCD音源を、俺はノートパソコンへと取り込んでいた。
一枚のCDにつき数曲が入っていたが、厳密なドル研オリジナルソングはA面のみ。二曲目以降は既存の楽曲を耳コピしたものが収録されていた。
話によると、作曲は外部に依頼したものとのこと。一曲あたりの相場などは分からないが、当時の財政ではオリジナルは三曲が限界だったのだろう。
とりあえず音源ファイルをグループLINEに送ってから、俺はすぐさま別の作業に取り掛かる。
音海が書いてくれた練習計画表を吟味し、素人ながらいくつかの疑問点をリストアップ。俺たち音響その他雑用係はアイドル組の進度に引っ張られることになるため、ある程度余裕を持った計画を立てることが肝要だ。
とくに音響については、実際にマイクを繋いで掛け合いをするなど、実践的な練習が不可欠だ。俺と日暮は完全なる初心者なので、ここは絶対に軽視できない。本番を見据えた練習は最低でも三回、必要になってくるだろう。
「……」
計画表とにらめっこを続けながら、俺は全体的な日程を詰めていく作業に入る。
……こうなると俺だけが仕事をしているようにも思えてくるが、あいつらにはきちんと自分の役割を与えている。
音海には、過去の映像から振り付けの分析を。
日暮には、部室に眠っている音響機材の操作方法を。
そして四条には、歌唱の基本となる腹式呼吸のやり方を。
「……やってくれてると、いいんだがな」
目の届かないところの話だから、こればかりは考えていても仕方がない。
カップに淹れておいた甘めのコーヒーをすすりながら、俺は再び作業へ没頭した。