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幼なじみの都落ち  作者: なつまつり
プロローグ
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プロローグ

『――今週の第三位は、SNSで話題沸騰中の新鋭アイドル【シークレットシーク】の新曲!』


 夏の昼下がり、気まぐれにテレビをつけた瞬間だった。

 まるで運命が、いたずらにその話題を差し向けてくるかのように。


『【シークレットシーク】のメンバーは、音海円花(おとみまどか)さん、関口朱音(せきぐちあかね)さん、柚木美海(ゆずきみなみ)さん。実はこの三人、なんと全員が現役の女子高校生なんです!』


 忘れたころにむず痒くなってくる、膝小僧のかさぶたとどこか似ている。

 幼なじみが残した、その古ぼけた傷痕からふっと目をそらすように。

 俺は半ば無意識に、あさっての方角へと視線を泳がせた。


『彼女たちのセカンドシングル「ゆめうつつのキス」が週間2万8千枚を売り上げ、堂々のトップ3に躍り出ました。今冬には初の三大都市ツアーも控えており、今後の活躍にも期待がかかります――』


 再び画面に目を向けると、順位のテロップとともにMVの一部が流されていた。


 メンバーがお互いに「あーん」してお菓子を食べさす。水の抜かれたプールサイドで駈けさす。よく分からん笑みを浮かべさす……と、まさにMUSIC VIDEOといったところか。


 そして――燦然と輝く美少女三人衆のなかに、めまいがするほど見知った顔がいる。


 音海円花。他のメンバーと比べても、あらゆる部位が一回り小ぶりだ。それでも天性の顔立ちにメロウな声質、誰にでも振りまける無邪気なほほえみ、見ているだけで際立つ清純さ。アイドルたるに値するだけの素養を、あいつは確かに持っている。


 彼女の実家は、向かいの三軒隣に今もあった。

 数えきれないほど一緒に遊び、毎日のように他愛もない会話を交わし、ときには大げんかをした。一緒に風呂に入ったことも……まあ、それは片手で足りるほどの回数か。


「……それがどうした、ってな」


 ぽろりとまろび出た独り言とともに、俺はテレビの電源を切った。

 おそらく俺はもう、彼女と再会することはないだろう。


 あいつはこれからもアイドルを続ける。もしかすればトップまで上り詰めるかもしれない。

 芸能界でそれなりの地位を築けば、あとは成功者の人生が待っている。凡庸な俺の人生などとは比較にもならないだろう。そもそも現時点でスケールが違いすぎる。


 彼女とは、たまたま幼少期を一緒に過ごしただけだ。言ってしまえば赤の他人にすぎない。

 反面、俺の日常は彼女みたく画面の向こうにはない。


 生まれたときから形を変えることなく、ずっとこの町にある。

 ――五年前。さよならさえ交わすこともないまま、それはもう決定的に、絶望的なほどに、俺たちはそれぞれの歩みを違えたのだった。



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