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赤い瘴気の世界より  作者: アガクロ
プロローグ
9/10

魔剣の魂

 誰かの記憶がラージュに流れ込んで来た。

 彼女は、黙々とそのクリスタルに祈りをささげていた。

 隣にはネイバーの様な男が隣に立っていた。

 祈りが終わった少女、リーシアがゆっくりとクリスタルから離れた。

「ネイバー、いいのですか?あなたは魔剣の巫女の護衛などなりたくなかったはず、あなたは自由であるべきだと思います」

「いえ、ようやく気付きました、魔剣の巫女を守るのが私の役目、今までの自分が青臭かったのです」

 リーシアは帰ってきた答えに悲しそうに顔を伏せた。

「あなたも縛られるのですね、あなたのおば様のように」

「いえ、私は選ぶことができました、十分にその時間はあった、あなたのおばのフィーア様よりももっと自由に」

「ネイバー……いいでしょう、あなたがその道を選ぶのであれば、私の魂が魔剣によって尽きるまで私を守るよう、命じます」

 ネイバーはリーシアのその言葉にただ一言「おおせのままに」とそれだけ答えた。


 ラージュは目覚めると、不思議な赤いモヤが漂う空間にいた。

 隣にはリーシアがおり気を失っていた。


「リーシア」とラージュは言いかけてその言葉を引っ込めた。

 先ほど自分が剣を投げつけ、走り出し暴走してしまった事を思い出したのだ。


 ラージュが立ち上がろうとした瞬間。

「ラージュ」とリーシアが言って立ち上がった。


 ラージュはビクリとしてリーシアから3歩ほど遠ざかりうつむいた。

「ラージュ、ごめんなさい、関係のない村の人達やあなたを巻き込んでしまって」


「いや、もういいんです。それよりも俺の方こそ悪かったです、ごめんなさい」

 リーシアはラージュの言葉に目を丸くして。

「謝るのは私の方です、ごめんなさい」

 と言った。




「ところで、この場所はどこなんでしょうか?俺たちはどうしてこんな場所に?」

 ラージュは少々不気味なこの場所をリーシアに尋ねてみた。


「私は夢でこの場所をよく見るんです」

 リーシアの突拍子もない夢の話にラージュはポカンとした。


「夢?じゃあ俺の見てるこれも夢なのかな?」

 ラージュは混乱しながらリーシアに問う。


「いいえ、ここは夢であり夢でない場所。このまま引きずりこまれれば、元の世界には戻れない」

 リーシアの言葉の恐ろしさにラージュはドキリとした。


「この場所は魔剣ファルメールの魂の中、しかもかなり深い場所に着てしまったようですね」


「俺たちはこの場所からは戻れないのか?」

 ラージュはリーシアに恐る恐る尋ねた。

「ええ、恐らく。ラージュごめんなさい、この場所に来るのは魔剣の巫女たる私の役目、魂を削り魔剣を封じ、この場所に落ちていくのが私の役目でした」

 リーシア話を聞いてラージュはハッと顔を上げる。

 この少女の運命を知って。



「安心せい、魔剣の巫女と我が主よ」

 赤いモヤの中から、それを否定する幼い少女のような声がどこかから響いた。


 リーシアとラージュは辺りを警戒する。

「そんなに警戒せんでもよい、取って食いはせん」

 幼い声がそう答えた。


「あなたは誰ですか?姿を見せてください」

 リーシアが警戒したまま声に呼びかける。


「姿はまだ見せることはできぬ、だが名は名乗ろう、我はファルメール。魔剣と呼ばれておる」


「魔剣……ファルメール」

 リーシアは口ずさんだ。


「リーシアよ、お主は魔剣の巫女の中でも一番優秀だぞ?真の魔剣の巫女として覚醒する日も近いであろう」

 幼い少女の声がリーシアにそう語りかけた。


「私が?」

 リーシアは呆気にとられた顔をする。


「この場所まで来て魂に溺れておらぬ物はリーシア、お主と隣の少年だけじゃ」

 声はなお話続ける。


「リーシアよ魔剣の巫女として、そこの少年を助けるのじゃ、さすれば道は開けるであろう」

 幼い少女の声がそう告げた瞬間、ラージュとリーシアは現実に引き戻された。




 目を開けると、リーシアの頭を膝に乗せ悲しそうな顔を隣でしているネイバーがラージュの目に入ってきた。

「ネイバー」

 リーシアが目を開けネイバーに声をかけた瞬間、ネイバーは静かに泣き始めた。

 ラージュは静かに立ち上がりそれを隣で見ていた。


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