憎悪と悲しみの狭間で
ラージュは獣のような声を上げながら、剣を掲げネイバーに向かってきた。
歴戦の剣士であるネイバーでもそれは圧倒されるものがあった。
ネイバーはラージュの魔剣の瘴気を受け流すために、自らの剣にエレメントを集中させ、強化する。
剣士のエレメントの使い方としては身体強化が主になるが、剣撃にも応用が利く。
だが、目の前のラージュに対して、自分の剣をそのまま使っては間違いなく剣そのものが耐え切れなかった。
ラージュがネイバーに向かって剣を振るう。
ネイバーはそれを受け流した。
「しっかりするんだ、魔剣に飲まれるな」
「お前が、お前たちが俺の村を」
ラージュはそう言ってネイバーの言葉を振り払う。
ラージュの攻撃は決して強い物ではなく、技術もなく振り回しているだけだった。だが、魔剣がまとった瘴気が一番厄介だった。
その瘴気が地面に触れれば地がえぐれ、草木はなでただけで一瞬で枯れた。
「こんなことをしても無意味だ、俺たちの話を聞いてくれ」
「うるさい、俺の村を返せ俺の村を返してくれ」
ラージュはそう言ってネイバーにまた剣を振り下ろそうとした。
だが次の瞬間、ラージュは不思議な力を、こみ上げてくる力の奔流を感じ取った。
怒りで理性を失いかけていたラージュにも分かった。
もう一度暴走する。
「う、うわぁああああ」
ラージュは必死に力を抑えようとした。
「また魔剣が、あの時みたいに、ダメだダメなんだ」
ラージュは力を抑えるためにもがき苦しむ。
「ラージュしっかりするんだ、落ち着いて心を鎮めるんだ」
「ダメだ、ネイバーごめん」
その瞬間ラージュを赤い光がより一層激しく包み、力が爆ぜようとした。
だがその力が爆ぜる直前声が聞こえた。
「我の命はあなたのもの、我が命にて貴方の怒りを鎮めたまえ‼ソールレクイエム‼」
恐らくリーシアの声であるだろう声がラージュには聞こえた。
そしてラージュはゆっくりと気を失った。