現れた魔剣
ラージュはひたすら走る。
どうしてリベリト村があんなことに?どうしてみんなが?
勝手過ぎる。
あんな勝手は許されない。
俺は絶対に許せない。
ラージュの中で同じような感情が渦巻いていた。
こんな町出よう、俺はどうしたらいいのだろうか?リベリト村をあんなにした無責任な人達とは一緒にいれない。
雨が降ってきた、ラージュはラファンの町の門に向かって走り出した。
ラージュは町の門まで来た。
門番も不思議に思ったのだろう。
「君、どうしたんだ?外には危険な魔物だっているんだ、おい待て‼」
門番に声をかけられたラージュはその言葉を振り切って走り出した。
その後からネイバーが現れ、門番に問う。
「ここで黒い髪の少年をみなかったか?」
門番もネイバーに問う。
「さっき飛び出して行った、連れか?」
「ああ」
ネイバーはそう言ってラージュを追いかけた。
ラージュは一人道を歩く、目に涙をためて。
そんな時、木陰から物音がした。
「うぉおおおおん」
獣の鳴き声、ラージュはハッとして止まる。
剣はリーシアに投げつけたため今は持っていない。
「俺もここで終わりか」
ラージュが膝をつく。
ラージュの周りに5匹ほど赤い目をした魔物化している熊が現れた。
ラージュの周りをグルグルと周りながら、ゆっくりとラージュに間合いを詰めていく。
「ラージュしっかりするんだ‼」
そこへネイバーがかけつけて言った。
だが、ラージュは全く動こうとしない。
「ラージュ、ラージュ‼」
熊の魔物2頭がネイバーに注意を向けた。
ネイバーに向かっていく。
ネイバーはそんな魔物の攻撃を受け流し、まずは一頭、だが3頭の熊の魔物はラージュの目前に迫っていた。
ラージュは熊の魔物の吐息を目の前で感じた。
もう俺は終わるんだろうか?
もう仕方ないんだ……終わる。
だが次の瞬間、ラージュは言い知れぬ憎悪と赤い光に包まれた。
ネイバーはここへ着いた瞬間から嫌な予感はしていた。だがラージュが赤い光を発した瞬間にもう決定的な物となった。
やはりラージュには魔剣が宿っている。そして今、もう一度暴走しかけている。
目の前の熊の魔物は、ラージュの放った瘴気の波動に砕け散った。
ネイバーは回避のため、風のエレメントを使い後ろに驚異的な距離を跳躍した。
「ラージュ、しっかりするんだ‼」
ネイバーがラージュに向かって叫ぶ。
ネイバーがラージュをもう一度目視した時、彼の片手には真っ黒な剣が握られ、その周囲からは、赤い禍々しい瘴気の光が発せられていた。