リーシアの苦悩とラージュの涙
ラージュは宿で朝食を食べ終わると、リーシアに呼び出された。といってもネイバーも当然の様についてきた。
ネイバーがリーシアの部屋をノックし、リーシアの返事が聞こえた。そしてラージュは部屋に入るようにネイバーにうながされた。
「リーシア、俺に用って何?」
ラージュは大体予想がついた、恐らくこれからどうするか?という事を話すのだろう。昨日は冒険者ギルドにまで登録したのだ。おそらく間違いはない。
「ラージュさん、少し手を貸してくれませんか?」
「俺の手を?」
ラージュは少し戸惑ったが手をゆっくりと差し出す。
その手をリーシアが取る。
「動かないでくださいね」
リーシアがそう言ってラージュの手を取って5秒ほどたっただろうか?
ラージュは手にしびれるような痛みを感じた。リーシアも手を引いた。
「やはり……」
リーシアが少し悲し気にそう言った。
ラージュには何も理解できない。
なんなのだろう?今まで起きたこと、すべてが意味の分からないものだ。
「ラージュさん、少し話が長くなりますがかまいませんか?」
リーシアはそう言って話し始めた。
昔、ライオ・ガリゼルという魔王がいた。ライオ・ガリゼルは現在の中央二大陸の一つ、現在の魔獄と呼ばれる場所を本拠地に、中央二大陸の一つ、神聖カーリン・バーン帝国に戦いを挑んだ。
戦いが始まってすぐに、お互いの勢力は拮抗、泥沼の戦いが始まった。そんな中、魔剣ファルメールと呼ばれる一本の魔剣の登場により、戦況は一気にライオ・ガリゼルの優勢へと転じた。ライオ・ガリゼルが振るう魔剣は彼が進む目の前の物を瘴気で破壊し尽くし、カーリン・バーン帝国は追い詰められていった。
だが、最後の戦いで恐ろしいことが起こった。
ライオ・ガリゼルの魔剣が暴走、大量の瘴気をまき散らし、現在の中央二大陸の一つをその強力な瘴気によって数年間何も生きることができない土地、魔獄へと変貌させた。
今現在では、魔獄は以前より瘴気が薄まってきたとはいえ、瘴気によって強力な魔物達の住処となってしまっているということだった。
「ラージュさん、あなたからは魔剣の気配が感じられます、長い間魔剣の巫女をしていた私が言うのです、間違いないでしょう。そしてごめんなさい、リベリト村が消失したあの日、私の力が及ばぬせいで魔剣が暴走して……しまったのです」
リーシアは瞳に涙をためながらそう言い切った。
「そんなの、あなた達の勝手じゃないですか、俺の村を、みんなをあんなにして、返してください‼村をみんなを‼」
そう言った後、ラージュは剣をリーシアに向かって投げつけた、それをネイバーが自分の剣で振り払う。
ラージュは涙を流しながら部屋から走り出て行った。