運命が回り始めた日
ラージュは16歳になった、ラージュの朝は早い。
まずは軽くパンを食べ、畑に出かける。リベリト村では主に農場は村長の持ち物であり、収穫はみんなで分け合うことになっていた。その点リベリト村の村長はよくやっていた。なんでも昔は有名なエレメント(加護)使いで、領主に匹敵する権限を持っていたらしい。
畑に向かう途中にラドックに出会った。
「ラドック、夜の見張りお疲れ様、今日は大丈夫だったみたいだね?」
「ラージュか、もう眠くてしかたないよ。鹿を追い払いはしたけど、魔物は出なかったからまぁいいほうだ」
ラージュとラドックはそんな言葉をすれ違いざまに交わしながら、お休みと言って別れた。この世界では、瘴気によって狂暴化した動物を魔物と呼んでいた。
ラージュ達男は畑作を、女性は家事を毎日忙しく繰り返していた。
朝の畑作業が終わると、少し遅めの朝食を食べる。
今日は母のエルが作った煮豆のスープだ、少し香草が入って味がついていた。
「今日はスープに味がついてるね、毎日食べれたらなぁ」
「食べれるだけましだと思いなさい」ラージュがぼやくと、母のエルに少ししかられた。
父のビルはそんなラージュの隣で黙々とスプーンを動かしていた。
そんな日々を繰り返していたある日、いつも通りラージュが畑で作業をしていると、遠くから地を激しく踏むような音が聞こえてきた。
そして二頭の馬とその上に二人の影が見えた。
誰だろう?こんな村に?ラージュはそう疑問を抱いた。
そうこうしているうちに、二頭の馬の内の一つからラージュと同年代ぐらいの長く青い髪の毛の女の子が降りてきた。服装は上着は皮の服、そして、下にはスカートを履いていた。
「この村の責任者に合わせてください。お話があるのです」
少女は馬から降りてきてラージュにそう言った。
「あー、村長ですね、村長ならこの道を奥に行った突き当りの家です」
「リーシア様、行きましょう」もう一頭の馬に乗っていた大きな剣を担ぎ、動きやすそうな皮の服を上下に着た男が少女にそう言った。
「ええ、この村に迷惑をかけなければいいのだけれど」
「リーシア様、いずれは食料の補給などもしなければなりません、お役目は大切ですが仕方のないことです」
少しためらった様な少女に男はそう答え、二人とも馬屋に馬を止めて村長の家に入っていった。
ラージュは村長の家を眺める、何か胸騒ぎがした。