祈り年の日
リベリト村という農村にラージュという少年がいた。ラージュは黒髪で元気で少しやんちゃな子供だった。今はまだ9歳、同い年のミルフィ、そして三つ年上の短い茶色い髪の毛の少年ラドックと仲良く遊んでいた。
そして今年は祈り年、10歳になる。
この世界ル・シルガは生まれたとき、そして10歳ごとに教会の人によって加護を与えられる。ラージュ達はその祈り年の日が1週間後に近づいていた。
「ラドック、祈り年って何をするの?」薄茶色の髪の毛をポニーテールに束ねたミルフィはかわいらしく小首をかしげた。
「ラドック、どんなことするの?ねぇ僕も気になる教えて、ねぇねぇ」ラージュはラドックの腕を強く引っ張りながらそう問う。
「ラージュ引っ張るのはやめろ、まだ1週間も後の話だろぅ?」
「「まてないよ」」ラージュとミルフィはラドックの服を引っ張る。
「待て待て、説明してやるから、服が伸びるから‼」ラドックは優しくラージュとミルフィの腕を振り払った。
「綺麗な透明な物をのぞき込むだけだ、俺の時は茶色い色だった。でも人によって見える色は違うらしい」
「それだけ?」ラージュはラドックに問う。
「それだけだ」ラドックはうんうんと首を縦に振る。
「なーんだ、つまんない」ミルフィは興味をなくしたようにそう言った。
1週間後、祈り年の日になった。
村で唯一10歳のラージュとミルフィは村長の家の前までラドックに呼び出された。
村長の家の前では白い服を着た神官が5人ずつ透明な丸い石の前に立っていた。この時のラージュとミルフィには神官という言葉すらわからなかったため、二人は少しためらったようにラドックの後ろに隠れた。
「ラージュ、ミルフィ心配するな、悪い人たちじゃない」
「ラドック、もう少し言葉を選びなされ」村長がラドックにそう言った。
神官の中でも髭をたくわえた年を取っている年長の者が村長を手で制し、ラージュ達に微笑んだ。
「村長、その様なことを言いますと余計に怖がられてしまいますぞ?」髭の神官が優しい顔でそう言った。
村長は「これはこれは、申し訳ない。そうじゃな」と言って
「まずはミルフィ前へ」とうながした。
ミルフィはおどおどとラドックの背中の後ろから前まで出て行った。
「ミルフィと言ったな?この透明な石をのぞき込むのじゃ簡単でじゃろう?」髭を生やした神官は優しい声でミルフィにそう言った。
ミルフィは神官たちが囲む透明な石の前まで行ってその石を見つめた。
石の色はたちまち透明から赤い色に変化した。
「ほう、火の様じゃの」髭を生やした神官はそう言って。
ミルフィにこちらに来るように手招きした。
「汝の運命に火の加護があらんことを」
ミルフィはホットした様子で。またラドックの後ろまで走って戻った。
「つぎはラージュ前へ」村長はラージュにそううながした。
ラージュも恐る恐る透明な石の前まで歩いて行った。
そして透明な石をのぞき込む。
だが、しばらくたっても透明な石は透明のまま反応がない。
神官達がざわついた。
「神に祝福されていないはずはない、どうしたものでしょうか?」5人の神官のうちの若手の神官がそう言う。
「コレ」と髭を生やした神官は困ったようにそう言った。
「ラージュと言ったかのぉ?」髭を生やした神官はラージュを手招きした。
「汝の運命に加護のあらんことを」
髭を生やした神官はラージュにそう言った後、身支度をし、村を出て帰っていった。