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筋肉とプロテインのファンタジー  作者: はむはむ
第1章・まずは訓練。
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7、例外中の例外ですからね。

 それからユウトはアルテルに連れらるがまま、他の勇者達あ集まという『冒険者ギルド(冒険者は勇者の別名)』に挨拶しに行った。


 冒険者ギルドは村の隅にある酒場の様な体裁の建物であり、あまり清潔感は感じられなかった。

 勇者達はあまりこの建物を利用していないのだろうなと、ユウトは察する。


 あるいは、勇者の数そのものが少ないのでこの大きさでも事足りているのか。

 ユウトからすればどちらでもよい事だった。


「じゃ、入るぞ」


 そう言いアルテルはレバーハンドルのドアノブを下に押し出し、ドアを開いた。

 ギィィと蝶番(ちょうつがい)が鳴り、ユウトは思わず耳を塞ぐ。


「あっ、アルテルさん!」


 ドアを開けた途端、中から甲高い青年の声が聞こえてきた。


「やっと帰って来たんですか。さっき村に魔族狼狗(ヘル・ハウンド)の襲撃があったって聞いたので、心配しましたよ?」

「そりゃ無用な心配だな」


 見ると中には、椅子に座った一人の少女がいるだけだった。

 白っぽい肌に金髪、それから尖った耳を見れば彼女がこの世界の住人であることは明白である。


 アルテルはごく自然な流れで少女の向かい側の椅子に座った。

 ユウトの席もあったが彼は座ることを拒絶し、そのまま会話が始まる。


「まぁ、芸術的に叩きのめしてやったから。一応言っとくが、今回は任務外の仕事だから金は要らん」

「そうは言いつつ、正式な任務内でも滅多なことが無いと金を請求しませんよね」

「芸術に金は不要だからな。必要なのは爆発だけだ」


 少女は苦笑し、本題に入るようにユウトの方を見た。


「ところでアルテルさん、隣の方は……?」

「俺は齋藤優斗、『マッチョ』と呼ばれたことがある」


 ユウトはアルテルが答えようとしたのを遮って、この前アルテルが通称を名乗っていたのを真似て答えた。

 

 アルテルは赤面し、手で顔を覆う。

 少女は遠慮がちに苦笑し、アルテルに目で説明を求めた。

 アルテルは顔を覆ったままユウトを指差して云う。


「……コイツは最近転移してきた勇者だ。今日はコイツを、『()()()()()()()』として登録すべくやって来たんだ」

「Sランクに!?」


 少女は驚きの表情を見せ、バンと机を叩いて立ち上がった。


 冒険者ギルドはE~SSまでのランクが設定されている。

 本来新米冒険者が登録するのはDランクなどからなどからであり、極稀にAランクを見かける程度だが……

 ……長年ここにいる彼女も、Sランクを申請するケースは見た事が無かった。


 彼女は絶句したままユウトを見つめた。


 彼は「なんだ」と言いたげに首を傾げ、呑気に欠伸をする。

 アルテルが言った。


「まー、ゆっくり考えてくれ。美しい芸術的爆発を起こすには、長い長い下準備がいるからな──()()()サン」


 少女、いや受付嬢は困惑の表情を拭いきれずにいた。

 顎に手を当てて目を瞑り、深く考える。



 常識的に考えてみれば、答えは『NO』であるべきだろう。

 本来Sランクとは、何十年も修行を続けてようやくなれるものだ。

 初心者がなれていい物ではない。

 しかし、だからと言って『禁止』されている訳でもない。

 目の前の人物の立ち位置、そしてギルドのルールを鑑みるに──



 長年受付嬢をやっている経験は伊達ではない。

 ここまでの思考時間は、十秒に満たなかった。

 目を開くとともに、ため息交じりで彼女は言った。


「アルテルさんがそう言うなら……でも、今回は例外中の例外ですからね?」

「おっと、無理アリアリだと思ってたんだが……意外と通んだな、こーゆーの」

「乱用禁止です。それに、アルテルさんじゃなかったら断ってました」


 そう言ってアルテルは、静かに椅子から立ち上がった。

 軽く「じゃぁな」程度に手を振り、そのまま振り返りもせず歩き出す。

 ユウトはそんな彼を追った。


 彼は、アルテルの背中を掴んで尋ねた。


「なんだ、もう話は終わりなのか?」

「ああ。これで晴れて、お前は今日からSランクだ」


 彼は蝶番の金属音と共に、ドアを開いた。

 温かい空気が彼らの頬に当たり、日光が明るく照らしている。

 しかしそんな晴れやかな転機とは相反して、ユウトの思考の中には引っかかることがあった。


「なぁ、アルテル」

「ん?」


 アルテルは立ち止まり、ユウトの方を振り返った。

 彼はその引っ掛かりを解明すべく尋ねる。


「さっきの少女が、『アルテルさんだから』と言っていた。何故だ?」


 ユウトはそれが不思議でならなかった。


 目の前にいるのはどう見てもヒョロガリなのに、どうしてギルド内での立ち位置を確立できているのか。

 

 アルテルは「なんだ、そんな事か」と独り言のように呟き、ウインクした。


「そりゃ俺が、SSランクだからに決まってんだろ」


《キャラ紹介》

・ギルドの受付嬢

  金髪、白肌、尖った耳と典型的な異世界の少女。幼い見た目とは裏腹に長年受付嬢の仕事を受け持ち、その美しい見た目故にギルドの男達からしょっちゅうナンパされている。それが成功したことは無い。

  低身長について馬鹿にすると、全てを破壊しつくす悪鬼と化す。

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