天使の昼寝
四日目の朝。
窓ガラスから、上を見上げると眩しい太陽が見える。今日もいい朝だなぁと思いながら昨日のことを考える。
昨日は、ラージ=クライムを捕縛、そして、その騎士達を滅殺した事をアイリスの父であるバトロンに伝えると、まず第一に驚き、次にアイリスの心配を長々とし、最後に俺達を褒めた。
(あそこの騎士は、我々より強くは無いが、よく勝てたな。我が娘を救ってくれてありがとう)
「アイリスを守るのは当然です」
そう言うと、アイリスは少し嬉しそうな表情になり、それを見たバトロンは少し不満そうな表情になったが、笑顔を浮かべ、感謝を言う。
(これからも宜しく頼む)
「分かりました」
(ダーク君、私と一緒に酒を飲まないかい?娘の事で聞きたいことが)
あれ?これまさか、アイリスとどうゆう関係とか聞かれるパターン?ヤバいと思い咄嗟に喋る。
「え?あ、イヤー」
だが、俺の考えを地平線の彼方にぶち込むように、話を遮る。
(そうかそうか、流石付き合いがイイな!)
結局、肩を掴まれ、俺は酒を遠慮したが、バトロンは飲みまくり、最後ら辺はアイリスの可愛い姿を交流しあう会となり、俺達は同士、否兄弟となった。
その思考に辿り着き悶える。何故俺はあの時あんな言っていて恥ずかしくなるような事を言ったんだ。
そうだ、最初あたかも自分だけアイリスの可愛さ、尊さを知っているかのように言ってきたから、腹が立ったんだ。
しかし、あそこで言い返さなければ、人としてどうかと思う。
何故なら、好きな事を好きと言い、嫌いな事を嫌いと言えないような世界は間違っているからだ。
俺も小六の頃、クラス内で何の食べ物が好きかを発表しようという話になった時、ビーフジャーキーが好き!と言った瞬間、場が凍らしたのを思い出した。
あれはおかしい。周りはコイツは何を言ってんだっていう雰囲気だったし、女子はオッサン?などという話し合いをしていたし、お前ら大人を知らないの?と聞きたくなったが、圧に負け、言わなかった。
そんな悲しい過去を、思い出すんじゃなくて、もぅどうでもいいわ!という心持ちで、食堂に行く。
バトロンと対面。お互い顔を少し赤らめている。昨日の夜の件だろう。
「なぁ、俺達は
友達だよな、そう友達」
(お、おぅ、秘密を共有した友達だ。何か困ったことが有れば、直ぐ相談したまえ)
「あ、あ、助かる」
内心では、俺達は、昨日のあんな事を言い合ったが、ハメを外しただけ。
だけど、他人は流石に意識しちゃうから、間をとって友達から始めましょうという意味合いの応戦をあの短い言葉で表していく。
中間、とても良い言葉である。
君は赤色が好き?嫌い?と聞かれた際に中間かなと言えばいい。まぁそれを言うと、質問の意味わかる的な顔をされる。こっちはどっちでもいいから的な意味合いを込めてるんだよ。分かれという気持ちになる。
現在は昼。朝食を食べてから、アイリス、バトロンそして俺らで談笑していると、あっという間に時間は過ぎ、昼飯の時間。
食べ終えるとアイリスは眠くなったようで昼寝に適する場所があるんですと、秘密を共有する恋人のように自身の秘密を曝け出し恥ずかしそうに言う。
そのため、ヘェ〜と言った際、上擦った声を出してしまったかもしれない。
たどり着いた場所は、美しい花が、円を描くように沢山咲いていて、中央は平地となっている。周りには、壁があり、昼寝のためだけに作られた場所だろうか?
(ココは、昼寝に最適なんです。風は心地よく、周りの花達は、目の保養になり、香りもリラックス出来るんです)
「へぇー、気持ちよさそう」
俺が心底羨ましそうに言ったからか、アイリスは自分の大切な場所を褒められて気分が良くなったらしく、普段言わなさそうな事を言う。
(じゃ一緒に寝ます?)
あれ?これワンチャン有る?と思ってないと言ったら嘘になるかもしれないが、俺は明鏡止水のスキルを使い、心を無にする。
「無」「無」「無」
今の俺はマリアナ海溝の海の深さより深い。まぁそんなのは無いが。
そうして無心になり、一緒に寝る。明鏡止水を使った俺は一瞬で眠気が襲ってくるかと思ったが、まさかの眠気も無くしている。
その為、明鏡止水を眠気を無効化にしないよう意識すると、急激に身体が癒され、眠気が来る。
昔言っていた、俺は木の葉だから眠気は来ない筈だが、来るのは元人間だからだと言っていた思考を全く思い出さずに気持ちよさそうに寝た。(私は緊張してるのに)
アイリスの囁き声は、ダークの耳に届かず、涼しくも冷たい風が花の香りを運ぶが如く、彼方へと、消え去った。
あ、あぁ俺は何をしていたんだったかなぁ。
そうそうアイリスに一緒に寝ようと誘われ、一緒に寝てたんだった。いゃ〜気持ちよかったなぁーと目を閉じたまま考える。
にしても、俺の右腕の中に何かいるような。その為、触ってみる。
何か、とても柔らかくて、弾力感の有り、小さな物を触っている気がする。
はぁ目を開けてみるかと思い、目を開ける。その瞬間、頭が真っ白になった。
なんで俺の右腕の中にアイリスが寝ているんだ!
それに、さっき俺が触ったのアイリスの可愛らしい小さな胸じゃね?
ヤバい、俺セクハラ。ロリコン犯罪者じゃないか。バトロンや、ライトにこのこと言ったら、俺は社会的、精神的に死ぬ。
それにこの事がアイリスに知れたら、俺はどんな表情をされるのか想像もつかない。
あぁ終わった。俺の人生は終わったと思った時、悪魔の囁きが俺を誘惑する。
黙っていれば誰も見ていないんだから大丈夫さ。逆に、今なら何でも出来るよ。こんな無防備な姿を襲わないなんて貴方男?
く、俺がこんな誘惑に負けるかよー。俺の年齢イコール彼女いない歴、更に童貞。
この俺が、悪魔の囁きに乗るほどの度胸があると思うかー!
悪魔は何か酷い事を言った後の様に、申し訳なさそうに、ごめんと言ってくる。
なんだか俺が可哀想な人みたいじゃないか。止めろよ同情の視線は。
そんなこんなで、今回の事は無かったことにし、アイリスが起きるのを待つ。
これまでの話は何処行ったと思った方。
勉強でのテストで、一生懸命頑張ったが、百点じゃなかった際の言い訳が、仲間に教えていたなどと言った人はいるだろう。
それは言い訳を人間は知らず知らずのうちに求めているからだ。因みに俺は意図的。
一生懸命、アイリスに胸をほぐした事を伝えるか迷ったが、俺だけが罪悪感を仕舞えば、アイリスは悲しまず、バトロンは怒らずに済む。皆がハッピーになれると考えたという過程に人は満足するので有る。
ファンタジーの世界なのにこんな平和でいいのでしょうか?いやいけない。遂に、ダークすら圧倒される敵?
次話をお楽しみに




