ダンジョン ボス
ダンジョン攻略は、すでに俺の記憶の中に無いが、唯一記憶に残っているのは四十階層のボスである、アースドラゴン。
名前の通り、地竜である。ランクAと言うまぁまぁな強さのはずだったのだが、俺とシャルム抜きで倒していた。
アースドラゴンは巨大で全長十メートル以上あり、茶色の鱗があり、奈良の大仏かのような威圧感があり、少し後退りした。
鑑定を発動すると、俺のステータスと同等程度だったため、かなり驚きシャルムに聞く。
「なぁ、あのアースドラゴンのステータス強くない?」
(ゴブリンキングの時も言ったが、魔物のステータスを人間に当てはめても、意味はないのじゃ。あくまでも、指標だ)
なかなか納得のいく説明だと感じた。
俺も実体験して、理解出来るところもあるし、ステータスに現れない技もあるだろう。
にしても、まだ俺の新しい魔法、暴風魔法と暗黒魔法を使ってない。
シャルムの氷魔法みたいになっている。
早く使いたいな。空気読んで、最も強い奴出てこいよ!こちらの理不尽な思考を読んだのか、アースドラゴンが悲しそうに鳴く。
(グァー)
まるでそんなこと言わないでと言っているようだが、知るかそんなのと言わんばかりに、ライトの影魔法で鱗を剥がしまくっている。
可哀想。なんか最近、魔物に対し、憐憫の視線しか浴びせてないような気がする。
そろそろ、我が魔力を浴びせたいな〜。
魔法で。戦闘開始から一時間が経過。
アースドラゴンが弱り始めた。アースドラゴンは回復手段を持ってないが、こちらはルカの回復魔法があるため、皆が万全の状態で戦っている。
アースドラゴンの攻撃手段は、爪で引っ掻く、突進、最後に地魔法である。俺はこれまで属性魔法を使ってくるのは初めてのため最初は観察していたが、岩を生成し、投げるや、地面から竹の子の様に鋭い突起物が伸びてくる技。
そして、自らの身体を地で覆い、頑丈になる。レパートリーは三つで有る。微妙に尽きる。
さらに全ての技に予備動作がある為、最初のみ苦戦し、その後はノーダメージである。因みに予備動作は、顎を下に下げる、足を上げ、振り下ろす、不自然に口を開けるなどである。
それらを我が家が誇るライトが直ぐに察し、指示し始めたのをシャルムが見て、言った言葉はこれだ。
(昔の魔王軍に欲しい)
やはりライトは天才の中の天才の様だ。
(ズドン)
この音はアースドラゴンが倒れた音だ。俺が想像していたドラゴンは、ブレスを吐いたりするんだが、今ではトカゲ程度にしか感じない。
これが勇者の責務か、辛いぜー。
ドロップアイテムは、Aランクの魔石、爪、鱗、鎧だった。俺は鎧を着たいとか全く思わない。
理由として、機敏さを重視するからだ。だったら、レベルアップ時に素早さを意識し上げればいいと思った方がいるのでは無いだろうか?
本音は、鎧より、マント的存在、ローブの方がカッコいいと思うからだ。
その為、鎧を着たい人に渡そうとするが、誰も欲しく無いらしい。
なんか、誰からも求められず生まれ、誰からも喜ばすことなしで死ぬ悲しい生き物=ドラゴンという方程式が成り立ってしまったじゃないか。ああ悲しいかな。
まぁ張本人は俺だが。
一応俺は魔力感知などを使い隠し扉などが無いか確認するが、全くそれらしき痕跡はないため、アースドラゴンを倒した際に現れた青い魔法陣に乗り、ダンジョンから出るのだった。
「なぁ、これ俺の修練になったのかな」
(勿論じゃ。確かに何もしなかったが、経験は力になる。それに勇魔の遺跡に行くならダンジョンは一回言っておいた方がいい)
「そんなに難しいの?」
(あぁ、Sランクの魔物が居るからな)
「Aランクの魔物を楽に倒せる俺らなら大丈夫なんじゃない?」
(Sランクの魔物はAランクの枠に収まらないからSランクと枠付けられるのであって、決してAランクの上位互換ではないのじゃ)
「分かった。Sランクには細心の注意を払うよ」そんな会話をしながら冒険者ギルドに向かう。シズの代わりの新しい受付嬢にアースドラゴンの事を伝えた。
「Bランクダンジョンにアースドラゴンが出現しました」
(はぁ?えーと冒険者カードを見せて貰っても)「はい」
(た、大変失礼しました)
冒険者カードを見せたら、慌てて謝ってくる。向こうは俺のひ弱そうな身体を見ていたずらだと思ったんだろう。失礼な。
人を見た目で判断するのはいけないことだと親から学ばなかったのか。プンプン。
かなり怒っている風を装うと、受付嬢が焦る。(大変失礼しました)
「次から気をつけて」
ふ、俺の寛大な心に感謝せよ。
そして、又々ギルマスと事情を話した。ガクラ曰く、BランクダンジョンにはBランクのボスモンスターが出る。Aランクが出現するのはダンジョンの進化の前兆かもしれない。
ということで、ギルマスのガクラからダンジョン調査を依頼されたが、きっぱり断る。
権力に屈しない。これが俺のポリシーだ!
だが、次にお願いされた護衛任務に関しては了承した。
内容は、貴族の男パトロン=ダラクというダラク家の貴族が、家に脅迫状が届き、オークションの主催者を辞めなければ娘の命は無いと書かれていたらしい。最初は悪戯だと思っていたが、脅迫状が届いてから娘の周りに変な人が現れたなど言われたため護衛依頼を頼んだらしい。
オークションの終わりの5日間のみの護衛で、報酬は金貨五十枚と聞き驚いた。5日で日本円、五千万円。どれだけオークション大事なんだと思った。
依頼の難度は不明だが、まぁお金は大切なんで依頼を受ける。まぁ少し貴族の少女を見てみたいと思ったりもしたが。
楽しみだなー。
アースドラゴン可哀想!普通の冒険者は、地魔法の予備動作などに気づくのはごく稀で、冒険者の先輩などに攻略法を聞いたりして対策を立てています。




