緊急事態 三
村の北に向かって歩いていく。砦に着くまで、50匹目ぐらい討伐した。これはかなりの量だ。
砦は、人間が飛び越えれるぐらいの高さで、見た目はボロボロの廃墟だ。
探知をし、大体200匹のゴブリンの拠点であることがわかった。
その旨を伝えると、ライトは瞬時に判断し、俺に頼んでくる。
(最初の先制攻撃にダーク様の魔法を使ってくれませんか?)
「分かった、従おう」
(今回の作戦は、先制攻撃をした後、陣形を維持したまま突撃し、後退していきます)
すると、ルカが心配なのか、ライトに質問する。(怪我しませんか?)
(確かに怪我はするが、突撃すると言っても、相手に背後を取らせないために、最初間を作り、徐々に後退しています。突撃しない方が、危険になります!)
サモンは、反対意見が無いのか、肯定の意を言う。
(賛成)
ルカも、決意を決め、皆に応援と意思表示をする。
(頑張りましょう。致命傷以外は治せますので)
ライトは最後の確認をし、俺に最終確認をし、合図を出す。
(では、頑張りましょう。ダーク様、魔法をお願いします)
魔法。それは魔力を使い、奇跡を生み出す現象。ダークがわざわざ俺に頼んだ。
なら、期待には期待で返す。これが俺の流儀だ。
これまで読んだ本、これまで使った魔法。シャルムの魔法の使い方を見て、学び、新たな魔法を開発しようとしていたし、修行の際、必死に考えていた。多重人格の獲得により、可能な範囲が広がり、何をするかさらに迷った。
結果一つの極論が出た。破壊すればいい。全てを破壊すれば、万事解決である。
小さな事なら、ウィンドスラッシュで事足り。
今回みたいな中規模で、錆びれているなら、被害を気にする必要無し。
という事で発動させる。技名はサウザンドインビジブルスラッシュである。意味は、千もの見えない斬撃である。
風魔法に闇魔法を合成、その後、魔力球の中にウィンドスラッシュの小型版を沢山作り、中を高速で回転させる。魔力を今回は十倍程圧縮し、球体を中心に投げる。
その発動後の結果が百体のゴブリンの死骸だ。
中心に投げられた魔力球は地上か三メートルぐらいのところで止まり、風の刃、ウィンドスラッシュを無造作に放つ。
放たれた斬撃は、地を破り、ゴブリンを切断、建物を壊していった。そんな魔法、サウザンドインビジブルスラッシュにより、俺に沢山の経験値が入ってくる。
確実にレベルアップしたと思ったが、戦い中なので自分に鑑定はしない。
魔法は、三十秒間持続した。あまりの魔法の効果に、皆絶句。
ちょっと引かれてしまったか不安だったが、シャルム、ルカ、ライト、サモンからの厚労の言葉を受け、かなり嬉しかった。
(流石は始祖の吸血鬼を従えてる男だ)
(お兄様凄い。やっぱり兄様はかっこいいね❤️)(常に予想外を行くダーク様、素晴らしかったです)
(ダーク様のレベルまでは行けないと思いますが、せめて足元までは登っていきます)
ふ、引かれたのではなく、惹かれたか。はっはっはー。
これが、普通の高校二年の実力。
別に、ボッチでラノベばかり読んでたとか、彼女いない歴イコール、年齢とかじゃ無いしー。
考えていて、悲しくなる。
ルカが、潤んだ目で俺を見つめてくる。俺は警戒する。戦闘中に何を言い出すか不安で仕方がない。
(お兄様。この戦いが終わったらデートしてくれませんか?)
「え?いや、あの」
すると、上目遣いで、手を祈りの構えをして囁いてくる。
(お願いします。私のこと嫌いですか)
すると、突然、シャルムが、ルカだけズルい。我もと言い出す。
「分かった、両方この戦いが終わったらな」
ルカは、素直に喜んでいる。
(ありがとうこざいます)
シャルムは相変わらずのツンデレ。
(ふ、我とデートなんだからな、感謝するがよい)
頼んだの誰だー。こんなツッコミはしない。2人の様子を見て、ニヤニヤする。
するとライトが、仕切り直しに合図を送る。
(では、話もひと段落ついたので、突撃!ダーク様、シャルム様はサポート宜しくお願いします)「了解」
(ふ、任せておけ、この始祖の吸血鬼にな。何たって我は魔王の……)
「おーいシャルム、遅れているぞー」
(ここは、我の素晴らしい功績を拝聴すべき雰囲気だろー)
赤面し、こちらを睨んでくる。うちの娘、恥ずかしい。はっはっはっ。
やはり、元のスペックが違うのか、ゴブリンが一気に五体程度襲いにくるが、冷静に対処している。
特にライトは、冷静な判断をしている。ゴブリンが、五体以上襲いに来ないような立ち回りをさせている。廃墟の壁を上手く利用している。
Dランクのウルフは、傷つく頻度が高いが、ルカの回復魔法により、体力を回復させ、生き延びさせる戦いをしている。
サモンは、ライトの指示により、二体目のウルフを召喚した。俺は二体も召喚できる事に驚いた。じゃ何故最初から出さなかったかは、その後わかった。サモンの表情に疲れが現れている。かなりの負担がかかっているのだろう。
俺は今回サポートなので目立った事はしないが、手伝いたいと思い、魔力操作の応用版である、魔力譲渡を行う。
(ありがとうございます)
「気にすんな」
あれ、なんか俺、爽やかじゃない。ボッチのコミニケーション能力じゃないよ。家族のおかげで、俺も変わっていけてる事に喜び感じている。
にしても、これだけ暴れたのにゴブリンキングは、見えない。まさかの見間違い?などという事も考えたが、油断は禁物と自身を戒める。
これからが本番だ。
順調な戦闘の始まりに、主人公も安心。しかし、危機は突如として起きるもの。次回がどうなるか是非、お楽しみください。




