緊急事態 一
(ドンドンドン)
修行も終わり、明日は冒険者ギルドの依頼を受けようと考えていた時、乱雑なドアを殴りつけるような音が聞こえる。
俺は、魔力感知、風魔法による感知で、シズが叩いていることが分かったため、警戒を解き、ドアを開ける。
(ダークさん助けてください!)
必死な表情で、話す。顔には、ここまで走ってきたのか汗がある。緊急事態である。
「どうした?」
(私の故郷が、ゴブリンキングに襲われるんです)
俺はゴブリンキングが、ランクAの討伐クエストだったなぁと思考して、シズが来た理由を悟る。
たしかに俺は、ギルド長の前でCランクの冒険者を倒したからな。明らかにCランク以上だと分かっただろう。ゴブリンキングの討伐依頼が来てもおかしくは無い。
「対価は?」
(それはその~)
難しそうな顔をし、そして泣き出しそうな顔をして、答えを噤む。その為、別の質問を聞く。
「何故俺ら?」
(私が担当する冒険者でCランクは2人しかいなくて、片方には断られました、どうかお願いできないでしょうか)
「担当でない冒険者は?」
(私にはアポが取れません。いつも、繋がりを作っていなかったので)
「ゴブリンキングぐらいだったら、ギルドが討伐クエストを出すんじゃない?」
(ゴブリンキングだと、確実に倒すため冒険者を何日も使って集めます。今回、Sランク、Aランク冒険者が別の長期クエストを受けていて、出払っているため、いつ帰ってくるか分からないんです)
言いたい事は理解した。
簡単にまとめると、ゴブリンキングを倒したいが、冒険者が集まらない、助けてください。
普通の勇者なら、無条件で助けるかもしれないが俺は違う。等価交換は絶対だ。
「報酬は?」
(そのー、手持ちが金貨二枚しかありません)「ゴブリンキングはAランククエスト。更に、それを俺らのみで討伐。それをたった金貨二枚でやれと?」
(どうかお願いできないでしょうか)
泣きそうに叫ぶシズ。側から見ると、俺が悪人だ。
しかし、タダ同然に依頼を受ける。そんなのは、相手の為にならない。
意地悪している訳ではない。
この騒ぎを聞きつけて、シャルムが来る。シャルムは、両方を見て、何を思ったか知らないが、一般的なことを言う。
(先ず、家にいれたら?)
「シズ、先ず入ってくれる」
(分かりました)
応接間らしき場所に、コルムが案内してくれた。
俺、こんな場所知らねーと思いながら、今回の依頼を受けるか考える。
確かにシズとは仲がいい。元気を貰っていたが、見返りなしではやらないという結果に至った。
(どうか依頼を受けてください)
「対価を払うなら、受けよう」
するとシャルムが、変なことを言い始める。
(シズは依頼を受けてもらいたいが金は無い、ダークは対価を払うなら受けてもいい。なら、シズが払えるのは体だけじゃない?)
おーい、マジで修羅場、これ以上、深刻な雰囲気を作り出すなー。俺の精神が壊れるだろー。
後、焼き鳥買ってきますみたいな気軽さで言うなー。
「シズ、気にするな」
(ダークさんは、私の身体好きですか?)
ヤメテー。何でこんな話を真夜中で寝る前にするんだよー。また寝不足になるじゃん。
俺が何をしたっていうんだー。
「まぁ、可愛いとは思うよ」
(ド、奴隷になるので、依頼を受けてください)
体を震わせながら、危ない発言をする。
なんか俺もう、完全犯罪者みたいじゃん。この絵面。
そして、またこの方、ライト君の気が効いたお言葉。
(ギルド受付嬢は、庶務が出来るため、今後便利ですよ)
(お願いします)
「分かった。魔法の契約書ではしよう。それで良いな?」
(はい)
魔法の契約書とは、魔法をかけることで、契約違反した際に罰を下らせる事が出来る契約書である。
その為、買うには銀貨十枚が必要。シズは、金を持ってなさそうなので、俺が、魔道具ギルドに行き、買ってくる。
因みに、これからも必要になると思ったため、十枚買った。
そして、契約内容、両者の名前を書き、契約完了。ギルド受付嬢ゲット。ラッキー。
そうそう、契約完了後、シズに契約内容が、依頼達成の場合、奴隷となるでなく、依頼受領の場合、奴隷となると書いたから、依頼を受けるだけでいいんだよねと聞く。
すると、泣きながら、お母さん、お父さんと叫び出す。
「冗談だよ」
そう、勇者である俺が、そんな非道な事をする筈がない。からかっただけである。
今後俺に従順に働いてもらうためにも、好感度を稼がねば。人間のクズ的思考を、泣いている人の前でする。
役職が闇勇者なだけある。
因みに、今回の依頼はギルドを通してじゃないため、ギルドランクは上がらない。
だが、仮にゴブリンキングの魔石を提出すれば上がると考えるている。
そして、ゴブリンキングは、大量のゴブリンを従えている。つまり、経験値が沢山。
この機会を利用し、ルカ、サモン、ライトのレベルアップをしてもらう事を考えている。何をするにも、自分の身を守らなければ意味が無い。
そして、レベルアップにデメリットは無いからだ。
全体のレベル底上げを狙い、俺たちは動き出す。
まぁ明日だが。
だって、暗い中は、ルカなどの人間には移動するのは困難だ。
その為、明日動き出す事を伝え、シズを休ませ、俺も明日に向け熟睡するのだった。
その日も、ルカとシャルムが毛布の中に潜りに来て、寝れなかったくことはいうまでも無い。
緊急事態を逆手に取る主人公。遂に魔の手が受付嬢までに。
少し長編となっています。その分面白い、カッコいい要素を取り入れようと頑張ってます。是非、評価などを宜しくお願いします




