吸血鬼 上
現在、風魔法を左手に、闇魔法を右手に発動させている。
これは同時魔法、並列魔法と呼ばれるものである。それを、魔力を大量に使い、強引に混ぜると一つの球体が出来る。これが合体魔法である。
それをスライムに当たるように放つと、スライムが爆散した。そう、威力が強すぎたのである。余りにもおかしい。
たかが、ウィンドスラッシュ程度なのに地面には10センチ程の切り傷があった。
これは緊急事態しか使わないようにしようと心に決め、合体魔法を練習していく。すると、俺のスキルに闇合成が発現した。
効果は、闇の合成に大幅補正と、闇の割合により、ステータスの向上である。
つまり暗い時などが一番ステータスが上がるという事である。
更に、自身で体内に闇を生成すれば闇の割合が増える事にもなる。万能である。
木の葉は光合成というシステム外スキルを持っている。俺には違和感が無かったが。これは、多分闇勇者の役職により、熟練度習得量が多くなったから、スキルに現れたのだろう。
「やったぜー、俺無双」
そんな事を言っていると、突如として黒いモヤが、俺の周りに発生する。
俺は何も発動していないのにだ。
いつも以上に、索敵を行うが、全く違和感の正体が見つからない。
急に地面が崩れ、俺は下へと自由落下していくが、それに甘んじる俺ではない。
木の葉に戻り、空気抵抗をふんだんに受けて、落下スピードを落とす事で、安全に落ち、人間に人化し、辺りを見回すと、横幅五メートルぐらいで、縦は全く暗さで見通せない状況だ。上を見ても、既に穴は無くなっている。
何か寒気がする。ラストボスが、存在する。封印されているような嫌な予感がする。
しかし、進むしか道は無い。
(コツン)
(コツン)
(コツン)
俺の足音が、何時もより大きい聞こえる。かなりの距離だと思ったが意外と早く、開けた場所に出た。
前には、幾重にもの鎖で縛られている、幼気な少女。
髪は銀髪、胸は絶壁、体は人形の様な完璧なプロモーション。
俺は見惚れてしまった。
だが、次の言葉で状況が大きく変わった。
(我が名は、吸血鬼の真祖である、シャルム-オリジン-ヴァンパイアである、跪けー)
「クックック、はっはっは」
こんなアホらしい事を言われたら笑うしかないだろう。イヤー、痛い子も居るもんだなぁー。
今思い出してもなぁ。
「ふっふっふ」
(貴様、我を笑いよって万死に値するが、貴様には我が封印を解いてもらわなければならない。)(我が血族よ、我に従属し、我が旨に従え、下位ヴァンパイア召喚)
その魔法陣を見た瞬間、本能から後ろにバックステップし、召喚に備える。
剣を正面に構え、何が起こってもいいように備える。
すると、一人の吸血鬼が召喚された。こっちは、とても吸血鬼みたいなのに、シャルム-オリジン-ヴァンパイアは全てが人間みたいだ。
何故なら、The吸血鬼みたいに、爪が以上に長く、顔が極端に暗く、目が赤いのである。
そんな考えをしていると、シャルムが命令した。(此奴を適度に痛めつけ、封印の解除をされろ。くれぐれも殺すなよ)
(かしこまりました)
これには俺も少し怒りが湧いた。あたかも俺が雑魚みたいじゃないか?
「鑑定」
自称下位吸血鬼に対し鑑定をした結果。
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レベル30 名前 無し
種族名 下位吸血鬼
役職 従者
HP 15000/15000
MP 9000/9000
攻撃力 1100
防御力 650
素早さ 1000
器用さ 950
知能 850
魔法 無し
スキル 再生、吸血
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俺のステータス
HP 9000/9000
MP 13000/13000
攻撃力 850
防御力 550
素早さ 950
器用さ 1000
知能 1750
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俺のステータスと比べ、HPや攻撃力、素早さが上回っているが、知能は俺が上である。しかし、スキルが厄介そうだが、まぁ何とかなるだろうと思い、剣を正面から上に構えて、吸血鬼に振り下ろす。
これが異世界に来て初めての真剣な闘いである。(生意気な小僧を叩きのめせー)
シャルムがうるさい。既に、さん付けは無い。場外に意識を飛ばさず真剣に戦う。
敵は持ち枚の力を生かして剣を爪で弾く。
普通爪は切れるだろうと悪態をつき、次は横薙ぎ。
しかし、横薙ぎの前に、一歩踏み込まれ殴られる。
だが、殴られた瞬間後ろに飛ぶ事で衝撃をなるべく吸収する。だが、全てを吸収しきれず、かなりのHPが減った。
HP 8500/9000
たった一発で500ものHPが減ったことにかなりの危機感を募らせる。
その為、間合いを取り、ウィンドスラッシュを並列思考を使い、何回も何回も放つ。相手は傷は付いているが、直ぐに再生する。
吸血鬼のスキルはかなり厄介だ。
その内、被害御構い無しで、突撃してくる。
「巫山戯んなー」
理不尽に叫びながら、剣を振る。今回はただ振ったわけではない。相手の爪に向け、斬撃を放とうとしているが、相手の攻撃を逸らす目的だ。
相手はまた単調に爪を振り下ろす。剣の腹に爪を接触させるイメージで、敵の攻撃を逸らそうとしたが、余りの攻撃力の高さにより、吹き飛ばされる。
HP 8200/9000
だが、諦めない。再び同じ事をやる。失敗。同じ事。失敗。
徐々に成功に近づきHP 450/9000の状態になって完璧に成功する様になった。
それ以降も其れを、何回も繰り返す。
下位吸血鬼は、困惑から恐怖。
シャルムは、最初死にそうな為、下位吸血鬼に対して怒りだが、自然と俺に対する、驚異に変わっている。
「ふっふっふ、ハッハッハ、これからだ、これからだー」
そう、俺は今、最高に楽しい。圧倒的な強者でない俺が今、自身より強い相手を圧倒している。
この近死体験を続ける事で、数多の魔法、スキルはレベルアップし、常時戦闘回復スキルである、常癒や、緊急時などに集中力が上がる、一点集中。
そして、称号も進化したりしている。
さぁ、もう一度言おう。
「It show time.」




