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一話

初投稿なのであしからす

 

双星 聖也(ふたぼし せいや)君はDSD……性分化疾患。

 一言で分かりやすく言うのなら……『ふたなり』です」

「「「は?」」」


 その日、前々からあった身体の違和感の正体を暴くため浄水駅近くの豊田厚生病院にて診察と検査を受けた俺。豊田市立栄中学校、二年、双星 聖也は医師からとんでもない事実を告げられ、家族共々素っ頓狂な声を発してしまったのである。

 事の始まりを説明するにはまず一年くらい前の話をする他にないだろう。



 夏休みが開けて残暑の厳しい季節。俺は「乳首が服に擦れて痛い」と母親に相談した。

 心の片隅には痛気持ちいいという感情が無きにしも非ずであはったが痛いものは痛いし、授業は大して真面目に受けていた訳では無いが逆に乳首が気になって眠れないという弊害が生まれていたので意を決して夕飯の後母親に相談したのである。


「は? ち、乳首が痛い? ……ちょっと待って……面白いからちょっと待って」


 お母さんは笑いを堪えるためか口元を利き手の右で抑え肩が小刻みに震えている。

 こうなると思ったから相談したくなかったのである。姉の方が良かっただろうか、いやお父さんの方が良かったかもしれん。


「おい!? 割と死活問題なんだよ! 真面目に相談してんだから笑ってんじゃねぇ!!!」

「ごめんごめん……乳首が痛いの? 太って脂肪が胸に行ったのかしらね? 実に羨ましい体質じゃない」

「女ならな!? 男の俺が胸大きくなって一体誰得ですかってはなしだよ!」

「ごめんて怒らないでよ。そうね、絆創膏でも貼ったら?」


 一悶着ありながらも俺は次の日絆創膏を貼って授業に望んだ。

 水泳の授業は終わったがまだ冷房がないと暑くてたまらないこの九月という時期。窓際の席はカーテンで遮られているとはいえ暑い。

 それに比べれば廊下側は涼しい方である。

 乳首の痛みに悩まされ眠れなかった昨日までと違い俺は退屈な授業でバッチリ寝ていた。


「おい、双星。寝ているならコレ解けるよな?」


 数学の授業を担当する宮野先生(男性、36歳独身)が堂々と居眠りする俺を指して問題を解くように促す。

 俺は数学が得意である。だからこそ居眠りをかましているのである。


「x=3です」


 頭を少し持ち上げ一瞥しただけで答えた俺に宮野先生は眉間に皺を寄せて一つ下の式を指す。


「こっちは」

「x=6ですね」

「くっ……数学だけは出来るんだからタチが悪い」


 先生の悔しそうな顔を見れた俺は顔を腕の間に埋めようとするが。


「寝るな!」

「えー」

「えー、じゃない!」


 仕方なく俺はそのうち課題になるであろう問題集を適当に片付けて四時間目の終わりを告げるチャイムを待ったのである。

 給食の時間。今日の献立は味噌汁に酢の物、チーズの混ざった納豆に白いご飯とやはり牛乳である。

 俺は牛乳が好きなのでお腹の弱いクラスメイトなどがいるとラッキーと思いつつ誰も進んで取ろうとしない余った牛乳を堂々と飲むのである。


「お前、牛乳好きだな」

「ズズ……俺は美味しいと思うぞ牛乳」


 話しかけてきたのは俺の前に座る金山。小学校の頃から同じクラスになることが多く自然と話す機会も増えた少ない俺の友人の一人である。

 他と比べると裕福な家庭に生まれたらしく、親の教育の賜物か言葉遣いも先生と話す時なんかはとても丁寧だ。勉強も出来てテストの点数は高め、学年順位もトップクラスだ。

 それでいて奇想天外な発送の持ち主でもあり友達やってて飽きない奴である。


「そう言えば水着イベントちゃんと攻略したか?」

「素材は全部交換したよ」


 ついでに言うと彼には俺がサブカルチャーを植え付けたので今では立派な同志。萌え豚野郎である。

 この歳の男は大体三種類。

 ゴールデンタイムの子供向けアニメから深夜帯のアニメに手を伸ばす者。

 アニメは子供の娯楽と切り捨てドラマやバラエティー番組を見て大人ぶってる者。

 そんなん興味ねぇわサッカーやろうぜ! と部活に励む者。


「来年はアタランテの水着来ないかなぁ」

「ブーティカのイベント礼装エロかったなー」


 俺は獣耳萌え、彼は巨乳萌え。共に夢で終わる儚い性癖でも諦める訳にはいかないのだ。


「ご馳走様でした」


 俺は手を合わせて小声で呟くと皿を持って片付けに席を立つ。片付け終わったら手を洗うついでにトイレへ入る。男子トイレの小便器に向かって股から下げている相棒の先から小便を発射する。

 乳首の痛みを感じない本日は実に快適だった。



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