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深夜のコンビニバイト九十二日目 浦島太郎再来店

最近本当に色々あり、風邪ひいたりツイッターにも書きましたが初めて親に反抗して家出して夜の田舎道を歩いて遠くに行こうとしたり、耳かきのしすぎで耳が炎症起こしてお医者さんに耳かきするなと怒られておかしくなりそうだったりねwまぁ、この数日間に色々起こりましたが、来月は引越しで一人暮らしをしますので余計に忙しくなりそうです。でも転職と一人暮らしでストレスが100000000000パーセントくらい軽減されそうなのでとても希望を持ってます。

深夜のコンビニバイト九十二日目。


今日から、魔法少女プリプリハルミャンの一番くじが始まった。

サンタの格好をしたハルミャンが、トナカイに乗って微笑んでいるフィギュア。相変わらずクオリティが高い一番くじのハルミャンフィギュアシリーズ。毎季節ごとにハルミャンは色んな格好をして一番くじになるんだな...オタクが喜ぶようにできているな一番くじは。

ハルミャンが、店頭に並ぶって事はしばらく顔を見ていないあの人は来店してくるのだろうか?

いや、浦島太郎さんの所に行ってから一回も来ていないし、前にブルマハルミャンのフィギュアを引きに来たのは、オタクの忍者だったから...もう彼はオタクを卒業してしまったんだろうか。


ピロリロピロリロ。


オタク忍者さん、まさか店頭に並んでこんなすぐに!?


「い、いらっしゃいま」


「こんばんは!」


爽やかな笑顔で来店してきたのは、すらりとした背格好に、頭には桃とかかれたハチマキ、腰にはきびだんごとかかれた巾着、容姿はまんまあの"桃太郎"さんなのに、全体的にイケメンすぎて眩しいイタイコスプレをした人って感じだった。


「こ、こんばんは」


「僕の事、覚えてます?」


最初に桃太郎さんに会った時は、どもり気味で、目を決して合わせず小さな声で一番くじの場所を聞かれただけだったのに、このイケメンはスタスタ俺の所まで歩いてくると、にっこり微笑んで自分の事を覚えているかと、聞いてきた。


「え、えぇっと、桃太郎さん?」


ハチマキの桃の字を見ながら目を泳がせると、


「よかった、覚えてくれていたんですね」


オマエダレダ。


「コンタクトにしたから気づかれないかと思いましたよ~」


ソコジャナイ。


「浦島太郎君と過ごして僕は変わったんですよ。大事な家族である犬猿キジ達に辛い思いさせてまで、オタク趣味をするのは、やめたんです」


にっこり微笑んだ桃太郎さんに、俺は戦慄した。あの、クズ桃太郎が。あのオタク桃太郎が。あの桃太郎を心配してくれた仲間達に対して暴言を吐き、おばあさんとおじいさんからのきびだんごを通販で売りさばきオタク趣味に使っていた桃太郎が。

どうしてこんなにいい笑顔を浮かべるようになっただろうか。中身はクズのまま?でもオタク趣味やめたって言ってるし性格まで変わったのだろうか?


「今日は、何か買いに来たんですか?」


「あぁ、えっと」


ピロリロピロリロ。


「あ、いらっしゃ」


黒い影が一瞬にして店内へ。

気がついたらパサパサと釣り銭トレーに、ハルミャンのくじの引換券が五枚置かれていた。


「忍者さん、また来てくださったんですね」


「え!?え!?何故引換券が突然!?」


困惑する桃太郎に、


「オタクの忍者さんです。動きが早すごて見えないんですよ。今日はクリスマスハルミャンのくじを引きに来たんですね」


くじの入った箱をトンと置くと、くじ箱がかすかに動いてくじがパカパカ開いた。桃太郎は、驚愕といった様子で見ていた。

くじの内容はお客様に確認してもらうという風にしているのだが、最後のくじが開かれそうになった時、俺達の目の前で、紺色の忍び装束を着た見たまんま忍者って感じの人が、くじを持って固まっていた。


「あ、あぁあ!!あぁあ!!!あぁあ!!!!ああぁ!!!ああ!!!」


いつも俊敏で目の前に姿を現さなかった忍者さんが、突然雄叫びをあげながらオロオロしている。


「どうしたんですか!?なんなんですかこの人!?」


桃太郎さんも困惑している。


「ど、どうしたんですか!?」


「ア、アッ、アッ」


あしか発する事のできない忍者さんは、俺にくじを見ろと指を指す。

見るとそこには、【A賞 クリスマスハルミャンフィギュア】と書かれていた。


「ハルミャン...フィギュア当たったんですか?」


忍者さんは、大きく高速で顎が外れるんじゃないかというくらい頷いた。


「うおぉおおお!!おめでとうございます!!おめでとうございます!前回リレーバトンとハチマキでしたもんね!」


と忍者さんを改めて見ると、頭には前に当たった赤いハチマキになんかやたら文字の書いてあるハルミャンハチマキを巻き、腰にはじゃらじゃらラバーストラップを揺らし、前に当たったハルミャンハチマキを腰に剣のようにさしていた。

やばいこの人...結構ガチの人だ。


「くっぅっ、ぐぅっぶふっ」


忍者さんは、俯いて腕で目をこすりながら涙を流した。そんなに嬉しいのか。そりゃ、嬉しいだろうな。ガチ泣きだった。


桃太郎は、そんな忍者さんをじっと見つめていた。


「なんだか、とても、うらや」


桃太郎は、頭を抑えて俯いた。


「ぐぅっ...頭が...頭が...痛い!!あぁ、なんだ僕は...いや俺は何でこんなに頭が痛いんだ!?何か開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったような...やめら、僕はオタクをやめたんだ。オタクをやめて、一般人になったんだ!浦島太郎さんに、更生してもらったんだ!もうそんなの僕には必要ないんだ!」


忍者さんは、俺を見る。


「あぁ、この人も元は忍者さんみたいにオタクだったんですけど、それで周りに迷惑ばかりかけてたからオタクをやめて更生したみたいなんですよ」


忍者さんは、俯いて桃太郎さんの所にすうっと近づいてくると、


「あぁああ、あの、あのあの、その、あの、あぁあ、あなた、その、一つ、お、お聴き、したくて」


桃太郎は、頭を抑えながら忍者さんをみた。


「そ、その、生きてて、楽しい...ですか?」


忍者さんの一言に、桃太郎は大きく目を見開いた。


「オタクである事を...な、ななんだか、その、が、がが我慢してるようだったので、本当は、す、すす好きなんじゃ、ないんですか?は、ハルミャンの、事」


「ハル...ミャン、ハルミャン、ハルミャンなんて知らない。僕はオタクを卒業したんだ。浦島太郎さんに、生活矯正してもらって、自堕落な生活から更生したんだ。それは、いいことだって皆...」


「い、いい事だって、ま、周りの人はって、その、あ、あぁあ、貴方は、どうなんですか?」


忍者さんは、コミュ障なりに言葉を紡いで桃太郎にぶつけていく。忍者さんは、ハルミャンフィギュアを抱きしめて、


「拙者は、オタクでござるが、後悔はしてないし、この性格を治そうとは思わないでござる。オタクである事に誇りを持っているからでござる。ハルミャンに出会って、無色だった拙者は変わったでござる。貴方がもしハルミャンが好きなのに無理して皆に合わせてるなら、素直になった方がいいでござる。ハルミャンに失礼でござる」


まくしたてるように早口で、でもいつもみたいにどもらずに、忍者さんはハルミャンフィギュアを抱えて俺達の目の前から消えた。


桃太郎は、呆然と立ち尽くしていた。


「あの、大丈夫ですか?」


ピロリロピロリロ。


浦島太郎さんと、犬猿キジ達が一気に来店してきた。

もうペット禁止というのは、忘れられているんだろうなぁもう...。


「遅かったな桃太郎。早く帰ろう」


「浦島太郎さんと一緒に帰ろう!」


犬猿キジ達は浦島太郎さんにべったりだ。そりゃそうだろうなクズ桃太郎を変えたのは彼なんだろうから。


「桃太郎?どうしてコンビニに来たんだ?こんな時間に」


深夜に家を出たのに気づいて皆で迎えに来てくれるなんて桃太郎は愛されてるな。

桃太郎は、ハルミャンの一番くじを呆然と眺めて浦島太郎をくるりと振り返り、


「ハルミャンの新しいくじが出たからに決まってんだろ」


「.....桃太郎?」


「もう疲れたもうやめだもうやだ。俺は生まれながらのオタクなんだ。お前に全部グッズを捨てられ絶望し、俺は一度死に、真っ白に生まれ変わった。だがな。今日来たオタクが俺に思い出させてくれた。俺は、やっぱりハルミャンが好きだ。アニメが好きだ。ゲームが好きだ。健康的な生活?漁より農業より釣りより家でハルミャンと過ごした方がいいに決まってる。もう俺はカラカラの空っぽの毎日からおさらばしたい」


「何を言っているんだ桃太郎」


本当に何を言っているのかわからないと言った様子の浦島太郎と、全てを理解した犬猿キジ達。開いた口が塞がらないといった様子だった。

桃太郎は、そんな犬猿キジ達を真っ直ぐ見つめ、


「俺は、オタクに戻る。だが今度はお前達に迷惑かけない。ちゃんと働く。そして貯めたお金でオタク趣味を楽しむ。いつも通りいい餌食べさせてやるよ。だからもう文句ないだろ」


そんな桃太郎に、犬猿キジ達はフッと微笑んだ。桃太郎も、にっこり微笑む。

犬猿キジ達は声を揃えた。


「最初からそうして頂戴」

「最初からそうしろって」

「簡潔に言う。最初からそうしてろよ。ぶち殺すぞ」


うん、まぁ最初から働きながらちゃんとオタク趣味を楽しんでいればそんな事にはならなかったとは思うけど、桃太郎がそんな風に成長した事に、犬猿キジ達は心底喜んでいる様子だった。


「君の好きなものに打ち込む姿勢は感心するが、その、家から出て行くという事か?」


浦島太郎は、寂しそうに聞いた。


「いや、俺はあんたの所で変わらず漁の手伝いするよ」


浦島太郎は、少しホッとした様子で、


「自堕落な生活に戻ったらすぐ矯正するからな...まぁ私が見張っているからいいにしても」


浦島太郎さんは、くるりと俺を振り返り俺に電話番号が書いてある紙をこそっと手渡した。


「私の家の電話番号だ。桃太郎がまたここに来たら連絡してくれ。奴は私が管理しているからな。常にどこにいるか何をしているか把握しておきたい。今日彼がここに来てしまったのも、私の管理不足だからな」


浦島太郎さんと、桃太郎犬猿キジは仲良く帰っていった。

俺は、なんとなく今のオタクの桃太郎がなんとなく好きだったので、電話番号の紙をこっそりゴミ箱に捨てたのだった。

本日も読んでくださりありがとうございます。


私はオタクだったのですが、母親がオタク反対派の人で、ジャンプ買ってたら「そんなの読んでたら馬鹿になるわ」と言われて代わりに少女漫画を渡されたり、漫画読んでたら何の漫画を読んでいるか親に見せろって言われて、断ったら親に見せられない漫画を買うなと言われ、最終的にはいつ読んだのか「こんな変態な漫画貴方に悪影響だわ」と漫画持って現れたり、いやめだかボックスは変態漫画じゃないだろ。

ゴミ箱のレシート漁って「この漫画はどんな漫画なの?本棚に並んでないけど?どこにあるの?」っていってきたり。私夢があるんですよいつか本棚に本いっぱい並べて好きな時に読んだり買ったりしたいんですよ。一回めちゃくちゃ怒って一週間口きかなかったら大人しくなりましたけど、やはりそういう親はどこにでもいるのでしょうかね。

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