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深夜のコンビニバイト八十九日目 鶴再来店

またお仕事や、リアルが忙しく、大変日にちを開けてしまい...最近成人式の後の同窓会に行くかどうかという電話がよくかかってきて、一応同窓会グループに入ったらアニメアイコンの人が私しかいなかったので、「絶対行かない!!!!」と言ってるのに友達がえーいこーよーってもう髪の毛引っ張られても足持ってかれてもいきません絶対リア充しかいないやつです。

深夜のコンビニバイト八十九日目。


「本日はよろしくお願いします」


相変わらず、ブロンドを後ろでキュッと縛ってキリッと制服を着たシンデレラさんは、端正な顔立ちのイケメンだ。


「シンデレラさん、女性なのに、何でそ」


「シン....」


ぼそりとシンデレラさんは呟いた。

何と言ったか小さくて聞こえなかったので近くに寄って聞き返す。


「え?よく聞こえなかったんですが...」


「シ...シン...って呼んでくれる。ママさんが、私につけてくれた名前」


恥ずかしそうに、照れたように言うシンデレラさんに、俺は本当にこの人は変わったなと微笑ましくなった。


「はい、シン...さん」


「よろし...」


「ヒィ!!」


ゴロゴロと地響きのような突然の夕立。

怯えたようなシンさんは、ゆっくりとコンビニの外をみる。俺もつられてそちらをみた。ざあっと雨が降り出して、ピカッと雷が光る。ゴロゴロと不安を誘うような音が動悸を早める。俺もちょっとびっくりした。

最近雨が酷い日が多い気がするな。


「あ...あぁあ」


耳を塞いでうずくまったシンさん。なんだ、シンさん雷怖いんだ。案外女の子らしくて可愛いところがあるんだな。


「大丈夫ですよ、シンさん。雷なんてすぐ止みますから」


つとめて優しく、子供に声をかけるが如くあやすようにいうと、シンさんは、うわごとのようにコンビニの外を指差しながら、


「....外......外」


「え?外って、土砂降りで」


俺は、微笑んだままコンビニの外を見て、後悔した。

物凄く後悔した。後悔しすぎて正直漏らしそうになった。


「ふふふ、ふふふ...ふふふふ」


ピカッと光ったコンビニの外に、ポツリと人影が見えた。


「ふふ....ふふふ、ふふ」


雷で光った一瞬、その姿が見えた。

戦慄した。白い肌に、長い黒髪は顔を隠す程に乱れ、白いワンピースを着た──。


「ゆっ.....」


その先を飲み込んで、俺もシンさんと一緒にレジにしゃがみ込んだ。いや怖い怖い怖いやばい無理なんでどうして何あれ。俺はシンさんと同じようにコンビニの外を指差して、


「外....外」


を繰り返す事しか出来そうにない。


「こんにちはぁ...ふふ...ふふ」


透き通るような美しい女性の声。

俺達が隠れているレジ台の向こう側で踊るように軽やかに楽しそうに微笑む声がする。とって食われる!!!


「あ、い、いらっしゃいませ」


すくっと立ち上がったシンさんが、幽霊(?)に対してちゃんと接客としての挨拶を!?いやいや、何で普通に接客できるんだよシンさんおかしくなっちゃったのか!?


「こんばんは...店長さんはどちらに...?」


え?店長?


俺は、そうっとレジ台から顔を上げた。


「あ」


びしょ濡れでレジ前に立っていたのは、いつぞやの店長に店前で助けられた鶴さんだった。黒い髪に白いワンピースで、不気味に笑いながら来店してきたらそりゃ誰でもこの世のものじゃないと思うよ!


「鶴さん!?どうしたんですかあの、色々」


「お知り合いですか」


シンさんが、首をかしげるので鶴さんの事を説明すると、


「.....えっと、魔法か何かで鶴から人間に?かぼちゃが馬車になるとかそういう──?」


怪訝な顔をするシンさんに、


「いや、魔法なしで鶴さんは鶴から人間になれるんです」


鶴さんは、シュルルルルと鶴の姿に変え、シュルルルルと人間の姿に戻った。


「嘘.....魔法って本当にあるんだ」


まぁ、それをシンデレラさんが言うのはどうかと思うけどこの人はシンデレラであってシンデレラでないからまぁそうか。


「私の事を助けてくださった店長さんに、恩返しがしたくて、私花を持ってきたんです」


外は豪雨。だが、鶴さんの顔は晴れやかだった。なんだか、妙に嫌な予感がした。

ずっと後ろに回していた手を、鶴さんは前に持ってきた。


「はい!どうですか?この花!」


シンさんは、鶴さんの持ってきた花を上から横から斜めから眺めて、目をそらした。そして、静かに──。


「花って?」


俺は、目を見開いてじっとその何も握られていない両手を見ていた。鶴さんは、こんなに晴れやかに、明るく何を言っているんだ?


「まぁ、無理もないですね。見えない人には見えない花なんです。店長さんみたいに心の綺麗で広いお方にしか見えないようなお花なんです」


「あの、貴方には、見えるの」


シンさんは、鶴さんを気遣うように何も握られていない両手と鶴さんを交互に見た。


「見えないです。当たり前じゃないですか。私は心が汚く狭い醜い鶴ですから。助けていただいた人に恩返しする事だけが、私の生きる意味なんです。この花は、見える人には七色に輝く世界に一つだけの素晴らしい花なんですよ」


何を言っているんだ彼女は...。


「最初は次の日に花を買ってと思ったんですが、花屋に行く途中に、道中のおばあさんに、このお花をお勧めされましてね。次の日に花を買うより、この店長さんにぴったりのお花を、バイトして貯めたお金で買おうと思って!やっと最近手に入ったんです」


変な汗が出て、俺は思わず聞いてしまった。


「それ、いくらしたんですか」


「...え?10本で8万円です」


「はっ.....」


絶句した。

顔面蒼白だろう、俺をよそに鶴さんは笑顔だった。


「店長さんに、恩返しを!この花を見てもらおうと思って私頑張ったんです!店長さんはどちらですか?」


こんな土砂降りの中、ありもしない花を持って喜んで、思わず笑みをこぼしながらここに来た彼女に、俺はなんて言えばいいのだろうか。


パァン。

風を切って、それはそんな嬉しそうな彼女の表情を叩き返すように響いた。


「え」


鶴さんは、叩かれた頰を抑えて呆然とシンさんを見つめた。

シンさんは、自分の息子が犯罪を犯した時のような、そんな悔しい、悲しい、何より怒りの表情を浮かべて、


「目を覚まして!!そこに花なんてない!魔法もない!見えない花なんてあるわけない!」


大きな声で、鶴さんを叱咤した。


「何を...言ってるんですか」


「ないって言ってるのよそんな花。貴方は騙されたの。必死に稼いだお金を騙されてとられたの!!そこに花なんてないんだから!」


「あ...ありますよ、ほら。みてくださいこれは、だって、心が綺麗で」


「そんな魔法みたいな事があるわけないじゃない。貴方が鶴から人間になるのはどういう仕組みか知らないけど、この世には、自分に都合のいい魔法なんてこれっぽっちもないの。そんなのがあったら私だって今頃舞踏会で王子様とガラスの靴で結婚して幸せに暮らしてるわよ!」


「...恩返しを...私は、店長さんに...花...あるんですよ。ありますよ、ほら、見えないだけで、私は...店長さんに、助けていただいた恩返しが、できないのでしょうか?そんな、嘘...嘘」


鶴さんはだらんと手を放り出して、うわごとのように呟いた。

鶴さんは、騙された事にショックを受けているのではなく、店長に恩返しができない事に、この上なくショックを受けているんだろう。


「できる!!!!!!」


シンさんは、ぽふんと上から鶴さんの肩を叩いた。


「お金かけない方法でも、恩返しが出来る。ママさんが言ってた。私も最初は、ママさんに何かしなきゃ何かしなきゃって思ってたけど、ママさんが「生きていてくれる事」が一番の恩返しって言ってくれた。もう二度と死ぬなんて言わず、生きていてくれればいいって言ってた。お金かけて返すだけじゃない。恩返しの方法は」


「でも...私なんかが生きていても」


「ここ、人手がまだ足りないって言ってた。私が抜けるから働くのお手伝いしたらいいと思う...私は、ママさんのお店手伝うから穴ができる。きっと貴方が必要になる」


「そう...かな。そんな事...ありますか。私なんかが、体もお金も使わず、お役に立てるのでしょうか」


「立てる、立てます。だから──」


「そう...ですか。よかった...私、恩返しがまだできるんですね。助けていただいた恩返しが、ありがとうございます。貴方...お名前は?」


鶴さんは、本当に嬉しそうにシンさんの手を取った。

シンさんも微笑んで、


「私はシンよ。貴方は?」


鶴さんは、にっこりと微笑んで返した。だがその笑顔には、前に見た闇が差していた。


「そうですか...シンさん。シンさん。ありがとうございます。私、このご恩は一生忘れません。貴方に必ず、必ず恩返し致します...だから、待っていてください」


ふふ、ふふふと虚ろに笑う鶴さんを見て、俺はまた心配になるのだった。


本日も読んでくださりありがとうございます。


休みの日は疲れて寝ちゃったり起きたりしても天井眺めてる、とかで、本当に何もできないんですよ私出かける用事がなかったら布団から起き上がれなかったりするんです。体が動かなくて、何故でしょうか。最近転職する事にして、小説家にやはりなりたいので小説が書けるような時間が取れるようなお仕事を探しております...。仕事決まったら引っ越しできるよう引っ越しの準備もしてますが、一人暮らし始めたらみなさんがよく書いてくださってたエッセイとかかこうかなって。

自分の考えとかまとめておきたいとか考えたりして、明日はお休みなのですが、一人で映画響を見にいきます。響は、漫画原作持ち歩いたり枕元に置いて読むくらい好きで小説家になりたかった気持ちを思い出させてくれた作品です。ぜひみなさんにも見に行って欲しい。

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