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深夜のコンビニバイト八十六日目 奴隷の子来店

お久しぶりです。最近疲れて寝ちゃったり引っ越しの準備やらで更新が遅れてしまい.....ツイッターやら感想等で心配してくださったり、無理なさらずといってくださったり、いい読者様方に恵まれたなと思います。

深夜のコンビニバイト八十六日目。


「あら、こんばんは!村松君」


支度をして休憩室から売り場に行くとマリーさんが出勤していた。にっこりと微笑んで相変わらずの滲み出る気品と上品さでレジに立っている。


「マリーさん?深夜シフトなんて珍しいですね」


「えぇ、昨日深夜に入るはずだった人がいたみたいなんだけど、昨日突然やめちゃった?というか行方不明になった?みたいで、私が入る事になったの。久しぶりに村松君とお話ししたかったし」


「そ、そうですか」


ニコニコと微笑むマリーさんは、突如その笑顔から気品が消え去った。

嫌な予感がして一歩後ずさる。

マリーさんは反対に俺にジリジリと近づく。


「ねぇ...村松君、最近、マック君とはどうなの?」


「やめてください!!話したい事ってそれですか!!!」


まさに興味津々という感じで俺にジリジリと近づいてくるマリーさん。いやこのお方皇女だよね!?ゆかりさん何立派に腐らせてんの!?やめて!!


「ゆかりに、今年の冬コミは張×店と、マ×村の豪華二作同人誌を出すみたいなの。もし本人さん達的に最近進展があったら教えて欲しいなって♡」


「いや頭おかしいでしょ!!自分の働いている店員店長副店長でBL展開してそれを本にすることも既に頭イッちゃってるけど俺とマックがそういう関係にある前提で話してるのもどうかしてるだろ!!」


「あら?まるでマックと村松君がそういう関係じゃないみたいな言い方をするじゃない?村松君は照れてそういう事言ってるだけだってわかってるけど、マックは村松君のこと大好きだから、そう言われたら悲しむかもよ?」


「いや実際そうだから!!待ってくださいそもそもマリーさんマックに会ったことないですよね!?なんで知ってる風なんですか」


「ゆかりの同人誌に出てくるからよ」


腰に手を当ててドヤ顔で言うマリーさんに、俺は頭を抱えた。


「もう俺達は同人誌のキャラクターなんですね...」


狂ってる...だが夏のコミケでうちのコンビニの店長と副店長のBL同人誌が出ていてその売り子に二人が駆り出されてる時点でゆかりワールドの異常さは察しがついていた。

マリーさんもゆかりワールドの住民になってしまった一人なのだろう、いやもうゆかりワールドの幹部候補だよ。


「ゆかりのBL同人誌が完成する事が私の今年までの目標の一つよ。協力して頂戴」


当たり前でしょ?という顔でいうマリーさん。


「何にだ!?」


ピロリロピロリロ。


ハッとして入り口に振り向く。


「いらっしゃいませ!」


お客様が来た!助かった。俺は少し安堵しながらお客様に視線を移すが、そのお客様を見て息を飲んだ。ら


入り口には、ボロボロの布切れを一枚巻いた傷だらけの女の子が立っていた。

黒く長い伸ばしっぱなしの髪から、内気で無機質な視線が落ちていた。

首には冷たそうな鉄の首輪がついていて、じゃらじゃらと鎖が揺れていた。


女の子は、キョロキョロと辺りを見回すと、裸足のままペタペタとコンビニを歩き回っていた。


「あの子、どうしてあんなに傷だらけなのかしら?手当してあげなくちゃ」


マリーさんは、きょとんとして女の子にスタスタ近づいていった。


「貴方、傷だらけじゃない。大丈夫なの?」


マリーさんが女の子に触れようと手を伸ばすと、


「ヒッ....!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぶたないでください...お願いします...お願いします...」


頭を抱えて体を守るようにうずくまった彼女を見てマリーさんは固まった。


「どうして?ぶったりなんてしないわよ、傷を見せて欲しいだけなの」


マリーさんは、女の子の反応に焦ったように声を上ずらせる。


「ごめんなさい...ごめんなさい...」


ずっとごめんなさいを繰り返してる女の子に、どうしたらいいかわからない様子のマリーさん。いつ何時も何があってもマリーさんは大体強気にいつものマリー節でやっていたが、今回はどうしたらいいかわからない様子だった。


「マリーさん」


俺は、とりあえず女の子から離れるようにマリーさんを呼んだ。


「村松君...どうしてかしら彼女」


「何かあったんでしょう。服も体も見る限り何か訳ありな感じがしますからね」


女の子は、震えながら遠くから俺達を見ていた。


「君、名前は?」


遠くから女の子に呼びかけると、


「.....ありません。私は、奴隷ですので」


「奴隷.....」


まさかとは思ったけど、奴隷とは。

主人に頼まれて何かを買いにきたのだろうか?だとしてもこの傷だらけの体を見る限り、いい扱いを受けて来たとは思えない。


「奴隷って何なの?」


マリーさんは、不安そうに聞いてくる。そうか、マリーさんは知らないんだ。

皇室でお姫様として暮らして来たマリーさんは、奴隷の存在を知らなかった。


「主人のいう事を聞くだけの、人間のような扱いを受けない家畜のような存在です...」


震え声で答えたのは、女の子の方だった。


「何よそれ、そんなのありなの?そんなの許されるの?」


マリーさんは怒りを露わにしていた。


「私の家は、貧乏でした。なんでも国を治めている人が我儘放題で、自分の為にお金をどんどん自分の為に使うから、凄い税金を取られてしまって、私の家にはお金がなく、私は家族の為にお金持ちの家に奴隷としていくことになったんです」


「その傷は...もしかして」


「主人が、いう事を聞かないとぶつんです、熱湯をかけられたり、蹴られたり、私がトロいから、悪いんですけど」


「酷いわ、そんなの。その人だって貴方と同じ人間じゃない」


「奴隷は同じ人間では、無いようです...だから、そういう扱いをされて当然なんですよ」


「そんなのおかしいわ!」


マリーさんは、ずんずんと女の子に近寄っていった。


「その主人ってやつを私の前に連れて来なさい!ひっぱたいてあげるわ!貴方をもういじめないように叱ってあげるわ!」


女の子の目線に立ち、マリーさんははっきりと言った。女の子は、少し戸惑うように目を泳がせた。


「それが...主人が、いなくなってしまったんです。主人の家にいたのに、目が覚めたら、ついさっき暗くて冷たい石の上にいて、暗い中この場所だけは、明るくてつい、ここに吸い込まれるように入ってしまって」


どうして変わった人達がこのコンビニに集まるのか、なんとなく彼女が答えを示してくれた気がした。

この世界に来た人達は皆不安で仕方なくて、何故かよくわからないこの土地に来ていて、深夜で真っ暗な中、このコンビニだけは、24時間営業のこのコンビニの明かりを頼りにここに集まってくるのだろう。


コンビニの床で震えている彼女も、その一人なんだ。


「なんだ、じゃあよかったわ。その主人とやらとここに来て離れられたって事でしょう?じゃあ今日から貴方は自由なのよ!よかったわ!」


マリーさんは、女の子の手を取った。


「じ...ゆう、ですか?」


「そうよ!自由!ここにはもうあなたの主人はいないのよ!」


マリーさんは大きく両手を広げて微笑んだ。その様子に、きょとんとする女の子。


「じ....ゆう.....ですか。主人に殴られる日々から、解放される事を、私は望んでいたはずなのに、主人が、もういない、と言われると、私はどうしたらいいのか...どこにいけばいいのか...私は、これから先が、真っ暗で何もわかりません...」


「大丈夫よ!あなたの行く道は私が照らしてあげるわ!まずはその傷をお医者さんに見せましょう!私が前に風邪をひいたときに診てくれたナイチンゲール先生ならきっとすぐ治してくれるわ!」


世界は狭い。

女の子の手をとったマリーさんは、にっこりと微笑んだ。対照的に女の子は、戸惑いと困惑に眉を下げていたが、マリーさんの手を弱々しく握り返していた。

本日も読んでくださりありがとうございます。


前回の続き

一人で10テーブル回すおばあさんのカフェに入ったのですが、おばあさん急ぎすぎて走ってテーブル回ってたんですね、それがもう危なっかしくて心配で、まず注文をいったんですが、メモしてなく、暗記していったのでしょうか「メモしなくて大丈夫ですか?」というのは失礼かなと思い黙っていたのですが、案の定注文が間違っていて、まぁまぁ、それは忙しいし謝罪してもらいおばあさんがすぐ持ってきます!と違う品を持ってきてもらったんですが、その品を置く時テーブルにドンと置いて「クソ熱いんで!!お気をつけて!」とワンピースのサンジみたいなことを言って他の人の案内に走っていってしまいました。

あのカフェのおばあさんは今も走り回っているのか、なんというか最初は厳しい接客業の指導を受けてきたのでこれ先輩が見たら怒るんだろうなと思ってましたが、店を出るときはご飯も驚く程美味しかったし割と満足していた覚えがあります。

たまにこうフッとそのおばあさんのことを思い出すんですよね

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