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深夜のコンビニバイト八十四日目 ロボット到着

正直私に似たロボットが私の代わりに学校に登校してくれたら、なんて昔は思ってましたが今はあんまり思えないですね。ロボットの失敗が私の失敗になるという事や、ロボットが突然暴走して人を怪我させたりした時に私が責任取らなくちゃいけなくなるというのを考えるようになりましたよ。私は大人になったのでね。

後私が仕事場に戻った時に、前の、ロボットのガイアちゃんの方が良かった、なんて言われたらただでさえわからない自分の存在意義が消えてなくなる気がして怖いのですよね。

深夜のコンビニバイト八十四日目。


「村松君、なんかさっきコンビニにすんごいのが届いたんだけど見てくれない?」


「何ですか」


すごいのではない、すんごいの。

店長も驚く荷物とは...気になって俺も店長に続く。休憩室に置いてあった150センチくらい、女性の背丈くらいの高さの発泡スチロールを見て、俺は目を見張った。


「何ですかこれ」


「なんかね、最近各コンビニに配られてるんだってこれ。ここでも使ってくれって」


発泡スチロールを前にカパッと開けると、


「うわぁああああ!!??」


中には、"人"が入っていた。

黒髪に三つ編み、丸メガネの俺達と同じコンビニの制服を着た俺と同い年くらいの女性がいた。目を閉じていて、まるで人形のようだ。


「な、なな!?なんで人が!?」


「こ、これ、ロボットらしいよ」


「ロボット!?」


店長は、眉をひそめてロボットらしい彼女を見つめた。


「なんでも、試供品でちゃんと動くか深夜に人のいない時間帯に試して欲しいんだって。今日だけ限定で」


「はぁ...突然爆発したりしませんよねこれ...」


「大丈夫だと思うよ...多分。こういうのは若い子の方が詳しいと思うからちょっと動かしてみてくれない?」


「.....えぇ、俺できるかなぁ」


えーっと、箱に一緒に入っていた説明書のようなものを読むと、首の後ろにスイッチがあるらしい。

どれどれ...あった。これか。

うなじあたりにホクロにも似た黒いスイッチのようなものがあった。


「押しますよ...」


ごくりと喉がなった。

店長も緊張した面持ちでその様子を見守る。


プシュウウウと煙が首のスイッチから溢れるように出てきて、彼女の目がパチリと開いた──。


***


「チューリップちゃん」


「はい」


店長が名付けた三つ編み丸メガネの女型ロボット。

店長曰く、一晩寝ずに考えた名前だそうだ。チューリップの花言葉は、「思いやり」

お客様に思いやりが持てる子になってほしいとの事だった。

本当にガチで名前を考えてて俺は正直呼ぶのが恥ずかしいが、店長がこんなに頑張って考えた名前だ。呼ばざるおえない。


「ちゅ、ちゅーりっぷちゃん」


恥ずかしい!!!震え声で呼んでみるが、チューリップちゃんは、ちょっとこっちを向いて首を傾げる。

チューリップちゃん、店長に俺が出勤する前に半日くらいかけて名前や、お店の事などを裏で叩き込まれたらしくあれから呼んだら反応するようになっていた。


「あ、あの、えっと」


呼んでみたかった、なんて言えない。


「今日はこれからレジとかするの?」


首を傾げるチューリップちゃん。

さっき店長が色々教えてあげたと言ってたけれど、もしかして人間の言語が話せないのだろうか?ずっと無表情だし。

さっき、チューリップちゃんの事をある程度説明した後トイレに行った店長が戻ってきた。


「ごめんごめん、チューリップちゃんには今日色々教えてあげたから今日は村松君とお客様の少ない深夜に接客の練習をしようね」


「はい、店長様、チューリップ、店長様の為に頑張ります」


「店長様はやめない?」


ええぇええ!?いやいや、さっきの俺の反応と全然違ーう!?あれなの、人見知りなのかな?この子は、さっきと違うぞ反応が!さっきと同様顔は無表情だが、声は明るく敬礼までしている。

喋れんの!?


「村松君は先輩だから、先輩って呼ぶんだよ」


「はい、店長様」


店長は可愛くて仕方がないという笑顔で接している。女性が苦手だと言っていたが、女型と言えど、自分で名付けて教育していくうちに可愛くなっていったのだろう。そんな店長が可愛い。


レジに二人で立つ。


「えっと、レジの使い方は教えてもらった?」


こくりと無表情で頷くチューリップちゃん。


「えっと、まず俺がトレーニングモードでやってみせるね」


カゴに適当に商品を入れて、レジ台に置いた。

だが、ふるふると首を振るチューリップちゃん。俺にレジ前からどけと手をひょいひょいと振る。

レジ前から退いてみると、物凄い正確に素早い動作でレジを操作し、一気にカゴに入っていた商品をレンジで温めて、袋に入れて、お金も払った程で完璧に操作していた。


「流石だ.....」


「どう?チューリップちゃん昼にさらっと教えたんだけど」


店長が休憩室から様子を見にきた。いつもならぐっすりなのに、娘の様子を見にきたようだ。可愛い。

昨日雲子の運動会で親バカなおじいちゃんと父さんを見てきたけど、父性本能みたいな奴なのだろうか。


「完璧ですよ。動作も早いし、流石ロボットって感じです」


「そうかぃ...よかった。偉いね、チューリップちゃん」


にっこりと褒める店長に、


「店長様の教え方がお上手だからです。チューリップは、もっと店長様にお褒めいただけるよう頑張ります」


無表情だが、ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねるチューリップちゃん。可愛いな。


「後、これからは、チューリップちゃんの事は、ロボットとかそういう風に思わないようにしていこうと思う。皆にも言ったけど、バイトメンバーの大切な一人として皆で接していこう」


店長の一言に、俺は大きく頷いた。

店長のそういう所大好きなんだよなぁ。


「勿体ないお言葉です店長様。お店の売り上げに貢献できるよう、皆様のお役に立てるよう頑張ります」


チューリップちゃんは、おーと拳を振り上げた。無表情だが、感情豊かな子なんだな。俺達は笑いあった。
































だが、彼女との別れは酷く残酷に、突然やってくる。


本日も読んでくださりありがとうございます。


私の考えた最強ロボット。


膝枕耳かきマッサージ褒めてくれる猫耳エルフ金髪ツインテール黒セーラー服青い目美少女。

これだけでもうなんとなく想像できると思いますが、そういう事です。


昔はやはり自分にそっくりなロボットが欲しかったですね。代わりに学校にいって、勉強してくれて、人付き合いとかもやってくれて、運動会もでてくれて、みたいなね?

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