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深夜のコンビニバイト八十日目 金梨君来店

八十話と。ここまで続くとは思っていなかった。

おばあちゃんの年齢を越したぞ。皆さんが読んでくださるお陰ですね。ありがとうございます。

深夜のコンビニバイト八十日目。


昨日と違って、今日の店長の背中は丸まっていた。


「どうしたんですか?店長」


「あ、いや...昨日はなんというか、凄く売れ行きが良くて大繁盛って感じだったんだけどね.....?その、今日は逆に酷いくらい全然で」


「え?」


「昼までは普通だったんだけど、夜の九時くらいからがくんと人が来なくなっちゃって...から今の時間まで昨日は止めどなく人が並んでたのに、今日は一人も来てないよ」


昨日は多分座敷わらしの笑子ちゃんがいたから大繁盛だったんだろうな。


「昨日と同じくらい人が来ると困ると思って、今日は深夜にマリーさんもいれたから、三人で。何かあったら呼んでね」


「昨日物凄い人でしたもんね...三人、か」


ロッカーで着替えながら、三人、また新しく入ったんだ。

どんな人なんだろうなんて呑気なことを考えていた。


着替えてレジに向かう為に、深呼吸して扉を開ける。

一応俺は先輩なんだから、先輩らしく、先輩らしく。


ガチャリと扉を開けると、


「こらっ!だめでしょー金梨君!」


「チッ」


マリーさんに怒られて、舌打ちしながら正座させられている見知らぬ男の子。


「正座ちゃんとするの!何よその態度は!私はセンパイ、センパイなのよ!」


「はっはー、ボクはコレが正常運転なんで」


「今貴方はクルマを運転してないでしょう?今貴方は座ってるの!何笑ってるの!こら!ちゃんとセンパイの話を聞きなさーい!」


「.....何してるんですかレジの裏で新人の男の子正座させて」


俺は呆れたようにマリーさんに話しかけると、


「あらあらっ!久しぶりね!確か名前は....えっと、そうね、確か...貴方はゆかりが言っていた確か...."攻め"の村松君ね!」


思いの他クソみたいな覚え方されてた。

明るく元気に言うなそういう事。


「はい、そうです。攻めの村松です」


何言ってんだ俺。


「受けのマック君はお元気?」


マジでやめろ。

ゆかりさんこの何も知らない純粋なお姫様に何教えてんだ。


「残念ながら知りません」


「そうだ!村松君。彼を紹介するわ!私の後輩で新しく入った金梨一門梨(かねなしいちもんなし)君よ。仲良くしてあげてね」


彼に名前をつけた親は一体何考えてんだ。彼にどんな人生を歩ませたいんだ。

金梨君は、マリーさんより背が低く、無表情で真っ黒な目、片目を隠すくらい前髪が長い彼は、俯きがちに俺を見た。


「梨が二つ名前についていてしゃりしゃりっていい音がしそうな感じね」


何言ってんだこの人。


「ほら、金梨君挨拶して」


「.....金梨です」


無愛想に、そっぽを向いて呟いた金梨君に、俺は笑顔で応じる。


「よろしくね、金梨君」


「ノンノン!金梨です。よろしくお願いしますお兄さん、でしょう?もう、顔は可愛らしいんだからもっとニコニコシャリッとしなさい!」


梨に繋げるの気に入ったんだな。マリーさん。


「.....うっせ」


「何よ!その態度は!お姉さんに対して!」


プンスコ怒るマリーさんだが、何となく楽しそうに見える。面倒見の良さが滲み出てるな。


「それにしても、全くお客さん来ないわ。退屈ね.....昨日はね、本当ここはパーティ会場かしらってくらい人がいたのに。今じゃ閑古鳥の鳴き声が聞こえて来るようだわ」


レジ台に頬杖をつきながら退屈そうに口を尖らせるマリーさん。


「金梨君に私のレジ姿を見せてあげられなくて残念だわ」


金梨君は、目を伏せて呟いた。


「別に...いい」


プルルルルルル...プルルルルルル...。


電話が鳴った、店長に電話対応の仕方を教えてもらったので俺は電話に出る。


「おたくのコンビニで買った充電器なんですが、不良品で」


苦情の電話だ...。

冷静に、淡々とコンビニで買った商品が急に使えなくなったとの苦情の電話だった。

こんな時間に苦情の電話がかかってくるなんて初めてだ。どうしよう。


「て、店長に」


「店長、呼んできたわよ」


マリーさんは、先回りして店長を呼びに行ってくれていた。店長が急いで俺と電話を交代する。

10分程して電話を切った店長は、ふぅと一息したかと思ったら──。

プルルルルルル...また電話だ。


「はい──」


また謝っている。どうやら苦情の電話らしい。また不良品だったとかだろうか。

電話が終わったと思ったら、またプルルルルルル、電話がかかってきた。


「.....帰る」


金梨君が一言ポツリと呟いた。


「どうしたの?まだ帰っちゃダメよ金梨君」


マリーさんが、俯いて俺達に背を向ける金梨君を呼び止めた。


「...ボクが帰れば電話止まるよ」


「どういう事?」


マリーさんが、金梨君の腕を掴んで迷子の子供に話を聞くように、目線を合わせる。


「ボクがいるから、お客さん来ないんだよ。ボクがいるから、苦情の電話がなりやまないんだよ。このままボクがここにいたら、今度はまた前みたいにコンビニ強盗が起きると思うよ」


「そんなの金梨君に関係ないことばかりよ?」


「あるよ、ボクは...貧乏神だから」


貧乏神。

俺は、金梨君の顔を凝視した。貧乏の神さま、貧乏神。昨日バイトをしていた座敷わらしこと、笑子ちゃんと正反対の存在。


「ボクがいるとこの店に不幸をもたらすからさ。ボクなんていない方がいいんだよ。前の銀行強盗の時だって、ボクは少し前からこっそり買い物に来てたからだよ。怖くて隠れてたけど」


「そんな事あるわけないでしょう?ビンボウガミってなによ。金梨君は神様じゃなくて、普通の男の子でしょう?不幸をもたらすなんて勘違いよ」


マリーさんは尚も金梨君の言葉を信じずに真っ直ぐに彼を見る。

昨日の座敷わらしとしての笑子ちゃんを見てしまうと、正反対の金梨君が貧乏神なのだという事を、俺は理解してしまう。

金梨君は、黙って首を振った。


「コンビニでバイトとか、してみたくてこうしてやってみたけど、ダメだねやっぱ。ボクは台風みたいに店に災害をもたらして人を不幸にする事しかできないんだ。ボクがいるとこの店も潰れちゃうよ」


泣きそうな顔で俯く彼の顔を、マリーさんは両手で挟み込みパァンと叩いた。


「いっ...!?」


「お馬鹿ね!あなたは本当お馬鹿だわ!あなた一人のせいでこの大きなお城が潰れるわけないでしょう?帰さないわよ!今日は私が色々教えてあげるんだから!私のことはマリーお姉さんって呼びなさい!お客さんの事は店長がなんとかしてくれるわ!お客さんが怒ってお店に来たら私がなんとかしてあげるわ!ボクなんていない方がいいなんて、悲しいこと言わないで?」


「.....ボクは、ずっと不幸の申し子だって言われて来た。いない方がいいって言われて来たから...」


「この世にいない方がいい子なんて一人もいないのよ」


マリーさんは、にっこり微笑んで金梨君の頭を優しく撫でた。


「よしよし、私はいつも幸せなのよ。金梨君が不幸なら、私の幸せを分けてあげるわ。ほら、ぎゅーって」


「や、やめろよ!」


流石一王国の女王様だ。

金梨君は、照れたように俯いた。


苦情の電話が収まって、店長はふぅと汗を拭きながら休憩室へと足を進ませる。


「店長、お疲れ様です...」


「ありがとう...明日返金、返品って事で話がついたよ。それにしても、今日は本当にお客様少ないね。俺とマリーさんと村松君の"三人"じゃぁ、余るくらいだったねぇ...」


成る程な...成る程、成る程なぁ...俺はあえて聞き返さなかった。

金梨君、他の人に見えないんだ...マリーさんは、なんとなくそういう人達にも好かれそうだから見えるのも納得だけど..。

本日も読んでくださりありがとうございます。


私は中二辺りから禁断の魔術か何かに触れ、何かを楽しみにすると必ず不幸な事が起きる呪いにかけられた不幸の申し子なのですが、ディズニー然り、球技大会然り、楽しみにしていた初東京では、タクシーに騙されてぼったくられたり、2回目では乗るバスが反対車線で私の目の前を通り過ぎたり、ちょっと居眠りしてたら乗り過ごして駅を降りたタイミングで台風が直撃して土砂降りの中二時間くらい駅でまったり、まだまだ腐る程エピソードがありすぎて何かを楽しみにする事を諦めました。何かを楽しみにしていい事があった覚えがなく、イベント前は何も考えずギリギリになって準備すると当日不幸な事が起こりません。

運命を呪ってガイアオルタと化して言ったのですが、最近職業診断というものがありやってみたら一位に向いてる職業は「呪術師」でした。もうアベンジャーなクラスキャスターですよ私は。

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