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深夜のコンビニバイト七十三日目 デュラハン来店

今日はお祭りに行ったんですが、人が多くてげんなりしました。

私は実は金星人なのですが、金星人は人が苦手なので仕方ないのです。竜巻みたいな技で道を開けたくなりますね。

深夜のコンビニバイト七十三日目。


ピロリロピロリロ。


「いらっし.....うわぁ、うわぁあああ!!!!!」


思わず叫び声をあげていた。深夜に張り裂けんばかりの大声を。

全国で働いている全てのコンビニ店員さんに問いたい。

深夜に来店してきたお客様の"首から上"がなかったら、どうするだろうか。

俺は、叫んでとりあえずレジの下に隠れた。


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い何で頭ない!?頭何でない!?

恐る恐るレジから首を出し相手の様子を伺おうと顔をそうっと出すと、レジ前には既に頭のないお客様がこちらを見下げていた。

いや、見てないけど!!頭ないから!!


「ひぃいいいいい!!!!!!」


そのお客様は、何か手に持っていた。

潤んだ目ででそれを確認すると、それはスケッチブックだった。

ペンで小さい、女の子らしい字でこう書いてあった。


「わたしの頭、しりませんか?」


いや知らん!!!!!怖い!!!

どんなホラー!?首から上のない人に頭知らないか聞かれるなんて今まで生きてきて初めてだしこんな事が起きるってここまで生きてきて思いもしなかったよ!!


「と、当店ではお取り扱いしておりません.....」


震え声でなんとか声を絞り出す。純粋に俺はお化けが怖いとか心霊系が怖いとかそういうのでなく純粋に首から上のないお客様がコンビニに来たら、怖い!!


「そうですか」


カリカリと、さっきと違って控えめな執筆音。ショックを受けている事が小さな文字から伝わってくる。

そもそも耳ないのに何で声聞こえてるのこの人。


「お騒がせしました」


また丸っこい女の子らしい文字でサラサラと書くと、首から上のないお客様は俺にくるりと背を向けた。

もしかしてこのお客様、ただ頭を探してるだけでそんなに悪い人じゃない?


「あ、あの!」


思わず呼び止めてしまった。レジ台から顔を出し、体まで出してしまった。

お客様は、黒いカーディガンにオレンジの秋らしいスカートを着た素朴な文学少女というような出で立ちをしていた。

首から上がないのに、滲み出る清楚さと純粋さから彼女の頭はきっと美しいのだろうという事は容易に想像できてしまう。

歩き方から大人しい性格が滲み出ていた。


「?」


はてなが小さくスケッチブックに描かれる。


「頭、ど、どこで無くしたんですか?」


頭のないお客様は、パンと嬉しそうに手を叩き、ガリガリとスケッチブックに書いた文字を俺の目の前にバンッと見せた。


「一緒に探してくださるのですか?」


「は、はぁ。まぁ、頭がないとこの先生きていくのに困りますよね」


そもそも頭がないのにどうして生きていられるんだ。


「わたしは、デュラハンなので頭がなくても基本的には生きていけます。でも、やっぱり頭がないとこうして筆談になりますし、デュラハンは食事をしなくても生きてはいけるんですが、食欲の秋という事でやっぱり今は食べ物も美味しい時期じゃないですか。わたしは食事を楽しみたい。だからこの姿じゃ色々不便なんですよね」


食欲の秋の話よりもっと大事な事があると思う。


「頭を無くしたのは、この辺...コンビニ付近だと思うんですが、どこを探しても見つからなくて...コンビニに頭が落とし物として届いてないかなって」


いや頭がコンビニに落し物として届いたら俺は届けた奴を現行犯で通報するんだけど。


「頭を落としたのは何でなんですか?」


「...焼き芋が美味しくてよく覚えてないんです」


てへへと、もじもじするデュラハンさん。

だめだこりゃ俺は頭を抱えた。


でもこのままだとこの付近で生首発見。バラバラ殺人か!?とか言ってニュースになりそうで怖いな。それで頭が押収されたらもう二度とデュラハンさんの元へ頭が戻る事はないだろう。


「早く探さないと!!」


「無くしたと気がついてからこの辺を探したんですけどなかなか見つからなくて。頭が近くにないと記憶力がガクンと落ちてしまうので...早く見つけたいんですけどね」


「いやその格好で探し回ったんですか!?」


「いいえ、ちゃんとその時の為に被り物をしていたんです。大きな首のマネキンを空洞にして被せたんですよ。でもそれもなくしちゃって」


「どうして無くしたんですか?」


嫌な予感しかしない。


「カスタード味のたい焼きを買った所までは覚えてるんですけど、あっわたし食べられないじゃん!って。それで...わたしどうしたんでしたっけ...よく覚えてなくて。頭もいつのまにかなくなってて」


もうこの人だめだ!!!!可愛いけどだめだ!!!!頭部に対しての危機意識がなってない!!!というか本当にそのたい焼きどうしたの!その話の行方がめちゃくちゃ気になりすぎるんだけど!!


「もうそれスペア見つけても無くしちゃいますよ」


俺が諦めたように言うと、焦ったように怒ったようにデュラハンさんは手でジタバタとそんなことない!とジェスチャーした。


「そんな事ないです!つ、次から肌身離さず.....」


スケッチブックに筆圧の濃い字で書かれた文字。今の話を聞く限り心配しかないんだよなぁ。


「うぅ...今日は一旦帰りますぅ」


肩をがっくりと落とすデュラハンさん。

不憫だが、こればかりはもうドジというかおっちょこちょいというか、心配になるけど仕方ないな。

入り口あたりまでついていって、


「ま、まぁまぁそのうち見つかりますよ」


首だけで頷くデュラハンさんを励ましながら、一緒に外に出て──。


「あ.......あど.....」


出入り口で、いつぞやのフランケンシュタインさんが待ってましたというように、飛び出してきた。


「あ!フランケンシュタインさん!!どうしたんですか?」


「あ....あど...あど...これ」


フランケンシュタインさんは、後ろ手に隠していた"女性の頭部"を俺達に差し出した。


「!!!!!?!?!!?!?」


俺は声にならない声を上げて何も言えなくなった。固まった。思考が停止した。


「これ...わたしの頭」


スケッチブックにサラサラと書かれる感動を露わにした文字。両手でそっと整った顔立ちの黒髪ショートヘアの頭を受け取るデュラハンさん。


「お.....ひ...るの...ど..ぎ..だい....やぎ...ぐ.......れだ。ご....まっ....でだ....ざ....がじだ」


頭がなくて食べられなかったカスタード味のたい焼きをどうやらフランケンシュタインさんにあげたらしい。


「いや、それはわたしが食べられなかったからで...あっ!思い出した!!あなた公園で焼き芋を焼いていた!!」


デュラハンさんは、頭が戻ってきたので首に装着してスケッチブックではなく自分の口で喋っている。


「.....ご...どぼ...だぢに....やいで...だ..やぎい...ぼ...お...いじ...ぞ...に...だ...べで...だ...」


「本当に美味しかった!!ありがとう。そっか、その時にわたし、もしかして首を置いてきてしまったの?」


「.....ぞ...う...ぞ...のあど....あだだを....ざがじ...だ。みづ....げだ...ら、だい...やぎをぐ...れで...ぞのまま...いぞいで..はじっで...いっで...わだぜな...がっだ」


「うん、あの時物凄く急いでたから...ありがとう!よかった!ありがとう」


デュラハンさんは、フランケンシュタインさんの両手をそっと握って微笑んだ。


つまり、デュラハンさんはフランケンシュタインさんが子供達のために焼いていた焼き芋を食べている間に頭部をなくし、それをフランケンシュタインさんが発見した。

デュラハンさんに届けようとしたが、自分では食べれないカスタード味のたい焼きを渡された後急いで自分の首を探しに行ってしまった彼女に、渡す事ができず今まで彼女を探し回ってやっと見つけたって感じなんだろうか?

再会できたことは良かったが、これまた──。


「よかった。焼き芋また食べに行きますね」


にっこり笑うデュラハンさんに、フランケンシュタインさんは俯いてコクリと頷いた。


おいおい、またその焼き芋食べてまた頭忘れたりしないよなこの人...。

本日も読んでくださりありがとうございます。


卒業旅行でディズニーランドにお友達といった時、人に酔って吐きそうになってパレードの途中でトイレに行ったら人混みで友達とはぐれて嗚咽と吐き気と頭痛で死にそうになりながらディズニーランド中を友達を探して歩き回った事があります。友達の携帯の充電が切れたっぽくて電話も繋がらなくてですね。

あの時意識も朦朧としていて何か言葉を発したら吐いてしまうような状況でした。結局人とはぐれた時に待ち合わせする待ち合わせ場所みたいな所で友達と会えましたが、会った30秒後くらいに医務室のベッドの上にいました。それからディズニーランドには行っていません。怖くて行けません。

どこかに出かけたり、楽しみにしてることがあるとほぼ確実に不幸な事に見舞われることが多いです。なので旅行などは基本的に楽しみにしない事にしています。無です無。それまでどれだけ無でいられるかが、私の旅行時に不幸なことが起きないかになりますので。

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