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深夜のコンビニバイト五十九日目 鶴来店

昨日は小説書きながら寝てしまい起きたら朝でした。

最近お仕事の部署が変わったので前より精神的にも肉体的にも慣れるまで疲れて帰ってすぐ気を失うように寝てしまうのです。寝るって幸せですね。嫌な事仕事のこと全部寝てる間は忘れてられる。今日はお休みなのでいっぱい寝ます。

夏は日が昇るのが早いので、春の時と違いかなり早い時間から外は明るくなる。

明るくなると店長が起きてきて、軽くストレッチした後お気に入りのぞうさんのじょうろを片手にまずコンビニの外に植えた花壇に水をあげにいく。


だが、今日は店長は外に出て三秒で店に戻ってきた。


「村松君、外に鶴が倒れてるよ」


「夢の話ですか店長」


「信じられないかもしれないけど本当なんだよ...ちょ、ちょっと連れてくる」


いやこんな朝早くからコンビニの店の前に鶴が倒れてるわけない...数秒でコンビニの外から鶴を優しく抱き抱えて連れてきた店長に、俺は絶句した。


「店長、それ、鶴じゃないですか」


俺も夢を見ているのだろうか。

コンビニの前にこんな立派で綺麗な白い鶴が倒れている事なんてあるのだろうか。


「ぐったりしてるけど生きてるみたい。ちょっと介抱してくる」


「え!?介抱!?」


「うん、命は大切だからね。専門知識とかないけど見た感じ熱中症とお腹空いてるみたいだから何か鶴が食べそうなもの作って食べさせてみる」


人間に介抱するみたいに鶴を優しく抱き抱たまま、休憩室に向かった店長。

なんだかんだ店長なら鶴でも亀でもなんでも介抱できてしまいそうで、あっさり納得してしまった。


少ししたら店長が休憩室から戻ってきた。店長の後ろをべったりとくっつく鶴と共に。

いやあの短時間で何したの店長。めちゃくちゃ懐いてるんだけど。


「元気になってよかったよ...」


まさにムキムキナイチンゲール。ぐったりとしていた鶴が元気に店長についてまわっていた。

店長は外まで鶴を見送り、


「元気にやるんだよ」


飛び立つ鶴に手を振ってから、またいつものようにお気に入りのぞうさんのじょうろで花壇に水をあげて店内へと戻ってきた。

流石店長としかいう他がないくらいスムーズに店の前で倒れていた鶴を助けてたよな。

遠い田舎とかで元気に暮らしていけるといいんだけどな。


だが、俺達はすぐまたあの鶴に再会する事になる。


深夜のコンビニバイト五十九日目。


ピロリロピロリロ。


「いらっしゃいませ」


絹のような美しい長い黒髪に、ふわりとした白いワンピース、何万年に一人なんじゃないかというくらいの美しい顔立ちをした美女がコンビニに来店してきた。


「あ、あのあの、夜分遅くにごめんなさい。た、体調が悪い為ここで少しおやすみさせていただけないでしょうか」


頭を押さえながら、申し訳なさそうに俯く美女。

透き通るような白い肌は、そう言われてみると心なしか青白いようにも見える。


「え、えっと、少々お待ちください!あ、よろしかったらあそこの休憩スペースで座って休んでいてください」


とりあえず店長に聞いてみないと。

休憩室を勢いよく開けて、


「店長!お客様が体調が悪いと仰ってます!」


店長は、スッと起き上がってこくりと頷くと、三十秒で支度をし、店内へと向かう。


「あちらのお客様です」


若くて美しく、更に店長の苦手な女性のお客様だが、店長は具合が悪い彼女を介抱しないとという事が強かったのだろう。すぐさま話しかけに向かっていた。


「お客様、体調が悪いという事でしたが、よろしければ救急車をお呼びいたしましょうか」


「あっ...。い、いえ、あの少しだけ畳に横になって休める事ができればいいのです。休憩室で少しだけ休ませていただいてもよろしいですか...ご迷惑かとは思いますが、ごめんなさい」


店長の服の裾をつまんで目に涙を溜めながら上目遣いで店長を見つめる美女に、店長は変わらず店長としての態度で接する。


「いえいえ、構いませんよ。あまり綺麗なところではありませんが少し横になって体調が良くなるのでしたら」


女性はふらりと立ち上がり真っ赤になりながらおもむろに店長の腕に自分の腕を回した。


「ひゃっ」


店長が、短い悲鳴をあげ目を見開いて女性を凝視した。


「ご、ごめんなさい、少しふらふらするもので。邪魔者がいないところで...ではなくむ、むむ向こうで私をまた介抱してくださいませんか」


「えっちょ、ちょっとまっ、待ってください」


村松君...と困ったように俺を見つめられても困るよ店長。俺はどうすればいいの。


「店長とりあえず休憩室まで」


こくりと力強く頷くと店長は女性を腕にひっつけたまま休憩室までロボットのようにカクカクと向かった。可愛い。

流石に女性に抱きつかれたりするのはダメだったんだな店長。

それにしても、あの女性なんだか違和感があるんだよなぁ。

いや、俺の勘違いかもしれないけど、初対面のコンビニの店長にこんなに無防備に抱きついたりするだろうか?しかも自分は女性で相手は男性だぞ。

今の女性ってそれが普通なのか?よくわからないけど。

彼女を見ているのがバレたのか、休憩室の扉の前でぴたりと立ち止まった女性は、スゥッと店長の腕から自分の両手を離すと俺の所にふらりと歩いて来た。


「ぜ、絶対にこの休憩室の中を、のぞいてはいけませんよ。や、約束してください」


桜色の唇に自分の唇に人差し指を当てて来店当初の青白い顔が真っ赤になりながらでも、力強い目でそう言われた。

俺はその目にこくりと頷くことしかできなかった。


休憩室に入った二人を見送りながら俺はあの時の女性の目が頭から離れられなかった。なんだあの有無を言わさない感じ。

店長に初対面で店長の腕に抱きついていたのも、目に涙を溜めて服の裾をつまんでたのも、なんだか色々あざとかった気がする。体調が悪いと言っていたのも本当だったのか?

って考える俺は店長の女かよ。まぁ店長は大好きだけども。


休憩室を凝視しながらじっくり考える。何で扉を開けたらいけないんだ。扉の中で何が起きているんだ。店長とあの美しい女性が二人きり。

体調が本当に悪かったのだとしても、こんな深夜にわざわざコンビニに来て体調が悪いというのなら家で寝てればいいのではないだろうか。しかもあの白いワンピース、深夜のコンビニに来る格好じゃないよなぁ。いや、深夜に来る客いろんな格好してるから最初すんなり受け入れちゃったけど。

頭がフル回転し、気がついたら俺は休憩室の前に立っていた。


扉にそうっと耳を当てて中の音を聞こうとした刹那、ドタドタドタッという大きな音が向こう側から聞こえた。

何だ今の音?普通じゃない音がしたけど。

そうっと扉を開けて中を確認すると、何故か部屋は真っ暗。

暗闇の中から、先ほどの女性が飛び出してきた。


「た、助けてください!彼が...彼が」


店長の事だろう急いでパチリと電気をつけると、店長が床に倒れていた。


「どうしたんですか!店長!!店長!!」


急いで店長に駆け寄ると店長は、気絶していた。


「何があったんですか!?二人で休憩室に入ってから店長が気絶してるっておかしいでしょう!?」


「あの、あのあのじ、実は」


今にも泣き出しそうな女性は、シュルシュルとどんどん縮んで行き、朝方きた鶴へと姿を変えた。


「私、朝助けてもらった鶴なんです」


「えぇ!?」


誰が予想できたよそんな事!!

目頭を羽で押さえながら震えた声で話し続ける鶴。


「店長さんに恩返しをしようと深夜にやってきました。人間の男性は、女性の裸をみると喜ぶのでしょう?ワンピースをまくしあげたら店長さんが顔を真っ赤にして白目を向いて倒れてしまったのです。私、そんなに醜い体をしていたのでしょうか。どうして喜んでもらえなかったのでしょうか」


どこで覚えてきたそんなあってるけど間違ってる知識。


「店長には刺激が強すぎたんですね。後色々頭が起きた出来事を処理できなかったんだろうな」


「今の時代は羽で反物を織ってもあまり売れないというので本で読んだ現代の恩返しをしようと思ったのですが、わ、私は間違えてしまったのでしょうか」


震え声で涙を浮かべた彼女に、俺は静かに言った。


「きっと店長は、こんな事で恩返しされるよりもっと自分の体大事にしてもうコンビニの前で倒れないように元気に田舎で鶴として暮らしてた方が喜んでたと思いますよ」


倒れている店長に休憩室の押入れから毛布を持ってきてふわりとかける。


「で、でも私は...彼に恩返しがしたかったのです。何も、何も持たない、何もできない私ができるのは....これくらいしか、なくてぐすっ、私っ」


とうとう泣き出してしまった。

俺ははぁとため息をついて、


「店長は花が好きです。感謝の気持ちとささやかな花をプレゼントしたら喜ぶと思いますよ」


「花、ですか。花で店長さんは喜んでくれるんですね?私は彼に恩返しができるのですね?」


「はい」


「そうですか...わかりました。明日またお花を持って店長さんの元へ恩返しに参ります」


スススッと美女の姿に戻り、にっこり笑った鶴さんは帰り際俺に背を向けたまま優しい声色で言った。


「ありがとうございます。このご恩は必ずお返ししますから」


鶴の恩返し、まだしばらく続きそうだな。


本日も読んでくださりありがとうございます。


高校の時、胸を触られたので「破廉恥!」と叫んだらあだ名がハレンチになりました。

私がハレンチな女みたいで誠に遺憾でしたが、何故か高校卒業して働いている今も、ハレンチと呼ばれます。

私はいつもタイツを履いているのですが、暑かったので脱いで行こうとしたら「生足はハレンチ学園!そんなに足を見せたいかお前は!」と母親に怒られた話をしたらパートのお母さんにハレンチってあだ名で呼ばれて始めたのでもう私にハレンチは付いて回るのですね。

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