深夜のコンビニバイト五十三日目 浦島太郎来店
最近帰ってきて死んだように寝てる事が多いので突如としておやすみしてしまうかもしれません。
そういう時は、あぁ、今日死んでるな。あぁ、今日は投稿してる生きてるんだな。そう思ってください。
あるところに浦島太郎という、心優しい青年がおった。
ある日、コンビニの前で犬とキジと猿に襲われている男性を見かけたので彼は助けて逃がしてやった。
彼はお礼にコンビニの中に入って浦島太郎にこう言った。
「これで魔法少女プリプリハルミちゃんのフィギュアが手に入るよぉ...ぐへへ」
深夜のコンビニバイト五十三日目。
ピロリロピロリロ。
「いらっしゃいませ...」
ゲッ桃太郎本当にまた来やがった。
隣にいるのは...何だ誰だ。
長い髪を後ろで一つ縛りにし、青い着物藁の腰みのをつけている。
釣竿を持ち、メガネをかけたいかにも真面目そうな男性があの桃太郎と一緒にいた。
何フィギュア買うために桃太郎にカツアゲでもされてんのこの真面目そうな人。
ピロリロピロリロ。
「おい!桃太郎!」
お約束の犬猿キジも登場だ。
「あぁ...よかった、あぁああ!!よかったぁあ!!まだあったぁハルミちゃん...犬猿キジの監視からやっと逃れてここまでたどり着いたと思ったらすぐ追いついてくるんだもんなぁ...でも今日は何が何でも買うんだ」
ふらふらと美少女フィギュア一番くじに近づいて行く桃太郎の前に犬猿キジが全力で立ちふさがる。
「ダメよ!桃ちゃん!今月厳しいんやからずっといい子に我慢しとったやろ?なくなるまで我慢したらもうお金使わんでよくなるんやで、さぁ、目をつぶって帰ろう」
柴おかんは目に涙をためて叫んだ。
そんな柴おかんを見て、
「簡潔に言おう。帰らないなら殺す」
キジさんがヤクザみたいな目で桃太郎を見下ろした。
「そうだぜ。俺達と過ごしたこの約一週間、課金も、ネットの買い物も、フィギュアだって我慢できてただろうが!急に夜の道を裸足で走り出してどこに行くかと思ったら...テメェあげて落とす天才かよ」
猿が、見損なったぜと吐き捨てた。
「はっはっ...ふはははは!!!」
桃太郎は悪魔が乗り移ったかのように高笑いをし始めた。
両手で顔を押さえながら、悪い奴の顔をして動物達を見た。
「ばーかめぇ!俺がなぁ!この一週間オタク趣味で我慢してたのはよぉ!オメェらを安心させてハルミャンを手に入れるために決まってんだろうが!!」
「クズかよ」
やべ、口に出てた。
「おい、今なんか言ったか?」
桃太郎がこっち見た。
こっち見んなよ。
「いえ特に」
柴おかんはとうとう涙を流した。
「やっと...やっと桃ちゃんが更生したって喜んでたんよ...なのに、なのに全部演技やったん?」
タガが外れた桃太郎はゲス顔で笑った。
「あぁ、そうだよ。全ては今日ハルミャンを手に入れる為だ」
いや魔法少女プリプリハルミャンはここまで男の人生を狂わせてしまうものなのか?
「ふむふむ、そうか。成る程そういうことか...」
さっきまで顎に手を当てて黙って話を聞いていた釣竿の男は、うんうんと頷きながら桃太郎の前に立った。
「つまり、君は自らの欲の為にこの動物達と自分の生活費を利用していた。過去にも一回このコンビニでこの人形を買おうとしたがそれは失敗に終わり、更生したと見せかけながらここにくる機会をうかがっていた。そして今日このコンビニに現れた。そこをこの動物達に見つかり止められていた所を私が動物達に君が襲われていると勘違いして助けてしまったというわけか、成る程成る程」
何その分析能力。
釣竿の男は、目を閉じうんうんと頷くとカッと目を見開いたと思えば、桃太郎を思いっきりぶん殴った。
しかもグーで。
「ブボォゲ!!」
桃太郎は思いっきり吹っ飛ばされ、入り口前にぶっ倒れた。
「お、お前...しょ、初対面の相手をグーで殴る奴があるかよ...」
「ある。ここにいる。俺の名は浦島太郎。貴様のようなクズがこの世にいるといるだけで腹立たしい限りだ。貴様のような奴が亀をいじめるんだ」
格好いい...俺は小さく拍手した。
「あれ、浦島太郎って玉手箱をあけておじいさんになったんじゃ?」
「玉手箱を開ける?何の話だ。私は乙姫の言いつけを真面目に守り玉手箱は開けず大切にしまってある」
玉手箱を開けてない浦島太郎さんだ。
裏ルートの浦島太郎さんだ。
浦島太郎は、くるりと動物達を振り返り、膝をついて頭を下げた。
「先程はすまなかった。てっきりあいつが君達に襲われているものかと思い。だがそうではなかったようだ本当の"悪"はあいつのようだな」
浦島太郎は、桃太郎にズカズカ近づいて行く。
桃太郎はヒィと声を上げて後ずさった。
「おい、貴様。これからは動物達に苦労をかけず真っ向に生きて行く事を竜宮城に誓え」
「.....嫌だね、俺はハルミャンを愛している。オタクは諦めが悪いんだよ...正義とか悪とか関係ない。暴力で全てを解決しようとする奴が、正義であってたまるもんかよ」
胸倉を掴まれても、桃太郎は物怖じしなかった。
殴られても、口が切れて血が出ていても桃太郎のハルミャンへの愛はそれだけ深かったのだ。
「就活で失敗してヒキニートになった俺の、一人ぼっちだった俺の唯一心の支えだったアニメやゲーム。オタク趣味がなかったら、俺はきっと自殺してただろうな。俺からオタク趣味を取り上げるって事は俺を殺すも一緒なんだぜ」
「簡潔に言おう、死ね」
キジさん!!今それいう時じゃないから!!いや、そうなんだろうけど!
「.....ふむふむ、成る程成る程君は就職活動に失敗し心を病んでしまった。友達もいない、性格もクズ、顔も見ての通りだ」
浦島太郎さんがまた顎に手を当てて超分析を始めた。
笑いそうになった。
「おいテメェなんてこと言うんだよ」
浦島太郎さんは、立ち上がった桃太郎の周りを話しながら回った。
「そんな君に光をくれたのはアニメやゲーム、日本のオタクカルチャーだった。君はそれらに魅了され、生活費までつぎ込むようになってしまった。この動物達の生活費までもね。だが精神的にどん底にいた君はオタクカルチャーに縋り付かないと生きていけないほどに追い詰められていたのも事実なのだろうね」
浦島太郎は、桃太郎の手を取った。
「私と一緒に漁師をやろう」
「嫌ですけどぉ!?」
「君は友達もいない、君の心の内を近すぎる動物達にも打ち明けられず、オタク文化にのめり込んでいったのだろう。そこでだ、私が友人として君を徹底的に更生させてあげよう。幸いうちには亀さんもいるから、そこの動物達にも友達が増えるかもしれないぞ。ひきこもりでニートをやっているのだろう?うちに来てバイトしなさい」
「何でそうなんだよ!いかねぇよ」
「ヒキニートで生活費を食いつぶして動物達を困らせてのめり込んでいるからこんな事になっているのだろう。しっかり自分でお金を稼いで趣味につぎ込めば動物達も何も言う事はないのだ。貴様がオタク趣味を続けて行く唯一の方法だ」
浦島太郎は、釣竿を桃太郎に突き出した。
「亀をいじめる側の貴様から、亀を助ける側の貴様に私が更生してやろう」
「いや、結構です。マジで」
心底冷めた様子と冷めた目で首をブンブンと振る桃太郎に、浦島太郎のメガネは怒りか何かでパリンと割れた。
「ふむふむ、成る程わかった。じゃあこの人形を私が買おう...それで文句ないだろう」
財布から一万円を取り出して俺に差し出す浦島太郎。
「なんっっで!そうなるんだよ!マジでお前ふざけんなよ!」
浦島太郎にしがみつく桃太郎に、冷静な浦島太郎。
「違う、そうじゃない。私が貴様にこの人形を買ってやるのだ。そのお金を貴様が私の元で働き、返すというのはどうだろう」
「素晴らしい案だね。これなら桃ちゃんも更生できる...」
柴おかんが感動したように浦島太郎を見た。
「いや、結構だ。あんたに恩を売られるのも嫌だし、ハルミャンは自分のお金で手に入れたいから」
何言ってんだこいつ。
「いやテメェのお金じゃないだろうがよ!実家から送ってもらってるきびだんごの通信販売だろうが!いい加減にしろ!」
猿さんがとうとうキレた。
そりゃそうだろうな。俺もそう思う。
「んぁああ!!!いい加減にしろ!貴様は!ワガママばっかり言うな!」
「ワガママじゃねえし!テメェは俺のなんなんだよ関係ねえだろ!構うんじゃねえよ!」
浦島太郎と桃太郎はまた大げんかを始めた。
いつ終わるんだよこれ。
結局二人は掴み合いの喧嘩になり、俺が外でやってこいと言うと外で動物達の見守る中、二人はハルミャンフィギュアと桃太郎の人生を賭けて殴り合いの喧嘩を始めた。
深夜三時半の出来事だ。どうかしてる。
しばらくしてボロボロになった浦島太郎が来店してきた。
奴に勝ったのだろう。
勝者になった彼は、くじを全て買い占め、ハルミャンフィギュアも手に入れた。
「紙とペンはないか?」
「ありますよ」
浦島太郎は、紙にこう書いた。
人形を返して欲しくばこの場所に来い。漁師としてここで働くという意思を持ってな。待っているぞ桃太郎
浦島太郎より
「これを起きた桃太郎に渡しておいてくれ」
「は、はい」
いや完全に内容は悪役なんですけど!?返して欲しくばって元々桃太郎のものでもないからねハルミャン!
浦島太郎は、俯いて微笑んだ。
「あそこまで好きなものに打ち込める奴は初めて見た。少し羨ましいとさえ思うよ」
彼の背中は少し寂しく見えた。
浦島太郎が帰った後、ボロボロの桃太郎と動物達にメモを見せると、桃太郎は泣いた。
「ハルミャン...待っててね...いいぜ。行くよ血の海にしてやる」
いや漁師をやる意思を持って来いって言われてんのに何言ってんの。
また一波乱ありそうだなこのコンビ...。
本日も読んでくださりありがとうございます。
暑いですね最近。
私は夏は好きなんですよ。白いワンピースと、白い女優帽をかぶって出かけるのが好きですね。
でも冬が大嫌いでしてね、寒いのが苦手なんですよ。絶対家から出ないですね。働きにも行きたくないし、布団から出たくないし、この時は本当に仕事を辞めたい、どこか遠いところに行きたいと鬱状態になりかけるレベル。
その根源は寒さにあって、私小学校の時寒すぎて学校を早退した事があるんですよ。
「寒いです...無理です。帰ります(ガクガクブルブル」
「何言ってるの?ガイアちゃん。熱もないし、元気なのよ」
「元気なわけないです。ほら、見てください歯もガタガタ言ってて震えてます。死にます。これ以上ここにいたら死にます。死ぬ前に早退します」
目に涙をためて頼みました。熱はなくてですね、本当に低体温すぎて顔が青白いレベルで、私本当にこのままじゃ寒さに殺されると思ったんですね、早退しました。母親にめちゃくちゃ笑われて「恥ずかしいわ!!」と怒られて、高校の時この話をしたら、皆腹抱えて笑ってたんですが、笑い事じゃないですからね。
私はいつか絶対に、絶対に冬に出勤しなくていい、そう、冬までに家でできる職に転職したいと思ってます。




