深夜のコンビニバイト五十一日目 赤ずきん来店
私、筋肉痛が好きなんですよ。
痛い部分を触ったりして痛いってなったりするのが好きで、その際に「あぁ、私運動頑張ったんだな」という達成感が痛みに変わりすぎなんですよ。でも私運動が嫌いなんですよ、だからあんまり味わえることではないですね
深夜のコンビニバイト五十一日目。
今日も今日とて深夜にゴミ箱の様子を見に行く俺は、外に出た瞬間ふと気がつく。
いつもより明るいな。
空を見上げると、まん丸な黄色のお月様が真っ黒な夜空にぽっかりと浮かんでいた。
「今日は満月か」
中に戻ろうと入り口の自動ドアが開いた時、何かが凄い勢いでこちらに近づいてくるのを感じた。
「なんだ!?」
くるりと振り返ると、死神さんが手をバタバタさせてこちらに走ってきている。いつも冷静な死神さんがどうしたんだろうか。
「すまない、ハァッ...ハァッ...狼男さんはきてませんか!?」
潔癖症の死神さんが俺の制服にしがみついて叫んだ。
「狼男さん、何かあったんですか?」
「狼男さん、実は満月の光を浴びると凶暴になるらしくていつもは満月の日はカーテンを閉めて部屋に引きこもってるん...だが、狼男さんの好きな彼女が、どうやら月を眺めていて、狼男さんも彼女と同じ月を眺めたいとかいつもみたいなキザなセリフ吐いてカーテンを開けてしまって」
狼男さんらしすぎる。
「月の光を浴びたら突然目が赤く光って、毛が逆立って、雄叫びをあげて部屋で暴れた後部屋を豪速球で飛び出して行ってしまった...あぁ、私が無理にでも止めていたら...それから行方不明なんだ。あの暴れよう、街に解き放ったら絶対に人間達に捕まってしまう!それにあの見た目だ!研究所に監禁されてそのまま、研究、実験、解剖されたりしたら...あぁああああ!!!!!嫌だ...どうしたらいいのだ私は!!いたた...腸が超痛い....腸超痛い...」
あぁあ!!と頭を抱えてのたうちまわった後俺にしがみついて腹をおさえて苦しんでいた。
忙しいなこの人...いつも冷静なのに、狼男さんの事になるとこんなに動揺するのか。
狼男さんは、それだけ部下に慕われている上司って事だろう。
「今海坊主も呼んで捜索しているが、海坊主は日が出るまでに海に戻らないといけない。でも、海坊主は狼男さんが戻るまで海に戻らないって言ってるし、私はこのままでは部下も上司も失ってしまうのか...」
「悲観している場合ですか、しっかりしてください。いつも冷静な死神さんを取り戻してください」
死神さんの肩にポンと両手を置きはっきり言った。
「...だが、だがぁ...いつも頼りがいがある狼男さんが、あんな風に暴れて、凶暴に雄叫びをあげて襲いかかってくるなんて事がいつもの彼の様子では想像できず、わ、私にはどうしたらいいのかわからないのだよ」
「早く見つけるに越したことはありません。急いで...ヒッ!」
黒い大きな影に、赤い瞳が点々とこちらに近づいてきた、その姿はまるで沢山目があるバケモノのようだった。
「おぉ、来たか。狼男さんは見つかったか?」
カラス達が、死神さんの所に集まってきて、肩に止まった。
「ん、ふむふむ、あぁ!?何だって!?」
死神さんは、更に切羽詰まった声をあげて叫んだ。
「どうしたんですか?」
「彼は電話で話していた彼女の家方面に真っ直ぐ向かっているらしい...」
「何ですって!?」
「あぁ、電車で1時間くらいの距離を監視カメラに写らないくらいの速度で走っているそうだ」
「だが、好都合だ。カラス達曰く彼女の家の方面的にこのコンビニ前を通る可能性は非常に高いからな。その時に止める」
「いやいや!そんなに速いスピードで走ってる狼男さんを止める事が出来る方法があるんですか!?」
「.....しかし、止めるしかない。私が一番危惧しているのは、彼が.....あの満月の光に触れたあの狂気の暴れ状態で彼女に出会い彼女を傷つけてしまうかもしれない事だ。言わずもがな狼男さんは酷く傷つくだろう。自殺してしまうかもしれない。私は今の彼と彼女を会わせる事だけは阻止せねばならない」
死神さんは、手袋をキュッとはめ直しコンビニの前の道路の真ん中で両手を広げて踏ん張った。
「さぁ、受け止めましょう狼男さん!」
見ていられない。
言うことは格好いいのにへっぴりごしで何とも格好悪い。
「.....馬鹿じゃないの」
コンビニの屋根から、低く小さい声が降って来た。
「誰だ!?」
上を見上げると、「よっ」という声と共に、人影が屋根から降って来た。
「うわぁああ!!人がふってきたぁああ!!」
「......狼男。今日は満月。きっとこうなると思って探してたの」
赤い頭巾と赤いマフラーで顔を隠してぼそぼそと話す俺の妹と同い年くらいの女の子は、肩から大きなライフルを下げていた。
「え、あ...え?それ」
それを弱弱しく指差す。
こんな女の子が何でそんな物騒なもん下げてるの?が俺の動揺でえ?それしか言葉に出せなかった。
「.....アサルトライフル」
ニコッと笑ってそれだけ答えられても俺はどういう反応をしたらいいかわからないんだけど!?
「.....音が聞こえる。来るね」
ザッザッザッと戦場に行く兵士のごとく赤ずきんをかぶった彼女は、死神さんのいる道路に向かった。
死神さんと、その赤ずきんを被った少女はなにかを話して、死神さんがブンブン首を振って、銃を向けられていた。
いやなに大丈夫なの!?なに話してるのあの二人銃向けられてるんだけど!?
そうしている間に、ドドドという音が聞こえてくる。
物凄い速さで、何かがこちらに向かっている、それだけは分かるが何がきているのかは普通の人はこの暗闇でわからないだろう。
だが俺達はすぐに察する。満月の明かりで凶暴になった狼男さんだと。
「.....どいてて。危険」
「私がなんとかすると決めたのだ。君こそ、家に帰って部屋の掃除でもしてなさい」
「何やってるんですか!二人で何話してるのか知りませんけど!そんなことしてる場合じゃないですって!!」
あぁああ!!どんどん近づいてくる!!まずい!!俺は、目をぎゅっとつむって
二人の元に全速力で駆け出した。
狼男さんはもう近い。
目が赤く充血し、ヒィヒィと息が荒くよだれを垂らし四足歩行でこちらに向かってくる、すぐにわかった。狼男さんじゃない、あれは獣だと。
「ハァッハァッ死神さん、行きましょう!ここは彼女に任せましょう!なんか、その方がいい気がするんです!!」
「狼男さんを助けるのは私だ!離すんだ!」
俺は無理やり死神さんの手を引いて全力でコンビニの方に走った。
狼男さんの顔が認識できるくらいには近い。
「.....邪魔者は消えた。これで集中できる」
少女は、チャキッとライフルを構えた。
「....いくわよ銀の弾丸」
一瞬だった。
パンっという小さな音がして、瞬きをしたら、狼男さんがどさりと倒れていた。
「狼男さん!!!」
死神さんが叫んで俺を振り切り狼男さんに駆け寄った。
ライフルから出る煙をフゥッと吹くと、肩にストンとライフルをのせ、少女は狼男さんに近寄る。
「あの、大丈夫なんですかこれ」
「......大丈夫。銃声はそんなに聞こえない特別製のライフル」
ふふ、とライフルを撫でながら微笑む赤ずきんちゃんに、
「狼男さんですよ!」
死神さんが、白目をむいて動かない狼男さんを抱き上げた。
頭には、弾丸がめり込まれている。
「えっ...これめり込んでるんですけど貫通とかじゃなくてこれ本当に大丈夫なんですか?」
少女は、親指を立てて
「.....狼は獣だから生命力高いし平気」
ドヤ顔で言うけど本当に大丈夫なのこれ白目むいてるんだけど。
少女の言う通り、シュゥと言う音と共にさっきの獣のような狼男さんは、元の狼男さんの穏やかな表情へと戻って行った。
「狼男さん!!よかったぁあ...」
死神さんは、狼男さんの手を握りしめ心底安心したというようにその両手を額のガスマスクに当てる。
「ありがとう...」
少女を振り返り言う死神さんに、
「.....私は赤ずきんちゃん。本業は殺し屋。この世界に来て悪さしてる奴を狩ってる。今回のターゲットが暴走した狼男だっただけ」
「え、今なんかさらっととんでもないこと言わなかった?」
「.....今回は殺さなくてもおさまる案件だった。生きてる。普段は、こっちの世界に来た悪い奴をこのライフルちゃんで仕留めてる」
ふふ、と立派なライフルに頬ずりする赤ずきんちゃんに、俺は本気でこの子の将来が心配になった。
「...どうせしばらく起きない。私はもういく」
赤ずきんをひるがえして俺たちに背を向けた赤ずきんちゃんに、
「何かお礼を」
死神さんが赤ずきんちゃんの背中に呼びかける。
「.....報酬は今度会った時に支払ってもらう。パンとぶどうジュース」
赤ずきんちゃんは、ポツリと呟いて闇夜に消えていった。
「最高級のパンとぶどうジュースを用意しておかないとな」
満月に照らされてた死神さんは、闇夜に向けて囁くように言った。
本日も読んでくださりありがとうございます。
私小学校低学年の時に、自分の事をプリキュアだと思っていた話を昨日したんですが、実は当時プリキュアごっこが流行っていて、あぁ、皆さんもやったかと思いますが、プリキュアごっこっていうのがね、結構闇が深くて、プリキュアに妖精がいるんですよ、ミップルとメップルというね。
その妖精役も勿論ごっこ遊びの役柄にあって、ミップルとメップル役になると、「メポ」と「ミポ」しか喋る事を許されず、キュアブラックとホワイトの後ろをうさぎ跳びでついていかないといけないんですよ。あ、ちなみに立つことは許されません妖精ですからね。立っちゃダメです。しかも妖精だから適役が、背の小さい子で、その子達はずっとミップルとメップルから逃れられずプリキュアをやらせてもらえなかったんですよ。ミポとメポしか喋れないし。
って話を今日仕事の上司にしたら、
「私の所はセーラームーンごっこだったけどキャラが人間ばかりでよかった」といっていて確かにセーラームーンのキャラでうさぎ跳びで主人公達の後ろをついて回るキャラとかいらないですよねって話をしました。
私はなんかいつもそのホワイト役の子が私がブラックじゃないとヤダ!って子だったのでそれでずっとやってきましたが、思い出してみると...妖精役の子達は楽しんでたような記憶があるけど私達めっちゃ走り回ってたし悪かったな本当。
正義の味方らしからぬ事をごっこでしてたよもはや。




