深夜のコンビニバイト番外編 後編俺が副店長になるまで
最近妹がなんか電話してて、その後何やら準備したと思ったら家を飛び出して行ったんですね。
帰ってきた妹は、
「明日からコンビニバイト始めっから!面接受かってた!」
私は黙って拍手しましたよ。
「本当はお姉ちゃんの深夜のコンビニバイトが良かったんだけどね!」と言ってきて、今度は握手しましたよ。
ちなみに俺はなぜかサッカー部が無かった為バスケ部に入った。
帰り道、たまたま帰りが一緒になった時、聞いてみることにした。
「お、おい!ガーデニング部はどうなんだよ。部員とうまくいってるのか?」
「うん。ガーデニング部俺しかいないから。来年には廃部になるんだって」
「そうだったのか!?」
「うん、でも俺花について色々教えてくれた科学教諭の先生を喜ばせたいんだ。今虹色のコスモスを作る品種改良の勉強中だよ。他にも色々俺ならノーベル賞も夢じゃないって」
.....こいつ部活中にノーベル賞取れるかどうかの事やってんの。
だが、ガーデニング部に入ったあいつは天才的な才能を見せ、色々な花の品種改良に成功し、太陽を浴びると透けるひまわりを高校一年生の文化祭で展示し、一躍話題になった。
科学教諭のおじいちゃん先生も彼の素晴らしさをとモニタールームで店長のプレゼンを始めたり鼻が高い様子で。
でも、やっぱり人気者な奴もずっと上手く行くわけではなく、女子に注目された店長の事を悪くいう男子が増えてきた。
「あいつ男子高校生のくせにガーデニング部とかに入って馬鹿じゃねえの」
「注目されたいだけだろ」
「女子にモテたいのが見え見え」
そんな噂が聞こえたある日のことだ。
おじいちゃん先生が、放課後血相変えて廊下を走り回っていた。
「誰じゃ!!!ガーデンを荒らした奴は!」
「どうかしたんですか?」
バスケ部に向かう俺が聞くと、隣にいた他の部員達がニヤニヤし始めた。
まさかこいつら...。
「ガーデンが...あの子とワシの大事な花達がめちゃくちゃになっとるんじゃ」
「.....お前らがやったのか」
隣にいた奴らを睨み付けると、
「だってあいつ調子こいててムカついたんだもん」
「なんじゃと!!お主らなんて事をするのじゃ!ワシとあの子の...」
「知らねえよあいつが女子にちやほやされたくて使った花だろ」
「そんな事するような子じゃない!なんて事をいうのじゃ!!あの子は感情表現が苦手なだけで根はとっても素直でいい子なんじゃ!!」
「黙れよじじいウッセェよマジ」
「行こうぜ、はりやん.....はりやん?」
掴まれた腕を振りほどいて俺は早歩きで荒らされたガーデンに向かった。
「はりやん!部活どうすんだよ!」
「お前らみたいな奴らとチーム組んでバスケなんかしねえよ。俺、ガーデニング部に転部するわ」
奴らは振り返らず手を振りながら俺は外に向かった。
ガーデンに向かうと、一人でせっせせっせと踏み倒された花達や、ぐちゃぐちゃにされた土達をなおす店長がいた。
「ごめん...俺の部活の部員達がやったみたいだ。俺も手伝うよ」
「あぁ、ありがとう張山君」
あれ?それだけ?
「どうしてこんな事をしたのかとか、聞いたりしないのか?」
「うん、そんな事を聞いたって花は戻らないし。謝ってもらっても仕方ない事だよ」
にっこり笑う店長の目が笑っていない気がして、俺は背筋の悪寒が止まらなかった。
「.....怒ってないのか?」
「怒る?どうして。怒っても仕方ないじゃない。こういう事をする人は怒った人を見たいんだと思うからさ。俺は怒ったり泣いたりしないよ」
俺達は一日かけてガーデンを綺麗にした。夕方が過ぎ、暗くなるまで。
次の日、俺はガーデン部に転部して、ガーデン部に向かうと、ガーデンのテントをぐるりと頑丈な電気柵が囲んでいた。
「な、何これ...入れないじゃん。お、おーい!!おーい!」
叫ぶと、テント内からにっこり笑った店長が出てきた。
「どうしたの?」
「俺ガーデン部に転部したんだ。きょ、今日からよろしくな」
「あぁ、そうなんだ。今度からは外で俺を呼んでね。一番乗りでいつもきてるからさ、呼んでくれればいつでも電気柵のスイッチを切るからね」
「で、電気柵ってこんなガチな。これ触ったら死んじゃう奴だよねこれ」
「いや、ショックで救急車程度だよ」
「そうだよって...高校一年生の男子高校生がガーデンに人が救急車で運ばれる程の電気柵って大丈夫なの」
「昨日の出来事はね、俺がこの大切なガーデンの管理が甘かったから起きた事なんだと思うんだよ。だから俺考えたんだ。もう花を荒らされないためには、花の命を守るためにはどうすればいいかって。そこで考えたのがこれだよ。大丈夫だよ、もし偉い人にこれはどういう事だって聞かれたら昨日の写真を見せてガーデンを荒らす者がいたようなので動物対策ですって言うんだ」
俺の全身から血の気が引くのがわかった。
こいつ.....本当はめちゃくちゃ怒ってる。
「先生と俺がスイッチ持ってるからいつでも言ってね」
しかも店長は、俺さえも信用してない様子だった。
あの時俺の前で泣かなかったのもそういうことだったんだろう。
本当に、よくわからない奴だよ。
次の日、俺の部員の奴らが揃って謝りに来た。色々考えた結果だそうだ。
バスケ部もやめたと言っていた彼らを店長はガーデン部に誘った。
店長はにっこりと奴らを彼らを受け入れ、花の大切さを三年間皆で学んだ。
「本当にいいのか?あいつらを部活に入れて」
「花を大切にする気持ちを皆がわかってくれたらいいよ」
だが奴は電気柵を撤去する事はしなかった。
高校三年生になって就職先を決めることになった。
「お前は将来何がしたいんだよ」
「俺は...そうだな。どこかのカフェでお店を開いて外はガーデニングでお花いっぱいにしてさ」
何て女の子らしい事いうんだこいつは。でもこいつはいつだってそうだったな。
「じゃあお前が料理作って俺がウェイターすればいいじゃん」
「いや、いつも張山君には手伝ってもらったりして悪いよ」
「いいんだよ、俺が好きでやってる事なんだからさ」
「ありがとう、張山君」
でもカフェをやるには調理師免許とか色々いるらしい。
あいつは、就職先にギリギリまで迷っていた。
俺もあいつと同じ就職先が良かったけど募集人数が一人しかいない所に就職するみたいだったみたいだから俺は普通に大学に進学した。一緒の大学に誘ったけど、大学の勉強は独学でもできるとかよくわからないことを言って断られた。
卒業しても一緒だと思っていた。
俺はいつもなんでかあいつが気になって、俺の方が皆に慕われているのに、何故か結局人気者なのはあいつなんだ。
悪口言われたり、大切な場所を荒らされたりしてもそういう奴と友達をやるわけでもなく上手くかわしていく。
認めたくないが、認めざるをえなかった。俺は所詮、ただ顔がよくて人気ものなだけの男で、それ以上に店長には天性の魅力というものがあったんだと思う。
俺とカフェをやるといっていたあいつは今どうしてるんだろう。
引っ越して一人暮らしを始めたらしいけど...。
全く会えず、あいつは携帯とかSNSとか上手く使えないっていって連絡先とかも交換できなかったからな。
大学を卒業する年に、俺の前に、突如あいつは現れる。
ピロリロピロリロ。
「いらっしゃいませ...あっ張山君」
何気なく入ったコンビニで、胸に店長の名札をつけたやつに再会した。
500年くらいの年月今まで戦闘しかして来ませんでしたみたいなムキムキの体に、おでこから左頬に向かって大きな傷が、まさに世紀末覇者。
あんなにひょろっとしていて花と料理が大好きだったあいつは、戦闘狂の人殺しみたいな人相になっていた。
声もなんかハードボイルドになって、前の可愛かったあいつはどこに行ったのか。だがなんとなくわかるのだあいつだと。
「お前...何してんだよ、ここで」
「俺、コンビニの店長になったんだよ」
「カフェを開くんじゃなかったのか?」
「あれはいつかやりたいなって。ここは、前から通ってて好きだったコンビニなんだ」
「お前昔から人と関わるの好きじゃなかったのに、なんで接客業なんて」
「ここには変わった人が来て毎日飽きなくて楽しいんだ。俺社会に出たらやっぱりいろんな人と関わっていかないといけないと思ってさ。前から好きだったこのコンビニでコンビニの店長に就職したんだ。まぁ人が足りなくて大変なんだけどね」
なんだよそれ....なんだよそれ。
俺は大学を卒業した後の卒業先が決まった。
「人が足りないのか?じゃあ俺が手伝ってやるよ」
「えっでも張山君はお父さんの会社が」
「親父が死んだら継ぐから別にいいよ。俺が大学卒業するまで待ってろよ!店長!」
とんと奴の胸を小突いて俺は走り出した。
俺は、副店長に就職して、今は店長と一緒にこうして仕事をしている。
「おはようございます...はぁ、今日はお二人でレジに...尊い...ぐふ」
その後、安藤ゆかりさんが入ってくれて、村松晴君も深夜に入ってくれた。
少しずつ増えていくメンバーで、俺はこの天然で天才な店長を支えながら今日もコンビニで働いている。
ちなみに何故こんなに容貌が変わってしまったのかという問いには、
「店長になる為に修行をした」
と返ってきたが俺には全く理解ができなかった。
本日も読んでくださりありがとうございます。
感想を昨日は一気にお返事させていただいたんですが、その中で「ガイアさんの高校どうなってんのww」って方がいらっしゃってそのお返事にも書かせていただいたんですが。
私が高校一年生で、初めて隣の席になっためちゃくちゃ美人な女の子がいて、ローラに似てたんですけど彼女。
まじめに国語の授業受けてたらなんか知らんけど隣見たらバナナ食べてたんですよ彼女。
「動物園ですかここは!!」と叫んだら私が何故か先生に怒られて、しかもその後彼女の言った一言が衝撃的で、
「ガイアちゃん、見て私の筆箱バナナの形なの」
「そ、それが何か」
「バレないかなーって思って」
にぱーって笑った彼女の顔が忘れられないんですよ。それから私を笑わせる為に筆箱の代わりにバナナを置いて「本物か偽物かどっちでしょうか」というクイズをしてきたり私の学習の邪魔をことごとくしてきたんですが、私は授業がこんなに楽しいと感じたのはその時が初めてだったのでやはりあの女子校に入ってよかったと心から思いますね。




