深夜のコンビニバイト四十六日目 みにくいアヒルの子来店
昨日は岩盤浴と温泉にいってきて帰りが遅くそのまま寝てしまい投稿ができずごめんなさい汗
楽しかったですよ、とっても。
いつも引きこもってエロゲしたり小説書いたり、撮りためたアニメ見たりしてる私にとっては温泉と岩盤浴なんて場所は新鮮で刺激的でしたね。
深夜のコンビニバイト四十六日目。
ガァ、ガァ、カラスだろうか。やけに外から鳥の声がするが、あまり聞き覚えのない鳴き声だ。
気になって外に出ようとレジを抜けると、
ピロリロピロリロ。
「いらっしゃいま...」
白いふわふわの抱きしめたい毛並み、黄色のキュートなくちばし、シュッとしたクビにぽむっとしたボディ。
一番大きなアヒルが、親だろう。
ペタペタとコンビニに入ってきて入り口で点呼をとるように小さいアヒルたちを自分の目の前に並べる。
小さいアヒルたちが親アヒルの前にせいれつする様は、なんともいえず可愛い。
だが、その中に一匹だけ。
白いふわふわの毛並みの子アヒルの中で一匹だけ灰色のアヒルがいた。
他の白いアヒルと比べると少し大きく、首が少し長い、そのアヒルだけ明らかに同じアヒルの子供でないことがわかる。
他のアヒルとは少し離れたところで、そっぽを向いているそのアヒルの事が俺は少し気になった。
いや待て、そうじゃない、ここはペット禁止って何度も言ってんだろ!だめだよ!
「ちょ、ちょっと、アヒルさんたち!アヒルさんたち?っていうのもおかしいだろ!あの、ここペット禁止なんで、その出て行ってもらっても...?」
自分でツッこんで恥ずかしいが、こういう時どう言えばいいのか、コンビニ店員をしていて店にアヒルの親子が来店してきた時のうまい対応の仕方を教えてほしい。
親アヒルは、俺をくるりと振り返り、
「ガー、アー」
一声鳴いた。
「こ、こいつ...日本語が通じない!?」
当たり前だ、アヒルなんだから通じるわけがない。何言ってんだ俺は。
何で自然と通じると思っちゃったんだ。
このコンビニで働いているからか!?おっさん犬なんであんたは普通に喋れるんだよ!!このアヒルに言葉を教えてあげてくれ!
「えっ、どうしよう」
親アヒルと白いアヒルたちはペタペタとコンビニ店内を歩き回り始めた。
「無駄だよ」
「誰!?」
辺りを見回すと、俺の足元で灰色のアヒルが冷めた目でこちらを見ていた。
まさか...この子が喋ったのか?
灰色のアヒルが、ゆっくりと口を開いた。
「あいつらは俺と違ってあんたら人間と喋れないんだ。俺は人間の言葉もアヒルの言葉も話せる」
「えぇ!?今待って、君が喋ってたの!?」
悠長に喋る灰色のアヒルに、俺はしゃがみこんで大きく目を見開いた。
やっぱり喋るんだ...。おい河童、アヒルでさえ話すんだぞ...。
「まぁ俺は特別だからな、ほら他のアヒルと違って色も違うし大きさも違うだろ」
ほら、と羽を広げて見せてくれる灰色のアヒル。
確かに灰色だし、他より少し大きい。
「何で違うんですか?」
「生まれつき違ってたんだよ、あいつらと俺は、全ての出来が違ってたんだよ」
あいつらと言われる子アヒルたちを見ると、灰色のアヒルと、アヒルと話す俺とを影からじっと見て何やらこそこそ話すように輪になってチラチラ見ながら何かを話し合っているようにガァガァ言っている。
「悪口言われてない?」
「違う。奴らは出来の違う俺に嫉妬しているだけだ。会話内容は恐らく「幸の薄そうな人間と話してあげてるよ。偉いね」だろう」
おいなんで俺までディスった今。
「そういえばさっき整列した時もなんか、一人だけ離れてたよね。他の子達は仲良く固まってたけど」
「出来が違う奴は、やっぱり他の奴らに距離を置かれやすいんだよな。近づくだけで波が引くように避けられたり、嫉妬なのかわからないけど、聞こえるように悪口言われたり、まぁ俺はあんな低俗な奴らと共に過ごしてやってるって気持ちでいるからねもはや、全然あれだから。その、おい何でそんな目で見るんだよ。やめろ俺をそんな目で見るんじゃねえよ。意思疎通ができるのに何で俺は一人ぼっちなんだって?こっちが聞きたいよ」
何だよ、本当にハブられてたのか...。
世知辛いよ、なんだよそれ。現代の日本の人間に対してさえ普通にあるのに、鳥社会にもいじめなんかが存在してるの?どこに救いがあるの、河童のまさるの顔が真っ先に浮かぶのは何故だ?
「何か...したの?」
「別に、何もしてない。ただ生まれた時にこの色の違う毛並みでさ、人間だってそうだろう。子供を六人産んで一人だけ顔が全く違ったらそいつに対して両親ははいつも通り優しくできるだろうか、兄弟は?こいつだけ別の遺伝子の子供なんじゃないか?怖いよな。俺だけ人間とこうして話せるのだって、気持ち悪いんだと。あだ名はホコリだよ。あいつらは天使の羽みたく白い見た目なのに、俺だけこんな灰色だから」
切ない表情で、諦めたように話す灰色のアヒルの背中を優しく撫でた。
「同情なんていらない。俺は昔からこのまんま醜いアヒルの子として生きてきたんだ。友達もいらない、家族だって必要ない、俺は孤独でいい。今はまだ俺は子供だから一人で生きていけないから一緒にいるが、成長したらさっさと一人立ちして一人で静かに暮らすんだ」
「同情なんかじゃないよ。そんな小さいアヒルの頃からそんな風になにもかも悟ってしまっている君を見ていてなんだか放っておけなくなっただけだよ」
「ハッ、まぁ仕方ないさ。この世界は多数決なんだろ。動物も人間もなにもかも、少数派の意見は、理解できない、されないものは、消される。敬遠されるものなんだ。俺は生まれた時からそれを学んだ。今更そんな風に優しくされたって別になびいたりしないよ」
くるりと俺に背を向けた灰色のアヒル。
なんだろう、このアヒル。こんなに小さな背中なのに話す事は濃いぞ。
心なしか背中も大きく見える。
ピロリロピロリロ。
しまった!!困った、いやいつもこういう時困ってるけど!!
アヒルを店内に入れているという事がバレたら、問題になる早く、早く隠さなくちゃ。
「あ」
ヌメッとした緑色の体でペタペタ来店した来たのは、いつぞやの河童だった。
いやもっと問題になる子来ちゃったよ!?
あっあいつ皿にまさるって書いてあるぞ、まさるかお前!今日は一人で来たのか!
まさるは、ペタペタと俯いて店内を歩き出した。だがふと、灰色のアヒルを横切る時ピタリと足を止めた。
ゆっくりと灰色のアヒルとまさるは顔を見合わせる。無言で、少し沈黙の時間が続く。
商品棚の影から他のアヒルがこちらの様子を伺っている。
灰色のアヒルは何か通じたものがあるのかフッと微笑むと河童とすれ違う。
「お前も、一人なのか?」
灰色のアヒルは、ガァガァと鳴いた。まさるは、目を見開いてゆっくりと振り返る。
いや今なんて言ったの!?アヒル語だからわかんないんだけど!?しかもまさるに通じてるの!?
まさるは、俯いてこくりと頷いた。
「じゃあ、俺と一緒だな。何となくわかるんだあんたと俺は同じ目をしている」
二人は、全く何を話しているのかわからないが、少なくとも通じあっているようでまさるは、嬉しそうに微笑んだ。
いやマジで何だったの今の無駄に長いすれ違い!
まさるは小さいコーラを二本買った。
勿論キュウリ払いだ。
アヒルたちはコンビニをぐるっと回ると、売られている卵の前でずっとガァガァ言っていた。
それを見たまさるがびくりと体を震わせガチで引いた目で見ていた。
アヒルは何を言っていたのだろう。
まさるは、何を感じたのだろう。
「この卵から白い新しい兄弟が生まれないかっていってるな、はは、なんで俺はこんな見た目なんだよ」
ガァ、ガァと呟いたんじゃわかんないんだよ!何言ってんだよ何で虚空を見上げてるの?
帰るときに一つ違ったのは、灰色のアヒルが親アヒルについていかず、河童の後ろについてコンビニを出たところだった。
外を見ると、ベンチに座ってまさるとアヒルがコーラを飲んでいた。
いやアヒルってコーラとか飲んで大丈夫なの?
いやなんだったのまさるが現れてからの流れ!!
「一人の奴は一人の奴と惹かれ合うみたいだな。なんだか君とは一目見た時から仲良くなれそうな気がするよ」
ガァガァと灰色のアヒルは呟いて、まさるは嬉しそうにこくりこくりと何度も頷いた。
本日も読んでくださりありがとうございます。
小学生のとき自分のことをガチで結界師だと思っていたので寝ている間に自分は夜家を抜け出して学校で妖怪を退治してると思ってて、登校中に自分にしか見えない犬の式神に話しかけたり、方囲、定礎、結、滅、ってしてましたね。あとよくあの妖怪を退治するときの構えを練習したり、してたので、割とその辺からもう中二病は始まっていたのかもしれませんね。




