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深夜のコンビニバイト三十七日目 番外編 店長のお見合い

今夜はコンビニバイトをお休みしてフレンチレストランへ。

私も最近仕事で行く機会があっていったのですが、フレンチってとっても美味しいですね。

品のいいお客様ばかりのキラキラした所に、コミュ障オタク陰キャの私は浄化されそうでした。

どうしてこうなった。


お見合いをすることになった店長。

俺は今、フレンチレストランで食事をしている店長とそのお見合い相手を見守るべく金太郎さんと、吸血姫と共に同じレストランの近くの席でフレンチを食べていた。


それもこれも昨日の店長がお見合いに行くという話を聞いた後、この2人が...。


「お見合いっていうのは簡単に言えば、結婚を希望する男女が2人でお話しして話がうまくいけば結婚を前提にお付き合いに発展したりとか...」


お見合いとか一昔前の話だと思ってた。俺もよく知らないけど要するにうまく事が運べばそのお見合い相手との結婚もありえるって事だよな。

俺がイマイチ結婚をよくわかっていない吸血鬼に説明すると、


「ケッコン?ケッコンとはあのあれか、男女で一生服従を誓い合うあれか」


「それ絶対何か勘違いしてますよね」


「バカねぇあんた、要するにあたしの店長が他の女にとられる可能性があるってことよ」


「決して貴様のでは無いがな。それはダメだ。オミアイはダメだぞお主」


くいっと店長の制服を引っ張る吸血鬼に、店長は目をそらしながら


「俺もそういうの苦手だし、その、女性と目を見て話せないのにお見合いなんて...って言ったんですけどね...母ちゃんが勝手に相手に話をつけちゃってて」


頭を困ったようにかく店長に、


「どうしても行かなきゃダメなのぉ?」


人差し指をぽってり唇に当てて首をかしげる金太郎さん。

それ可愛いと思ってやってるよね絶対。


「もう明日の夜七時にフレンチレストランで予約もとってしまったみたいで...俺も気乗りしないんですがねぇ...」


「フレンチレストランって、この辺にありましたっけ?」


「あぁ、あの最近立ったでかい建物の8階にフレンチレストランがあるみたいで。なかなか取れないらしいんだけど母ちゃんがお見合いには雰囲気が大事ってコネで予約を取ってくれたんだよ...」


え?あのこの辺で有名なあの馬鹿でかい金持ちしか行かなさそうな建物...確か高級フレンチが美味しいって聞いたことがある。妹が夕食中に話してたな。

予約が埋まりすぎて何ヶ月待ちとかだって。もしかして──。


「店長って、お金持ちだったんですか!?」


「いや、そんな事ないさ...普通だよ。お金持ってるのは母ちゃんだから」


やっぱりお金持ちだった!?

そういや、お父さんは亡くなったっていってたっけ。


「というわけで村松君、明日は夜からフレンチで、代わりに副店長が入ってくれる事になったから。村松君もお休みだしゆっくりするといいよ。それより俺...お見合いちゃんとできるかな。一応カンペを書いたり女の人と話す練習を母ちゃんと練習したりしたんだけど...」


シフト見ておかしいと思ったんだよなぁ...明日店長も俺も休みだし。

じゃあこのコンビニはどうなるんだって。副店長か、話した事ないけどそれなら安心して休めるな。

店長やっぱり女性苦手だし心配だよな可愛いすぎる...俺もお見合いする店長見に行きたかった。


「あたしも行くわ!そのお見合い!」


「妾もいく!」


「ダメに決まってるじゃないですか」


「いく!いく!いく!いく!」

「いくいくいく!!妾もいくー!!」


似た者同士2人はジタバタコンビニで暴れ出した。


「駄々っ子やめてください!!恥ずかしい」


「そんなにお二人ともフレンチ料理が食べたいんですかぃ...ちょっと母ちゃんに後で連絡して見ましょうかぃ?そしたらコネで何ヶ月かは早く...」


「それじゃあ意味ないのよぉ!それじゃぁオミアイをぶち壊しにいけないじゃあないのよ!」

「そうだぞ!それじゃあオミアイ相手とやらを8階からコンクリートに突き落とせないであろうが!」


脳筋2人に俺は頭を抱えた。


「ぶ、ぶちこわ...?」


2人の勢いに店長も何を言っているんだ?状態だった。

本当に何言ってんだこの2人。店長の幸せを願うなら...願うなら。

いや、もし俺だったらどうだ。

好きな人、綾女さんが意図せずお見合いなんてする事になってしまって、それが断れない、なんて言ったら。

俺は...どうするだろうか。


「店長、明日のフレンチ俺なんとしても行きたいです...」


「村松君もそんなにフレンチ料理が食べたいのかぃ...?一応、母ちゃんに後で電話して聞いてみるけど、明日は難しいかもしれないな」


「やっぱりそうですか...」


だが、俺達は結局行ける事になった。

店長のお母様が店長のご友人という事で特別に予約をとらせてくれたらしい。本当に何者なんだ店長のお母様。

ついでに行きたがっていた金太郎さんと、吸血姫の2人も同席でという条件で席を取ってくれた。

店長は、同席で申し訳ないが...と言っていたが、むしろとってくれただけで感謝しかない。ありがとうございます店長...。


しかも店に入ったらタダだった。

目を丸くしている俺に、


「ご友人様ですね。お待ちしておりました。もうお支払いは済んでおります。お席へどうぞ」


とピシッとした清潔感のある格好をした

ウェイターさんに席に案内され、いつもよりメイクの濃い赤い体のラインの出るワンピースを着た金太郎さんと、黒いシックなワンピースに身を包んだ吸血姫と妹に言われてスーツを着てガチガチの俺は、店長達のお見合いしている近くの席で奇跡的に高級フレンチを食べられる事になったのだった。


「と、ととととんでもないところに来てしまった」


見渡す限りお金持ちだとわかる人ばかり。高級ブランドのバッグや宝石の光る指輪だらけの指の人や、品の良さそうな人ばかりだった。


「場違い感がハンパない、俺はただのコンビニバイトだぞ。なんか場違いすぎて涙が出そうなんだけど」


しゅんと俯いていると、


「ねーぇ?これちょっとしか出てこないわよ?これがサラダ?何、メニューなんて書いてあるの?なんとかのファルシ、ばるさみこなんとかそーす何よこれ本当に食べ物なの!?」


「ここはあの場所のようにトマトジュースは出てこんのか?ここにいる人間はこんなちょびっとで足りるのか?飲み物もこんなグラスにちょこっとしかいれてくれぬのか?こんなので喉が潤うというのか...?」


まるで緊張感がない二人...全力で他人のふりをしたい。

ちなみにサラダはめちゃくちゃ美味しかった。こんなに美味しい野菜を俺は食べたことがない。この二人のせいで店長のお見合いに集中できない。


店長は、しっかり赤い蝶ネクタイに、白いスーツを着てガチガチに緊張して座っていた。

相手のお見合い相手は、見た感じすごくいい人そうで、茶髪のショートボブで、口元のほくろが特徴的な癒し系のふわふわした美人だった。


「ご趣味は、なんですか?」


「料理と、ガーデニングです」


「まぁ、見かけによらず可愛らしい趣味をなさっているのですねふふ」


なんだかいい感じだ。

白アスパラのスープも涙がでるほど美味しい。


「コンビニの店長さんをなさっているみたいですが、お仕事は大変ですか?」


「はい、日々誠心誠意仕事に取り組んでおります」


店長ガチガチすぎて面接みたいになってるけど大丈夫かな。

店長も何か質問とかして。


「お料理美味しいですね。フレンチ料理はシェフがよく作ってくれますが、やはりこういうところのフレンチはいい素材を仕入れていていいですね...」


「そうですね」


「お料理が趣味という事でしたが、得意料理は何なのですか?」


「肉じゃがとビーフシチューです」


「素敵ですね...男性で料理ができる人って、私尊敬します」


「そうですね」


ダメだ緊張で受け答えが単調になってる!!店長しっかりして!!


「あの...私と話すの楽しくないですか?」


「いえ...そんなことは」


「目も合わせてくださらないし、受け答えも単調だし、私の事は何も質問してくれないし」


「...あ、あの」


あわあわする店長。ダメだ店長落ち着いて。


「私の家よりお金持ちですものね貴方。だからお高くとまってお見合いなんて最初からするつもりはなかったとかですか?どうせ本命さんがいらっしゃるのでしょう?」


「そ、そんな事は...あの、ごめんなさい」


「謝らなくて結構です。私に興味がないならお見合いなんて持ちかけてこないでいただきたかったですわ。貴方のお母様からは私の事がとっても気に入ってという事で来ましたのに」


「いえ...その」


困る店長に、俺の隣の二人が音もなく立ち上がった。


「お、おい二人とも!何するつもりだ!?」


二人は、更に音もなく店長の後ろに立つと、


「じゃあさっさと帰りなさいよぉ。あたしの店長を数時間貸してあげたってのに、こんな顔にさせるなんて絶対許せないんだけどぉ?」


「妾の此奴と少しの間共に時間を過ごさせてやっただけでもむしろ感謝されるべきなのに、此奴に謝らせるとはろくでもない女だな。此奴の前から消えよ目障りだ」


二人は後ろから店長に抱きついてお見合い相手を睨みつけた。

店長は、体を強張らせ目を見開いて二人を交互に見た後、後ろにいる俺を見た。

表情が少しだけ和らいだ店長は、俯いて少しだけ深呼吸した。


「ゲイだったの...?」


金太郎さんを見て目を丸くするお見合い相手。絶対今混乱してるな。分かる。


「い、いや、その、俺が悪いんですよ。俺が女性と話すのが苦手で、女性とこうして二人きりでお話するのに慣れてなくて、その、貴方に不快な思いをさせてしまって申し訳ございませんでした。写真よりずっと綺麗な方で...緊張してしまって」


店長は、本当に申し訳ないという表情で頭を下げた。

店長、ちゃんと話せてる。


「え?女性が苦手?二人きりで話すのに慣れてない?そ、それを早くいって下さいよ...そ、それに、その綺麗って」


ぽっと頬を染めるお見合い相手に、


「俺にはまだお見合いは早かったみたいです。貴方の貴重なお時間をとらせてしまって申し訳ございませんでした。また後日改めてお詫びをさせていただきます」


「ちょ、ちょっと。え?いいんですよ、私はお見合い続行で」


「ほら、行きましょう店長♡やっぱりあたし達にはこんな所は似合わないわ。コンビニ行きましょコンビニ♡」


「こら!何さりげなく腕を組んでいるのだ?妾も!ほら、お主、またあの場所へ戻って妾にトマトジュースを振る舞うのだ。何ならお主の芳醇な血でも良いのだぞ?」


「あ、あのお二人とも、そ、そんなにくっつかれると困ります...」


二人に腕をがっしり組まれ、困った顔の店長は、振り返って俺を見た。


「店長、コンビニ行きましょうか」


俺も食べ終わったし席を立った。

お見合い相手は、呆然と奇妙な俺達を見ていた。


こうして、店長のお見合いは失敗した。

店長にお見合いは早かった。

この一言で片付いてしまったお見合いだったが。まさにその通り過ぎて俺はこれでよかったと思ってる。


本日も読んでくださりありがとうございます。


中学の頃は中二病最盛期で一人で席でラノベ読んだりしてる子だったんですが、小学生の時は私は図書館で一人で本を読んでいる子供でした。それが友達と遊ぶことより有意義で格好いいことなのだと信じて疑わなかったのです。中学の時もそうだったんですけどね。はだしのゲンを小学生の時に全巻読破したんですが、ある日クラスの中で中心的な男の子に、「なんでいつも本読んでるの?」と聞かれ、

「別に。本を読んでいる方が人と遊ぶより楽しいから」と答えたら、めちゃくちゃ笑われました。「いやお前も人やんww」と。小学生ながら「私の事は子供のこの人には理解できないんだわ」と思ってました。

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