深夜のコンビニバイト三十一日目 魔王パーティ再来店
三十話なのに、主人公を妹にとられた晴君に気がついたけど、見て見ぬ振りをした。
そうそう、私が寝落ちするときに書いていた前書きというのは、この作品の略し方を思いついたんです
その名も「変なコンビニ」どうですか皆さん。深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人が来すぎて正直続けていける自信がない。の"変な"とコンビニをとったのです。
実際変な客が来る変なコンビニだし。
もう考えた時はドヤ顔でしたよ。これからは私一人でもそう呼びますからね。あ、忘れてたら教えてください。
ピロリロピロリロ
「シルエットでわかりましたよ...久し振りですね」
「坊主、来たぞ」
機嫌よく手をあげる魔王に、俺も手をあげる。
「最近全然来ませんでしたね」
「まぁな。我は多忙だからな」
うんうんと腕を組んで頷く魔王。本当か?
「ところで今日はどうしたんですか?」
「今日?今日は久しぶりに坊主に会いに来ただけだが」
「え?」
俺に会いに来た?何が目的だ。もうお金を稼いでいるんだから俺が何かを買ってやる必要はないだろ。
「何で俺に?」
「久々に坊主の顔が見たくなっただけだ。後はついでにカツサンドを買っていこうと思ってな」
どういう事?何なの。どうしたの。俺の顔が見たくてコンビニにやって来たって突然ヒロインみたいな事言うなよ。
カツサンドを手にした魔王は、カツサンドと驚くべき事に紫の布切れから小さく折りたたんだ千円札を差し出した。
「せ、せせせせせせせせせせせせ!?せせせせせ!?」
驚いて千円札と魔王を高速で交互に見る。魔王は、少し悲しそうな様子で俯いていた。
「どうした!?え!?どこからどうやって入手した!?」
「六月に入ったから、シェリィの給料が入って、それでお小遣いもらった」
「よかったじゃん!これでホームレス生活ともおさらばじゃないですか!」
俺が笑顔なのに対し、魔王はなんだか哀愁漂う雰囲気だった。
俺を見てやれやれと首を振るとはぁ、とため息。なんだその態度ムカつくんだけど。
「我は、ホームレス生活のままでいい」
「いや何言ってんの」
「最近、シェリィと近くのアパートに引っ越しをした。それで忙しくてこの場所に来れなかったのだ」
「えぇ!?話が二転三転しすぎてちょっとついていけないんだけど!?」
「アパートに引っ越しをした我は、シェリィに言われて一日アパートの中で過ごした。もう空き缶拾いなんてしなくていいと言われた。シェリィは昼も働きに出ている。我は電気をつけるのも勿体無いから一日中天井を見て過ごす一日が、とてもとても退屈で、寂しくてな」
「いやもうホームレス慣れしちゃってるじゃん。空き缶拾いしないと退屈ってなっちゃってるじゃん」
「今日シェリィに「ホームレスの皆の所に戻りたい」と言ったのだが、折角我の為に汗水垂らして働いたのに何でそんな酷い事を言うのかと怒られてしまってな」
「成る程...」
「それで我の足は勝手にこの場所に向かったのだ」
何でコンビニに?
「いつもなら山田と伊藤と松本に話すけど、皆我に「二度と戻ってくるんじゃない!」って泣きながら我を突き放した。我はシェリィのお金も皆で分けて一緒にアパートで暮らそうって言ったのだ」
ホームレスさん達の気持ちはわかる。
エルフメイドさんが汗水垂らしてキャバクラで働いたお金を皆で一緒に住む為に使おうと言ったのか魔王は...まぁ、気持ちはわからないでもないが、そりゃ喧嘩するよな。
すれ違いが起きてるんだ。
ただ、魔王はホームレスの人達と前みたいに暮らしたいだけ。
でもエルフメイドさんは、ホームレスの暮らしを魔王にさせない為に一生懸命働いていた。
それがぶつかって今みたいな事が起きているんだろう。
ホームレスさん達は普通に魔王に幸せに生きて欲しかったんだろう。
「我は、どうすればいいのだ。坊主...また皆で暮らしたい。でも皆は我に二度と戻ってくるなって言うのだ。我は毎日空き缶拾いもせず天井を見つめるだけの日々は嫌なのだ」
「どうしたものか...その分厚い鎧とかルックスをなんとかすればどうにかなると思いますけどね」
「この装備は、外す事が出来ない」
「そういう仕様なんですよね」
「その装備は我の膨大な莫大な巨大な力を抑える為のものでもあるからな。安易に外すと世界が滅びる」
家で天井見て安静にしてくれていた方が安心だなこれ。
ピロリロピロリロ
「魔王様!またここにいたんすか!」
エルフメイドさんが来店して来た。
「シェリィ...」
「ほら、帰るっすよ」
魔王のマントを引っ張るエルフメイドさんに、魔王はマントを翻した。
「我はまたホームレスに戻りたい」
「まだそんな事言ってるんすか!!ダメだって言ってるじゃないっすか!」
「やだ!戻らない!我毎日天井を見て過ごすのやだ!つまんない!」
駄々っ子のようにくねくねする魔王に、
「魔王様みたいなのを安易に外に出せるわけないじゃないっすか!」
ど正論だった。
ピロリロピロリロ
「ホームレスやってた時我公園に住んで....」
俺達は固まった。
漆黒の瞳で、魔王を見据えると一瞬で魔王の前に移動した彼女は、魔王の腕に自らの腕を絡め、満遍の笑みで微笑んだ。
「魔王様ぁ♡やーっと会えた、捕まえたっ」
常に無表情で、淡々と語る口調。
黒髪からスッと伸びたエルフ耳。
元祖メイド服のような長いスカートのメイド服。
そして何をうつしているのかわからない、漆黒の瞳....だったはずのクロノアさんが、来店して来た。
「クロノア!?どうしたのだ。今までどこにいたのだ」
「なっ!?何故クロノアが」
エルフメイドさんは、目を大きく見開いて後ずさりした。
「えぇ、クロノアよ。落ちこぼれのダークエルフさん。まだ魔王様につきまとっていたの?わたくしがこれから魔王様の面倒を見るので異世界に帰ってどうぞ」
「どれだけあたしが苦労して魔王様の面倒を見て来たと思っているっすか!貴方に魔王様は渡さない!魔王様がまたダメになるに決まってるっす!!」
何か喧嘩始まった...。
「魔王様!一緒にアパートに帰りましょう!」
エルフメイドさんもクロノアさんの絡めてない腕に自分の腕を絡めた。
何この美女エルフサンドイッチ。
「ダメよ魔王様、わたくしと一緒に来たら、東京を一望できる高級マンションの最上階で美味しいお酒を飲んで、膝枕で耳かきしてあげますよ」
耳があるの!?
違う違う、そうじゃない。
「どっちも嫌だ!我はホームレスがしたいのだ!」
いや魔王気持ちはわかるが今の二人の中で最低の選択をしてるの気がついてるか?
「ホームレス?まさか、シェリィ。お前、魔王様にホームレス生活をさせていたのか?」
怒りに髪を逆だたせ、漆黒の目をスッと細めたクロノアさんは、エルフメイドさんを、父親の仇のような目で見た。
「していたっすよ」
「信じられない...絶対に許せない」
「許せなくていいっすよ。魔王様ほったらかしにしてどっかに行ってたクロノアより100倍マシっすよ。あたしがどれだけ苦労してたと思ってるんすか!」
その通りだ。俺もそれはエルフメイドさんから聞いてよく知ってる。
「魔王様、やっぱりシェリィに魔王様は任せられません。このクロノアと帰りましょう」
「クロノア、我は」
「こーら。ダメでしょ~お姉ちゃん、でしょ」
クロノアさんは、漆黒の瞳を魔王にじっと向けた。
「やめるっす!催眠は卑怯っすよ!」
なんかこのコンビニにくる強キャラ感ある女性って皆催眠使えるんだけど何なの。
まぁ、綾女さんはなくても十分強いからあれだけどって...あれ。綾女さんは?
クロノアさんが来ているんだから綾女さんは飛んでくるはずだ。
今日はいつもみたいにコンビニの外で俺のことを見守ってくれてないのか?
俺は気になって外に出た。
「あれ....?綾女さん?」
どうしたんだろう、綾女さん。
いつも必ずコンビニの前で俺の事見守ってくれているのに。
何かあったんだろうか?
不安のまま、コンビニに戻るとそこはカオスの世界が広がっていた。
クロノアさんに膝枕されコンビニで横たわる魔王と、両手で顔を抑えて膝をつくエルフメイドさん。
「何してるんですか!!?」
「クロノア、我は赤ちゃんでは」
「こーら、返事は「ばぶ」でしょー?」
「ば、ば、ばび、ばば」
「やめてくださいっす!!もう魔王様の威厳はめちゃくちゃっすよぉ!!」
「ほーら、お姉ちゃんによしよしされて気持ちいい?前みたいにお姉ちゃんの可愛い赤ちゃんに戻りましょうね?」
「ば、ばび、ばべ」
「絶対バブって言っちゃダメっすよ!魔王様!やっと赤ちゃんからホームレス生活のおかげで人間になれたのに赤ちゃんに逆戻りになっちゃうっすよぉ!」
「バブってオギャっちゃえ。魔王様。お姉ちゃんが、ずっと面倒見てあげる。ホームレス生活なんて二度とさせないように」
「それは困る」
「きゃっ」
ガバリと魔王は起き上がり、
「そうだ、我はホームレス生活がしたいんだ!」
「だからダメっすって!」
「お姉ちゃんと過ごすの!」
ぎゃいのぎゃいの喧嘩する三つ巴の魔王パーティ。
俺はそんな事より綾女さんの事が心配で、三人の会話が頭に入ってこなかった。
もう一回外に見に行ってみよう。
コンビニの外に出ると、
「うわっ!いつのまに?」
死神さんがベンチに座っていた。
「やぁ、こんばんは死神だ」
「どうしたんですか?突然」
「いや、ちょっとね。聞き込みで疲れちゃったから休んでいただけさ。ところでこのコンビニ、ライトが暗くない?ライトがくライト"」
「聞き込み?」
全力でスルーした。嫌な予感がする。
「そう。聞き込み。巷で"切り裂きジャック"ってのが出回っているらしいんだよね」
「切り裂きジャック...?」
「そう、強くて美しい女性ばかり襲う恐怖の切り裂きジャック」
「強くて美しい女性って!?」
嫌な予感が頭を駆け巡る。嫌だ、嫌だ。待って、もしかして。襲うって!?切り裂くって...。
「最初の被害者は、柔道の全国大会出場者、次は空手、次はボクシング。そして何故か最近だと私達のような人外を狙って来ているようでな。最近は口裂け女が....」
俺は、頭が真っ白になった。
「何だって...今なんて」
「口裂け女が最近切り裂きジャックの被害にあったんだ。幸い彼女は強くてかすり傷程度だったんだけど、まあ狙われる可能性があるから、今は私の所で保護している。だが今日はずっと君を見に行くと言って聞かなくてね。君を毎日見守るのが大切な日課なんだと」
「綾女さん...綾女さんに会わせてください!」
「それがダメなんだよ。私達の方で彼女を保護しているが、あの彼女の事だ君に会ったら絶対に会いに来ると言いかねないだから私がこうして...」
からからから、何か音がする。
それは徐々に近づいて来る。
まさか、切り裂きジャック...!?いや、違う。闇夜に照らされて現れたのは、鎌を引きずって現れたマスクをつけていない綾女さんだった。
「綾女さん!?」
「ハル.....会いに来たわ」
にっこり笑った彼女の顔は赤い液体のようなものがついていた。
赤いワンピースからも鉄のような変な匂いがする。
「綾女さん...よかった、無事で。あの、色々聞きたいことがあるんですが」
「どうやって....来たんだ」
驚きの声をあげる死神さんに、
「私とハルの邪魔をする奴は殺す」
にっこり笑うと、当たり前のように死神に鎌を振り下ろした。
死神さんは、急いで避けて転倒した。
「ひっ!死神に鎌を平然と振り下ろすなんてなんて君は罰当たりなんだい」
「待って待って待って!!綾女さん?」
「どうしたの?ハル」
「どうしたのじゃない、落ち着いて。それと、その前に切り裂きジャックの被害にあったって聞いたけど大丈夫だったの!?」
「えぇ、あいつは私を殺す気は無かった」
「あぁ、そうだな。確かにあれは切り裂きジャックとは名がついているが人を切るわけではない」
「どういう事ですか」
「切り裂きジャック、又の名を「着り割きジャック」私が名付け親だ。強い女性の衣服を女性を一切傷つけず切り割いて裸にして回っている世紀の大犯罪者だよ」
「いやそれただのド変態じゃないですか!!!」
本日も読んでくださりありがとうございございます。
私は耳かきマニアなんですよ。
人が耳かきされている動画を見るのが好きで、耳かき小説というのもたまに読んだり、耳かきCDを聴いて寝たり、耳かきで本当にオススメなのはベタですが、「匠の技」という耳かきです。ヒカキンさんがオススメしていて買ったのですがあれを使ったらもう二度と他の耳かきは使えないですね。いつか結婚したら夫婦で耳かきをしたりされたりして過ごすのが夢です。
旦那の耳を、私だけが耳かきをして管理したいですね。




