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夜の國  作者: 帝
19/19

夜の國

色々あったけれど、ひとまず後日談と位置づけよう。


その後、僕も(日光によって相当な負傷を負っていたため)丸一日くらいは目を覚ますことは無かった。

初めて目を覚ました時は、驚愕したものだ。

しばらく見ることのなかった数多の「蛍光灯」が、その眩い光が僕を包んで。

そして。


それより更に眩しい「彼女」の微笑みと安堵の表情が、僕の視界に入った。

彼女は、泣いていた。

「よかった、よかったよ…。ほんとうに──。」

と、何度も繰り返していたが、次第に言葉も話せなくなるほどに泣き噦り、「うわああああああん」と、最終的には号泣しながら僕の胸に抱きついてきた。その涙は、きっと色々な想いの詰まったもので、とても暖かかった。



──本当に、今まで心配をかけてしまったな。

ともかく、爻の言葉を借りるならば「分離したメビウスの輪の表裏は、再び一つに統一された」のだ。


僕は、"人間"だ。

「人間嫌い」でも「自分嫌い」でも無い。

今まで必死に抱えていた僕の生命が、より一層尊い物に感じた。


爻が最後の最後に発した、「ありがとう」という言葉が頭から離れない。

思えばこの二週間、無茶なことをいっぱいしてきた。

無理なことををしてきた。

無謀なことをしてきた。

でも、全て無駄じゃあなかったわけだ。










そして。

まあ、大急ぎで大慌てで遅れを挽回しなきゃいけないのだけれど、とても晴れやかな気持ちで学校に向かい、例の横断歩道も、何の問題も無しに渡り切って、教室へ入った。

「──おはよう、カズくん。」

いつも通り、快活な笑顔。

「ああ、おはよう。」

いつも通りだ。

「今日の夜、話があるんだけど、いいかな?」

急に咲にそう誘われたが、特に断る理由も予定も無いので快諾し、その日は結局、何も無い平穏無事な良い1日を過ごしたのだった。




夜20時。

大浦大公園で僕らは待ち合わせをしていた。

「本当、良かったね──。」

そんな調子で、思い出を懐かしむかのような口調で、咲はそう言った。

僕は申し訳のなさが先立って、二の句が継げないわけで、黙り続けてしまっていたが。

その後、何度も咲は「良かったね」と繰り返してから、僕の名前を呼んだ。

「鎌田 和成くん」

「?」

丁寧に、フルネーム。

渾名でもない。

「その──ね?今まで色々あってさ、『和成くんのため』なんて大義名分で、自分勝手なこと色々しちゃって、余計な心配かけちゃって、本当にごめん。だけど私、えっと、その、あの。」

しどろもどろ。

まじで?

「和成くんの事が、大好きです。」

彼女は、力強く、たしかにそう言った。





僕は夜が好きだ。

首筋を撫でる冷たい夜風も、仄かに煌めく街灯も好きだけれど。


彼女に何度も助けられて、支えられて過ごした──この夜が好きだ。

自分の日常に、人生に、消えることの無い深い傷を負ったとしても。

それは今でも、変わらない。

「僕も、お前のことが大好きだ」

一言だけ、短く僕もそう返した。



──彼女に負けないくらい、力強く。

初めての小説作品「夜の國」完結です。

ありがとうございました。

これからは他に力を注ぐので、そちらもよろしくお願いします!

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