VS 『僕』
鎌田 爻は、僕と同じだった。
表裏だからまるっきり同じじゃあないけれど、少なくとも、"マンイーターとして日光に弱い"という事は、共通していた。
朧気な意識の中で、僕はそんな事を考える。
元々遊具の多い公園と言えど、陰になる場所はそんな多くもない。その中で爻の左脚は、微妙に陰から出ていて、昇ったばかりの日光をしっかり喰らっていた。
「ぐあああァァァあああァあああアァああ
ッ──。」
言葉にもならないようなそんな咆哮をあげて、爻はひたすらに踠き続けるが、その努力すらも功を奏することは無く、左脚で発火した炎は、どんどん勢いを増しながら身体へと這い上がる。
「ど、どうすんだよ──…これ、おい、爻…。」
僕は眼前に広がるショッキングな映像によって失いかけていた意識を引っ張り戻されたが、尋常ではないような状況に混乱しつつ、今は敵であるはずの、所謂"裏"であるはずの爻を慮るような言葉をかけていた。
そのとき。
「✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕」
唐突に爻は、炎の中でそう言った。
いや、何を言ったのかは聞こえなかったし、分からなかったけれど。
確かに何かを話したのだ。
突如爻は、業火に包まれた腕を伸ばし、僕の腕を掴む。
「ぐッ……!」
僕の腕にも炎が移る。燃え盛る、というよりは、暴れていた、と言った方が、その炎を形容するには幾分か適しているように思う。
そのまま爻は、腕を手前に引き、僕の左肩から外をを日光の下へ引っ張り出した。僕は『鉄血』を地に落としてしまったまま、爻の力に負けて身体を日の下に晒してしまう。
「何すんだよ、この野郎──!」
僕は叫んだ。腕で炎が暴れ狂っているままの身体で叫んだ。炎がどんどん全身を支配しようと這ってくる。
しかし、その声が爻に届いたのかと言われれば、その確信は無かった。何せ、痛みでまともに声が出ないのだ。
『鉄血』も無くば、燃え盛る身体を動かして抵抗すら出来ない。
どうしたら──!
その時。
本当に、"その時"だった。
僕の背後から、目の前に人影が駆け出したのだ。それが誰かなんて上手く視認することも出来なかったが、おおよその推測くらいは出来た。
そもそも、ここで僕と爻が戦っている事を知っている人間なんて、1人しか、いないのだった。
踠き苦しんでいた爻の動きが、急に止まる。
腹部には、見覚えのある日本刀が深々と突き立てられていた。
──そして、そこには。
脚をガタガタと震わせ、頬には恐怖による涙を伝わせている少女が。
きっと、この世の誰よりも優しいであろう少女がいた。
井上 咲。
彼女はずっと、物陰で見ていたのだ。
いてもたってもいられずに。
「・・・・・っ!」
咲は何も言わずに、こちらを振り返りもせずに、その刀から手を離さなかった。
日光に晒されている身体では、"マンイーターの不死性は発揮出来ない"──。
つまりそれが意味するのは、「そういうこと」である。
炎に全身が包まれているせいで、爻の腹部からの出血は確認出来ないけれど──おそらく、相当な負傷のはず。
このままなら、爻を倒せる。
──いや、殺せる!
大浦大公園に、刹那、その瞬間。
3人の少年少女の咆哮が、響き渡った。
──全く、人の住まない田舎で良かった、と。
そう言うべきだろう。
爻は、日光にその身を焼かれ、灰塵と化した。
消滅。
死亡。
その瞬間に放った一言が、僕の耳を強烈に劈き、僕の心を猛烈に支配した。
「全く、どちらが『怪物狩り』かわかんねえよ──」
「ありがとう」と。
話の展開がだんだん粗雑になってるのはお気になさらず。
次回、最終回──!




