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夜の國  作者: 帝
17/19

鎌田 爻は──。

『鉄血』を構えて突っ走ってきた僕を目前にしながら、微動だに動こうとはしなかった。

ただ腰に手を当て、ニヤニヤとこちらを見下ろしていたかと思えば、突如。

爻は、手刀で自分の手首を切り裂く。

「──!」

僕はただ驚愕した。

この"手法"──否、この"手刀"は見たことがある!

というより、厳密に言うならば"やったことがある"だった。

爻は手首から溢れ出した血を瞬時に変化させ、サーベルのようなものを構えた。

いや、あのチャラチャラした奴がサーベルを構えること自体おかしくて、似合うはずもなかったのだが、それを言えば日本の男子高校生であるはず(見た目的に)のこの僕が日本刀を構えているのも、似合うわけが無いのだろう。


お互いの身体が動いた。

駆け出す、跳び交う。

僕ら二人の動きはまるで同調しているかのように、全く"互角"、埒の明かない死闘を延々と演じ続けていた。

「演じ続けていた」というのは、ここで爻は未だに本気を出していないことを理解していたからだ。

現に彼の顔には、気持ち悪い薄ら笑いが貼り付いていて、ヘラヘラと、またニヤニヤと僕を見ている。

「やっぱり若いよねえ、高校生はさあ。」

と、おちゃらけた台詞を投げる。

「うるせぇっ、黙れぇぇぇぇぇぇっ!!」

僕は昂りを抑えるつもりも隠すつもりも無く、咆哮する。

咆哮して、握りしめている太刀を振り回す。


なのに。

その刀身は彼の身体に近づくと、即座に跳ね返されるのだ。

"攻撃出来ない"。

あの時、爻が言ったのは、本当のことだった。

「うおおおっ!」

「もっと狙いを定めろよ、言ったろ?俺は生きているマンイーターなんだからさ、斬撃を喰らえば首が吹っ飛ぶんだぜ。」

あの時冗談として扱った話も、(冗談みたいではあったが)本当の事らしかった。

「──まあ、喰らわないけどさ。」

そういって、爻は僕の腹にサーベルを突き刺す。

「ぐっ…!」

当然、腹からは出血し、動きも瞬間、停止した。

しかしこの激痛には──(悔しいが)もう"慣れた"。

腹部に突き刺さった刀身を固定したまま、僕は腹から溢れる血液を変化させ──大鎌を作り出した。

「『人喰い』ッ!!」

出雲と戦った時に作り出した鎌だった。

刀身を無視して間合いを詰めた、この距離なら届く──!

大鎌を横に勢い良く振り抜いた。

決まった──!

爻は『怪物』を幾度と無く狩り続けていたマンイーターだが、"生きている"。攻撃を喰らわない代わりに、マンイーター最大の特徴である、"不死性"を犠牲にしていた。故に、僕の大鎌を喰らって、『こいつは死ぬ』!

が、しかし。

爻はあろうことか、僕の血液を利用し、反対の手に『鉄血』を創ったのだ。

腹部にサーベルを突き刺したまま、横から鎌と同じ要領で『鉄血』を振り抜く。


僕の視界は、ぐるりと回って、そのうち真っ暗になった。

頭が吹っ飛ばされたのだ。

もちろん即座に再生するが、腹部を貫通する痛みには慣れても、この気味の悪さにはなれなかった。

「ちくしょう、マジでキリがない──!」

不死性を犠牲にしているとは言えど、攻撃を喰らわないならそれは不死と同義だった。

ならば、次の策だ──!

「『復讐』ッ!!」

八代がやったのと同様(あれは植物だったか)、血液を用いて普段の何倍もの大きさとなる巨大な剣を作り出す。

それを思い切り振り下ろす。

「うおおおおおおおッ!」

だがしかし、またも爻は容易く刀身を跳ね返してみせた。



僕は駆動して、蜜の戦闘から見よう見まねで習得した格闘法を試しても見たが、まるで通用しなかった。格闘技に至っては、八代よりも豪快で、蜜よりも靭やかで、出雲よりもバランスが整っていた。


そのうち体力の尽きた僕を、爻は軽く駆け寄って、頭上にサーベルを突き刺しそうとする。

その後は多分、回復しきれないように、細切れにでもするんだろう。


無理だ。


対抗できない。

抵抗できない。


何をしても──敵わない。

負けた。

僕はこれから、死ぬ。

死んでも死にきれないような身体で、死ぬ。

今は何時だろうか。

既に相当な時間が経過したはずだ。

咲はどうしてるんだろう。

両親はどうしてるんだろう。

学校の皆は。


クソ…。

「人間嫌い」だったはずなのに、死に際だって時に…どうしてこんなにも、皆が愛しいんだ?



「自分嫌い」だったはずなのに、不死身だったはずなのに、こんな時に、どうして……



『こんなにも、命が、惜しいんだ?』



爻がものすごく眩しく見えた。

サーベルの刀身の輝きだろうか。

或いは、『鉄血』のものだろうか。


しかし違った。

僕は寸前、目を覚ます。意識を醒ます。

爻の全身は、ありえないほどに、分からないほどに、"燃えていた"。



──昇ってきた朝日に、焼かれていたのだ。

「死ンダ身ニアラズ」。

やはりあれは、嘘だったか。

爻も僕と同様、既に死体として(人間的に)、怪物として生きていたのだ。



いつだかの後書きで書いた、"これからの予定"。

あれは取り消しますごめんね。



これからもよろしくお願いします。

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