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夜の國  作者: 帝
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不条理、不可思議、不幸と不死身

僕と爻は、廃墟のベランダに出て夜風を浴びていた。冷たい空気が首元を滑らかに撫でるのが心地良い。

「ふうん。出雲、八代、蜜ね…。これで3人のマンイーターを倒したわけだ。」

僕にことの進捗を確認する爻。お世話になっている人には出来る限りこういうことはしたくないのだが、それでも後々湧いてきた後ろめたさと罪悪感がある為、蜜を食らってしまったことは話していなかった。

「そういやさ」

「うん?」

僕は前々から気になっていたことを聞いてみる。

「出雲が出血も何もなしに霧散して消滅した話──あれは結局、どうなったんだ?」

そうだった。

爻曰く、マンイーターにしたって傷を負った時は出血しないわけじゃない(すぐ消滅するけど)。

霧散して消えるなんて、稀有(ケウ)な例どころじゃなく、寡聞(カブン)にして聞いたことが無いそうだ。


「ああ、やっぱり逃走していたみたいだよ。日を改めてコンディションを整えて、君を奇襲するつもりだったらしいからね──。」

僕の取り付けた約束が意味をなさないじゃないか、と爻は呆れたように話す。


まぁ、そう言われれば確かに──。というか、僕が出雲と戦闘を繰り広げた際に受けた印象というのが「下衆な男」だった。粗暴な言葉遣いに関してもそうだったし、性格的に約束を反故(ホゴ)にしたっておかしくはないのではないか、と疑念を抱いていたところがある。


「まあ安心しろよ、俺がなんとかしておいたしさ。」

軽い調子で爻は言った。なんとかって……。

正直、そんな上手くいくのか?爻は人間だろうし、秀でた戦闘能力を有しているようにも思えない。かといって今まで複数のマンイーターと渡り合って、交渉できたんだ。彼だって、並外れたスキルを持っているのは間違いないだろうけれど…。


「それじゃあ、爻。マンイーターって確か4人だったろ。最後の1人について、教えてくれよ。」

僕はいつも通り、敵の情報を聞き出そうとする。

しかし爻は、「……うーん、これがイマイチ掴めて無くてねぇ。正直、困ってるんだよ。相手は相当な猛者(ツワモノ)のようだね。」

と、何やら調子が悪いのか、歯切れの悪い返事のみを返した。が、しかし。僕も何度もこいつと言葉を交わしたのだ。何か隠し事をしていることくらい、直感的にすぐわかった。


「おい、爻!」

僕は切羽詰まった気持ちになって、爻のシャツの胸ぐらを掴み、睨みつける。正直、この時の僕は見苦しいくらいに激昂していたのだと思うけれど、それでも僕に大きく関わる出来事で、僕の表裏の存在を名乗るやつが隠し事をするのが悔しくて我慢ならないのだった。

「おいおい、そんなに怒るなよ和成クン。若いねぇ。」

と、へらへらと口元を緩めて笑いながらそんなことを言った。これでも爻と僕は同い年だ。

「分かったよ、ヒントくらいは教えてやろう。そいつの特性は──。」


『不死身』


「不死身?」

え。

思わず僕は聞き返してしまった。だってそれって、マンイーター全員に共通する特徴じゃないか………。もちろん回復速度が追いつかない程に傷を追えば死ぬし、僕の『鉄血』のように回復が上手く進行できない傷だって負うけれど、それでも皆負傷の回復くらいは出来るのだ。


「違う違う、そうじゃあなくてね。これじゃあ『不条理』とか『不可思議』とか言い換えた方が幾分か伝わりやすいかな。」

理解が追いつかない。僕が頭の中で疑問符を踊らせていると、そこに爻の補足が入る。


「君の言う不死身ってのはさ、攻撃を与えても回復するからそれは徒労になってしまう──という意味だろう?そうじゃあないんだよね。」

「ソイツは、まず前提として"攻撃を食らわない"。だから君がいくら『鉄血』で切り裂こうが貫こうが、彼には通用しないんだよ。」


……………………………………………………。

マジか。

それはめちゃくちゃ困る話だった。

「そしてもうひとつ。今のはオマケみたいな話でね、こっちがメインさ。」

さらにマジか。

しかし爻は、またもよく分からない事を言った。

「不死身ってさ、死ぬ身にあらずって書くわけじゃん?だが今回の場合それこそが違くてさ。」


『死ンダ身ニアラズ』


爻はニヤニヤしながら、そんなことを言って見せた。

つまり、肉体も生きているマンイーターなのさ、と、そんなことを言ってみせた。それ、ただのカニバリストじゃん………。それに生きているってことは、日光の下でも平気で活動が出来るのだ。

僕が困惑している所を、爻は「ははは、本気にした?冗談だよ。攻撃が通用しないのは本当だけど、さすがに生きているなら、それをマンイーターとは呼ばないさ」と半ば嘲るような感じで言ってきた。

くそ、ムカつくやつ……。







時間が経過し、爻は「そろそろ俺は寝るぜ」と言って、部屋の中に戻った。僕は無言で街の景色を眺め続ける。



僕は夜が好きだった。

溢れ出る静謐さだとか、そよぐ夜風とか、煌めく街灯とか、そんなものじゃなくて、どこか根本的に、夜には何か不思議な感情を抱いていたのだ。

話の運び方が思い浮かばない

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