表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜の國  作者: 帝
13/19

人間

今回すこし短いですごめんね

『私ヲ喰ベテ』

その声が、僕の脳裏から離れることは無かった。

壊れたラジオのようにノイズがかかりながら、僕の脳内で永遠に騒いでいる。無限に鳴り響いている。頭が破裂しそうだ。身体中を焼かれる思いがする。全身を苦痛が迸る。全身を悲痛が駆け抜ける。


命を蝕む音がする。命を切り裂く音がする。命をバラバラにする音がする。命を抉る音がする。命を刳り貫く音がする。命を奪う音がする。命を……………………。


喰らう音がする。

しかしその当時の僕には、残念ながら、命を尊ぶ心だとか、命を慈しむ気持ちなんてものなど、少なくとも無かったのだ。




彼女、神咲 蜜との戦闘中に、僕は空腹に苛まれていた。

いつの間にやら鋭く伸びた僕の歯…というより、牙。そいつが彼女の艶のある肌を貫き、肉を切り裂き、骨を砕く。

とめどなく真っ赤な血が溢れ出る。が、僕は意に介さなかった。

当然だ。食事中にそんな事を気にする必要無い。


肉料理から肉汁が溢れ出るのは至極当然なのだ。むしろそれこそが旨味を引き立てるのだから。


鮮血を啜りながら、彼女の肉を引きちぎる。

彼女の臓器を引きずり出し、喰い破る。

先程までは痛みのあまりに泣き叫び、喚き、もがき苦しみ、震えていた蜜なのだが、それも命がある故のことなのだ。


喉が潰れても叫び散らし、暴れ回っていた彼女だが、今はもう蒼白な顔で天を仰いでいる。その身体はもう既に微塵も動かない。


生憎、大浦大公園は僕の住む町(割と田舎だ)の相当はずれの方にあるため、まず家がないし、店もなければ人もいない。僕の住む廃墟のような建築物こそ乱立しているが、学校などへも全て電車で時間をかけて通学しているくらいだし、ここ周辺で食事をしたところで、目撃される心配はまずない。


──まぁ、見られたところで、そいつだって喰えば良い。勿論、マンイーターである蜜ほど美味しい食材では無いけれど。


なんて事だろう。

僕は女性の柔らかな肉が、こんなに美味なものだとは未だかつて思わなかった。血は甘いし、肉も噛みごたえがあって、思わず笑みがこぼれてしまう。

最高だ。


先程までに蜜が話していた、贖罪と看做して行った殺人の話などとっくに忘れていたし、容認する気も肯定する気もなかった。


しかし代わりに、それに次いだ、人間を食材と看做して行った人喰いのことに関しては、拒絶もしないし否定もしないし、今となっては大いに肯定してやろう。

怪物のマンイーターたるもの、人を喰らえど、咎められる筋合いはないし責められる理由もないし怒られるわけもないし気味悪がられる必要だってない。何も無いのだ。

人間が食物連鎖において下の存在に位置する動物、即ち鳥や豚や牛などを喰らうのと同義。

それだけの事だった。


とにかく彼女の最後に遺した一言が強烈すぎて、人間だった頃の僕──否、『人間としての感性を持ち合わせていたお人好しの化物である僕』の理性は完璧に払拭された。

結果的に僕は、現に彼女を喰らい尽くしているのだから。



心臓以外の全ての部位を呑み込み、生暖かい鮮血を飲み干した僕は、柔らかくもあり固くもある、真っ赤な血に塗れたその心臓を見て呟いた。


「これは──いくらなんでも、喰えねえよなあ。」


本当に誰に言うでもなく、人を喰らうマンイーターとして、ただ一言呟いたのだ。

心臓はその場に小さな穴を掘って埋め、僕は公園を立ち去った。


──心には、いろんなものが詰まっているから。

心臓を喰わなかったのは、そういう理由だったのかも知れないけれど…。

少なくとも僕は、人間としての感性を、まだ少し、ほんの少しだけどこかに残しているようだった。


公園に設置された大きな街灯の灯が、僕の頬を伝う涙を一瞬だけ照らしてみせたのだ。

こんにちは、帝です。

いつも端的な事しか言っていないので、本格的な「後書き」なるものを書いてみたいと思ったのですが、まあ読んで字の如く、「後に書く」ものであれば総じて「後書き」と呼べてしまうのかもしれないな、なんて思ったのです。

書くべきことも書きたいことも見当たらず、益体の無い文章をつらつらと書き連ねる訳にもいかないので、今後のことについてお話をしましょう。


まず、現在執筆中の「夜の國」完結後。

番外編として、各敵キャラ視点のお話を書いてみる予定です。長さとしては1~2話くらいですね。書いているうちに話を膨らませてみたいな、なんて思ったキャラが複数いたので、これは是非とも挑戦したいです。優先順位は割と上位に位置します。


それも終えてしまったら、次は学園モノを書こうと思っています。主人公の男子高校生が、街に伝わる都市伝説とかを調査する話の予定。

少し不思議な怪奇譚のような位置づけになると思ってます。

ただこれについては、「夜の國」のようにストーリーが続く訳ではなく、1話ごとに時系列や世界観はそのまま、題材となる都市伝説の話などを変えていく、短編集みたいな進め方をしてみたいな、なんて考えています。まあそれだって、やる気と時間があればの話ですがね。私は学生なので、本分とされる学業に励みつつ、合間を縫って趣味程度に書いていきたいと思っております。


これからもよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ