VS蜜 その2
──これなら、まだ、マシなのではないだろうか。
結局のところ僕の案としては、無理に『鉄血』を用いずとも、格闘技に格闘技で対抗しよう、というものだった。
僕の知っているマンイーターの中の誰よりも靭やかで誰よりも鋭い動きをする蜜に格闘技で対抗しようというのは些か愚かしい案ともとれるが、刀を溶解されて攻撃すらままならないのだから、まあ試す価値はあるだろう。
僕はそう思案しつつ駆けていたが、蜜の座っていたベンチ付近で立ち止まる。
また蜜も公園入口付近で停止する。
つまり、最初にお互いの立っていた位置と正反対の場所だ。僕は再び走り出す。
躊躇するな、攻めろッ──。
先手は僕がとった。
手刀を彼女の首元目がけて放つと、それは美しく白い首筋に直撃。そのまま蜜の首は血を多量に噴出しながら吹っ飛ぶ。
しかし結局、一秒もかからずに頭部は再生した。
残骸の方の頭部も、噴出した血液も即座に消滅する。
そして今度は全く同じ「手法」で、つまりは全く同じ「手刀」で、蜜は僕へ攻撃を繰り出す。
また同様、僕の頭部も、彼方まで血液を撒き散らしながら吹っ飛んだが、即座に回復する。
うええ。
気持ち悪い。
僕も頭部を吹っ飛ばされたのは初めてだから、頭が丸ごと復活したことに戸惑いながら、顔をぺたぺたと触って感触を確かめる。
よし、本物だ。
反撃だ、喰らえッ!
僕は二度目の手刀を蜜の身体目がけて放つ。
……………………………………………………………………。
──時間的には五分にも満たなかっただろうが、とにかく体感的には恐ろしく長い時間が過ぎた。僕ら二人はお互いにお互いの身体の部位を吹っ飛ばしあって、消滅させあっての繰り返しを過ごしていたが埒が明かない。
不死身とは非常に恐ろしいものだった。
僕も蜜も疲弊してきている。そんな中でも、蜜は僕を挑発し続ける。
「はぁ…はぁ………活きのいい獲物ね。最高のディナーになりそうよ、あなたは…。」
人の不幸は蜜の味ならば──僕の命は、どんな味なのだろう。
「ぜぇ…はぁ……お前は僕を捌けないぜ。僕がお前を裁くんだからな…。」
息切れしながらも、僕は返す。
「生意気ね。そんなボクは──」
蜜は囁くように続ける。
「盛り付けてあげる。」
僕はその一言に悪寒を感じ、急いで退転する。
次の作戦(100%思いつきなので、当然ながら推敲はしていない)は、コイツだっ……。
僕は砂鉄を呼び起こし、自分の背後に巨大な土の拳を作り上げる。
好きな少年漫画に出てくる、背後霊──幽波紋のような、巨大な腕を。
そしてそれを、思い切り振り下ろす。
「無駄(よッ!」
蜜は劫火に拳を包み、それを振り下ろした豪腕にぶつけようとする──が。
僕が狙ったのは、それじゃなかった。
蜜の身体の寸前まで振り下ろした拳を、勢いに乗せてそのまま崩す。
すると当然ながら、視界を全て覆い尽くす程の濃い土煙が舞うのだ。
即座に僕は、蜜のいた位置まで駆け寄って、拳を振り抜く。
すると、柔らかく、また堅くもあって、生暖かい感触。
博打ではあったが、作戦は成功。
僕の拳は、蜜の腹部を貫通していた。手には深紅の鮮血を浴びていたのだ。
「いやぁ…………うあっ…………。」
蜜は口からも血を垂らしながら、嗚咽を漏らす。
僕が拳を引き抜くと、その傷口はやはり瞬時に塞がってしまったが、僕はある一つの仮説を立てた。
そしてこの仮説が実現すれば──。
僕はこの戦闘における「勝利」が確定する──────!




