三話 出生
今日もいつも通りの日、だったはずだ。
(あ、あれ?)
何故か様子がおかしい。いつも心地よかったこの空間が何故か力に押され、だんだん空間自体が小さくなっていく。
(って、壁がどんどん近づいてきてる?!)
「あ、もうその日になったようですね。」
(その日って、何の日?!)
「当然出産日ですよ?」
出産日?!いや、待てよ。おれ自我が戻ってから一週間も経ってないんだけど?!
(まだ、四か月残ってたんじゃないかよ?!まさか、未熟児?!)
「いえ。初めて自我が目覚めてから今日で約四か月たっております。正確には四か月と三日、ですが。」
それ、どういう事?!いくら何でも一週間もたってないはずが4か月もたってるって有りえないじゃん?!
「この四か月の間、お目覚めになられた日が四日くらいですからね。」
(それってつまり、俺この四か月の間四日以外は寝続けたっていうこと!?)
「はい、そうです。」
何て言う事だ。そりゃあ、胎児だからずっと寝続けるのが正常だとは思うのだが、いくら何でもこれは酷いじゃん。計画が狂うわい。本来なら、ある程度言葉を学んでから生まれる予定だったんだけど、今じゃ簡単な挨拶くらいしかわからないぞ!?常識は大体学んだのが不幸中の幸いだが…
「それでは、外でお会いいたしましょう。」
(お、おい!?)
だんだん空間が狭くなって、体が押されていく。これは、覚悟を決めるしかないな。
(って狭い、息苦しいんですけど!!!)
そのまま、後ろから押され続けて、狭い穴から頭から出る。
(ぷは!これ、当然赤ちゃん泣くわ。こんなに苦しいのに泣かない赤ちゃんがいるもんか!)
「=-+<>!」
「はぁ…はぁ…*&^_?」
暗闇の中から、一気に明るみに出る。明るすぎる明かりのせいで目が遠くなりそうだ。強い光のせいなのかそれともまた新生児だからかはわからんが目が見えないため、言葉だけが聞えてくる。まあ、聞こえてきても何言ってるかはわからんが。声は若い女の人と年老いた人の声であった。多分母親と産婆の声ではないだろうか。見えないからわからんけど。
「*&^…?」
「$#%^!!」
何か焦っているような声だ。何を焦ってるんだ?自分で言うのもなんだが俺、結構早めに出たし安産だと思うんだが…。人によるが数十時間も産痛を経験するもあるそうだしな。俺自身も元気だし、いいんじゃないか?
「@#$!!」
ぺしっ!ぺしっ!
(痛ッ!!!!赤ん坊に何をする!?)
目が見えない状態で尻がたたかれる感覚がする。赤ん坊にそんなことしちゃだめだろう…。何してるんだこの人たち
(あ、もしかして…)
「おぎゃあ!!おぎゃあ!!」
「#$@!」
「$#@%^&…。」
どうやら俺が泣きださなかったことで、死産かと思ったらしい。ってその確認のために尻を叩くとなると文明水準はかなり心配なんだが…。
「@#$%。」
元々抱かされてた人(多分産婆)から他の人(多分母親)に渡される様な感じがする。先までとは違い、非常に良い居心地良さを感じる。先までが居心地が悪かったわけではないが。転生してから初めて大きい仕事(?)を済ましたせいか、非常に疲れ、そのまま俺は意識を手放した。