一話 転生
意識が再び戻って目を覚ましたが、目の真は真っ暗な空間であった。
(ん?なんだ?もしかしてなんか失敗した?)
目の前は真っ暗で音も聞こえない。自分の感覚もおかしく、まるで浮いているかの様な感じだ。試しに体を動こうとするものの、思い通りに動かないし、声も出ない。 普通に考えれば不安がるのが正常だと思うが、なぜか非常に心地良い。
(どこだろう、ここ。)
「人間の胎内です。」
ここが何処か疑問に思っているところに、いきなり声が聞こえてきた。女性の声で少し硬い感じの声であった。きっと生真面目な人の声だと思うんだが…
(って、だれ?!)
「まことに申し訳ありませんが、私自信を指す呼称が存在しません。あなたに判りやすく言えば、天使、といったところでしょうか。主神の命によりあなたの助け人として選ばれました。」
そういや、助っ人をつけてくれるとあの爺ちゃん言ったよな。つまりこの声の主がその助っ人ていう訳か。
(そうか。これからよろしくね。そういや、先人間の胎内といったけどそれってつまり、俺今胎児?)
「はい。あなたは今、6か月くらいの胎児です。本来であればこの時期に自我が芽生えることはあり得ませんが、あなたの場合は尋常ではない魔力を持つ影響で脳が発生して間もないこの時期でも不足している脳の機能を魔力が補う形で自我が芽生えたことだと思われます。いえ、芽生えた、というよりは目覚めた、といった方が良いでしょうか。」
あーそういう訳か。じゃあ、真っ暗の空間なのも何も見えないからじゃなくて、そもそも目が発生して無いのかな。
(それ、このまま四か月過ごさなければならないと言う事?)
「そうですね。未熟児として生まれる可能性や母体が死ぬ可能性を除くとそういう事になります。普通の胎児であれば胎内で死に、流産される可能性も存在しますが、あなたの場合は胎内で死ぬことはないように私が手を施しております。」
そうか…まあ、特別なことがなければこのままという事なんだけど…
(それって結構退屈そうだが…)
「でしたら、残り四か月の間私がこの世界の事に関してお教えしましょうか?何も知らないままよりは何かを知ってる方が比較的楽だと思われますが…」
そうだな。どうせやることないし体も動けないし。それくらいならなにか教えてもらった方が良いしな。
(じゃあ、お願いね。)
「了解しました。では言語の方から始めましょう。」