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朝比奈さんちの双子姉妹はネコを被っている。  作者: ツナ吉
第1章 美人双子姉妹の本性。
1/4

1-1. 昼寝中の惨劇。

           

 皆様は、「猫を被る」ということわざを知っているだろうか?


「自分の本性を隠して、表面的には大人しそうに振る舞うこと。その様子がまるで大人しい猫のような姿のようなことから」(諸説あり)



 自分の本性を隠して人は日々を生きていると思う。そうしなければ、この集団社会から浮いた存在になってしまう。

 学生ならばクラスのカースト制度。社会人ならば先輩との付き合いなどなど。猫を被って人は、この集団社会を生きている。



「・・・何言ってんだろ俺。まあいいや。寝直すか」


 そういいながら、俺は再び日課である昼休みの時間だけ解放される屋上での昼寝を再開した。

 

 もともと寝ることが好きだった俺は、高校入学とともに寝心地の良い昼寝スポットを毎日探していた。そしてようやく見つけたのが、この屋上というわけだ


 

 木で作られてるであろうベンチに寝転がって、心地よい風と日光を浴び、下から聞こえる野球部のランニングの掛け声や、他の学生達の昼休みの喧騒をBGMにし、 昼休み終了のチャイムが鳴るまで、心地よい眠りにつく。無論、他の生徒ももちろんいる。だが、ほぼ毎日昼休みをこのサイクルで、過ごしている俺は 学園内では、結構知られている。

 なので、他の人たちもさすがに慣れたようだ。最初の頃は、「あいつ友達いねーんじゃねーのww」と学園に一人はいるであろうDQN系のヤンキーにからかわれたりもしたが、3日で収まった。今では、昼休みずっと寝ている俺を心配して、パンなどをくれる子まで現れた。


 ・・・いや、ありがたいんだけどね?さすがに受け取れないから!!! というわけで、毎回気持ちだけ頂いている。


 そんなこんなで、毎日これといった刺激はないが、平和でのんびりとした学園生活を送っている。


 ・・・ここで話を戻すが、俺が学園内で結構顔が知られていると話したが、少し訂正しよう。ほとんどの生徒に名前と顔が知られている。


 それは、毎日屋上で昼寝している事以外にもう一つ大きな理由がある。それは、何かと言うと・・・・


 ・・・キーンコーンカーンコーン・・・・・「生徒の呼び出しをします。」 


 ・・・放送か。しかも、生徒の呼び出しって、またあのDQN系のヤンキーが何か学校で問題でもおこしたのか・・


「そんなに、学校に迷惑かけて楽しいもんかね。まあ、俺には関係ないけど。ああいうのとは、関わらないに越したことはないな。・・・寝直そっと。」


 そう言いながら、再びベンチに寝直す。・・・・さて、もう少しばかり俺に、睡眠という名の祝福を!!!!


 意味の分からない事を言いながら目を閉じたその瞬間。


「2年B組・・朝比奈遥人君・・2年B組・・朝比奈遥人君・・至急生徒会長室に来てください。繰り返します。・・・・」


 え?一瞬耳を疑った。朝比奈遥人って誰だ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、俺だ。」

 さっきまで、眠たげだった意識が急に覚醒し、周りを見渡すと・・・・・ 


「・・・あ、あれ?誰もいない……?」

 それどころか、下から聞こえるはずの喧騒が全く聞こえず、静まり返っている。周りにも誰もおらず、屋上から運動場を見てみると体育の授業が行われていた。


「ハ、ハハハハハ……嘘だろ……」」

 乾いた笑いしか出なかった。恐怖で震える手を抑えつつ恐る恐る自分のスマホの電源を入れてみる。そこに表示された時刻は……………



 ・・・14時35分(5時間目の授業開始から45分経過)・・・・

 俺は、上を見上げて、


「空が、綺麗だな……あの雲ドーナツみたいでうまそう。」

 人というものは、本当に恐怖を感じた時は、逆に冷静になるものだ。

 いや、違うな。冷静になったのではなく、現実逃避するものだ。


「ここの屋上から、飛び降りたら異世界に転移しないかな。ハハハ……」

 確かに、授業をサボることは、やっていいことではない。だが、授業を1限サボる程度では、退学になったりはしない。せいぜい先生にきつく怒られる程度だ。


 では、なぜ今俺が授業を1限サボっただけで体が震え、顔が引きつり、最終的には屋上から飛ぶことまで考えたかというと、・・・・・・・


 ・・・プルルルルルルル・・・・プルルルルルル・・・・ 

 スマホから着信が鳴った。

 この着信は、俺にとって恐怖でしかない。恐る恐る着信相手を見てみると・・・・


「朝比奈美織(姉)」


「あ、あ、あ、、、、、あ、」

 怖すぎて、どこぞのジブリに出てくるカオがない黒いやつみたいな声しか出なかった。

 しかし、恐怖とは逆に、通話ボタンを無意識に押した。  



「も、もしもし?お姉さまでしょうか?」(お姉さまなんて生まれてから一度も呼んだ事はない。)

 俺は、震える声を抑えつつ通話相手の様子とご機嫌を窺った。すると通話相手の我が姉は、一言だけこう言った。



「もしもしハル君?20秒以内に生徒会長室に来てね?遅れたら・・・・・潰すから♡♡」

  

 「・・・・・・・・・」 

  声にすらならなかった。恐怖で全身から冷や汗が噴き出し、悪寒が走った。主に下半身に。 


  「い、いやだあああああああああああああああああああああ!!!!??????」

   気が付けば、絶叫と共に、走り出していた。


   季節は、4月。春の暖かい陽気の中、彼が望む平凡で、平和な学園生活は、今まさに終わろうとしていた。







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