表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫と海賊  作者: ベイリー
9/10

後ろから……!?

「くくく……いいねぇ」

軍艦の上でザジはふんぞり返る。部下が甲板に椅子を用意すると、そこによいしょと腰かけた。

「国同士で衝突させて漁夫の利を得る……。この最高のやり方に、まさかやつらを巻き込む時が来ようとは……」

ザジは用意された酒をごくごくと飲みほした。

「ザジ船長……まだ戦いの最中ですからお酒は控えて指揮を……」

「あぁ!?俺に指図するのか!?」

小柄ながら態度は横暴、それがザジだった。部下の制止を遮り、またふんぞり変える。

「まぁいい。俺は今、気分がいい。……指揮をとろう」

そういって、ザジは新たな酒を持ってこさせた。

「援護の海賊船の様子は?」

「健在です。問題ありません。念のため用意した二隻の援護の船も予定通り進行しています」

「よしよし」

ザジはまた酒を一杯飲みほした。

「やつらが人助けするとは意外だったが、港を奇襲された時の判断がよかったなぁ」

あの時ザジは港から何隻か船を出させたが、あれは囮に過ぎなかった。

その間にザジは島にある、別に配置されている港から、自分の軍艦と海賊船の出航準備を整え、迎撃へと向かったのだった。

「おかげで相手の一隻は虫の息。それにもう一隻は人質を助けるので精一杯だ。どうだ?船長さんよー!」

ザジはもう一杯酒をあおった。

「さて、とりあえず目のまえの死にかけの船を落とそうか」

そういってザジは左手を高く上へあげた。

「前方の大砲を使い、やつらを落とせ!」

その轟音とともに何発も何発もトムの船へと砲弾を浴びせた。

島影から出てトムの船との距離が二キロを切ったころには、トムの船は沈みかけていくところだった。

「ハハハ!愉快愉快!」

ザジは大きく笑い、ふんぞり返った。

「これで俺は、シンバ海賊団の幹部に昇進……。いや、もしかしたらシンバ様の右腕にもなれるかも……!」

もう俺に逆らえる者は誰もいない。そう思っていた時だった。


ドーン


どこからともなく、謎の砲撃音が響いた。


ドーン


また一発、どこからかは分からない。



「なんだこの音は?島の向こうからか?」

ザジは耳をすまし、双眼鏡を手に取った。

「ザジ船長!」

部下の一人が軍艦の後ろを指差す。

「何が起こっているんだ!?」

ザジは軍艦の後方へと移動する。見ると援護のために用意していた船が攻撃態勢に入っている。

「どうした!?」

「我々が出た港から、新たに三隻の船が出ているのですが、様子が……」

「なにぃ!?三隻も!?……そんなの用意した覚えが……」

そう言って、双眼鏡を構えるとそこには予想もしていないメンツが映っていた。

「……………………」

「どうしました船長?」

「やつらだ……」

ザジの顔は冷や汗でいっぱいになった。

その三隻には、船長、ケネディ小隊長、そして捕まえたはずのアルテ国海軍がそれぞれ船に構えていたのだ。

「悪いなザジ。お前たちの船を勝手に拝借させてもらった」

船長はそう言いながらケネディ小隊長に合図を送った。

「なぜだ……なぜこの短時間で準備ができた……!?……くそ!」

ザジは大きく声をあげる。

「左回頭!やつらに大砲をお見舞いしてくれる!」

軍艦が回頭を始める。

ケネディ小隊長は、乗っている二人に大きな声で話しかけた。

「二人とも!昨日抜け駆けした事への罪滅ぼしだ!船突っ込ませるぞ!気合見せろ!」

「了解!」

「へい!離脱の合図までしっかりこいつを操りやすぜ!」

ほどなくして三人を乗せた船は援護の敵船へと衝突した。

轟音が響き、船がひしゃげる。

ものすごい衝撃に敵の船は傾き、乗組員は海へ放り出された。

これにより、二対一……。敵軍艦への道は開かれた。


「海軍さん」

船長は海軍の船に話しかけた。

「俺の部下が道を開けたんだ。しっかり頼むよ」

それを聞いた海軍の船長は静かに返事をする。

「海賊に命令される義理はない。……だが、今回はお前に従おう」

そういうと海軍は大きく右に舵を取り、相手の後ろに回り込んだ。

「させるか……!」

ザジはさらに回頭し、海軍の方に三十の大砲を向ける。

しかし、海軍の船も動いている。回頭しながら放つ砲撃は、なかなか当たらない。

「大砲準備!」

ザジがあれこれやっているうちに、船長の船も攻撃態勢に入っていた。

そして、海軍の船がザジの船に隠れたその瞬間――


いくら軍艦といえども、至近距離からの砲撃を食らえば、大破を免れることはできない。

五分ほど続いた砲撃の後、軍艦は轟音をあげながら海の藻屑と消えていった――。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ