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姫と海賊  作者: ベイリー
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姫と海賊

 夜の海に月の光がキラキラと輝いている。それを横切りながら、一隻の大型船が静かに、闇に溶け込むかのように航海している。

 遠目からは全容を確認できないが、その時チラリと月の光の前に姿を現した。大きな船には大砲が幾十も積まれており、旗は黒くドクロを浮かばせている。――海賊船である。


「船長。大砲の準備ができやした」

部下の一人が背の大きな男――船長に声をかける。

「うむ。」

船長はコツコツと甲板を歩き、月を背にした。その目線は海から最も近い白い城壁を見つめている。

「……撃て」

船長の掛け声に続き、部下が声をあげる。

「撃てーー!!」

声がこだまし、少しの沈黙が広がる。次の瞬間、大砲の鳴る音が空気を切るように響き渡った。

火薬の匂いが辺りに立ち込め、船がゴゴゴとうねる。しかし、船長は動じない。


 ゴゥンという音とともに、城壁に爆発が起こる。

だが、壁は健在だ。

「あの塔の根元に砲火を集中させよ」

見ると、さきほどの砲火より少し離れた塔を指差している。

「塔?あんなところめちゃくちゃ堅そうじゃあないっすか」

「お前の目は節穴か?キロック」

そういうと船長は手を後ろに回した。

「あそこだけ石の目がない。おそらく修復中か何かだろう。どのみち、弱点に変わりない」

キロックは指された方向をよく見てみたが、暗すぎてよく分からない。

だが、船長がいうのであればそうなのだろう。

「了解しやした。」

キロックは手をあげ、先ほど指差していた方向に振り下ろす。

「砲火、狙い変更!要確認!……撃てーー!」

再び ドーンという音が鳴り響く。少し時間をおいて壁に爆発が起きる。

集中砲火を浴びたその塔は、いとも簡単に崩れ去ってしまった。

「突入。空けた穴に船をつけろ」

船長はきびきびと命令を出す。船長は一歩も動じないが、船は手足のように動いていた。


 海賊船は塔の穴へ突入を敢行する。

「全員、反撃に注意!……迎撃用意!」

キロックは再び声を上げる。

本当の勝負はここからだ。


 侵入口へ突入するまでの間。

この間は、皆が全神経を、嫌でも集中してしまう瞬間である。

全速力で突入口に向かうため船からの反撃はおろそかになるからだ。つまり船が城壁に近づくほど、こちらの大砲は城壁の上に届かず、また相手からは恰好の的となるのだ。そんなチャンスを黙って見ている者はいない。


しかし、その日は少し違っていた。

ふつうなら撃ってきてもおかしくない距離だ。しかし、反応がない。

「……どうしちゃったんでしょうね?」

「油断するなキロック。敵はどう出るかわからん。」

船長は動かなかったが、目は城壁の上をたどっていた。


突入口までおよそ半分の距離になった。依然、城からの反撃はない。


「小舟を出せ!誰か一番乗りして街の様子を見に行く者はいないか!行ったものには一番の分け前を与える!」

船長の言葉に一同は声を上げる。ウオー という歓声とともに一斉に手を上げる。

「はい!はい!はーい!」

少年のラングは元気よく手を上げる。彼はまだ十二になったばかりの男の子だった。

「ラング。お前は海賊船に乗っているだけであって海賊じゃあない。」

船長がラングの頭をわしわしとする。その言葉は語りかけるようだった。

「でも僕だって何かの役に立ちたいもん!…剣を持って戦ったりする事は出来ないけどさ…僕なりに何か恩返しがしたいんだ!」

その意気込みを聞き、船長はふぅむと考える。


その時だ。

突然水しぶきの音が響く。

夜の海は黒く不気味だったが、ただ一つ 舟のランプだけが行く先を照らしてくれる。

どうやら、船長の指示を待たず、誰かが小舟を出してしまったらしい。

「誰が勝手に行ったのだ?」

船長は聞くと、周りよりも少しがたいのいい、金髪の男が前に出る。

「申し訳ありません、船長。どうやら二人、分け前欲しさに勝手に海へ出て行ってしまった様です。

しかしこれは私の監督不足です。どうかお許しください……」

男は頭を下げ、許しを請う。船長は目をぎらつかせたが、すぐそれを隠した。

「……まあよい。……ケネディ。隊長として、彼らをこちらに連れ帰れ。同時に中の様子も見てくるのだ。……五分で帰ってこい」

ケネディ隊長は、分かりました と答えるとすぐに舟で海を進む。

目指すはランプの光だ。

「ねぇ船長。もしもさっきの二人が帰ってこなかったらどうなるの?」

ラングが心配そうな顔をする。

「大丈夫だ。ケネディが必ず連れ帰る。……だがしかし、二度と仲間の迷惑にならないよう説教が必要だな……」


 静かで雄大な海が音を立てる。ザザーンという音は恐怖を煽っているかのようだ。

乗組員は皆、塔の穴を見ながらじっと帰りを待った。


チッチッという音がどこからか聞こえる。

船長の懐中時計らしい。

「五分経った。」

「これからどうしやすかい?」

キロックは舵を握りながら聞く。

「小舟は二艘しかない。今乗っている船を用い、全員で王国への潜入を試みる。前進せよ」

「了解!」

声とともに船上が急にあわただしくなる。

「いいか。上陸目的は金品とケネディ達の安否の確認だ!

今日は様子がおかしい!全員まとまり、注意して行動せよ!」

船長の一言一言に乗組員はオー!と反応する。


船は徐々に速度を上げ、塔にぐんぐんと近づいていく。


ばたばたと準備していく乗組員達。

全員が剣を、銃を手に取り身支度を整えていく。

「上陸開始!」

海賊達は不気味な笑みを浮かばせ、けたたましい声とともに走り出す。


しかし、その表情は街に入った瞬間凍りつく。

海賊達は思わず腰を抜かした。

そこには静まり返った街並みがあるだけだった。



続きは明日の21時くらいに投稿します。

……いや、したいです(笑)

お楽しみに

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