友達
郊外にある回転寿司屋さんに到着した。時間的には混み始める前だし、注文して食べれるからシャリが温かいのが良いよね。
私は流れているのに注文するのが苦手なんだ。
前に別のお店の忙しい時間帯に行ったとき、好きなものが流れて無かったから注文したのに「回転寿司は流れてる物を食べる店です、どれも新鮮なのでそちらからどうぞ」なんて言われた。
「だから、ないんだって」なんて『傷心』の私には言えなかった。他人と喋れない、自分の殻に閉じ籠る、それが私。
そんな感じで苦手なものがどんどん増えていきます。
お店に入ると店員さんの元気な声がきこえてくる。
「しゃーせー」
何語だろう?いや、いらっしゃいませだと思うけど、それで良いのか?飲食店。
席に案内されて手を拭いていると、若い店員さんがアイリの胸をチラ見している。男性のチラ見は女子的にガン見なのです!
アイリは外出にも関わらず、ドレスキャンプのジャージのセットアップ。タイトなデザインでジップを上まで上げてるので、なかなかに目立つんだよね、チクショウ。
ボーイッシュなショートヘアーで健康的だし似合ってるんだけど┅。
「それでいいの?」って言っても「温泉に行くのに、お洒落してもしょうがない」なんてかえされるし。一応、食事に来てるんだけど┅。
まぁ、私も化粧とかしてないし、楽なのには違いないし。
因みに私の服装はショートパンツに厚手のレギンス、長めのブーツ。セーターにPコート、モコモコ手袋にマフラーです。
だって、寒いんだよ!ジャージなんて無理だって!最高気温マイナス4度だよ?
店内は暖かいけど最初に汁物を頼んでおこう。オススメは『たっぷり花咲ガニ味噌汁』
ヤバい、美味しそう。それをアイリと私の二人分頼んで、予想通り何も流れてないので注文だ!
私とアイリの食べ物の好みは似てるから、一皿を二人でわけて食べるのが私達の賢い食べ方。
唯一、私は貝類が好きでイクラが苦手、アイリはその反対。
「アリス、アリス!まずは白身だよね!黒ソイあるって!ヤイトハタ?何、これ?マニアック?」
「ハタなんてあるの?高級魚でしょ!いくら?400円?高いけど食べよう!」
お茶とガリと醤油を用意しながら、餓えた肉食獣の様な目でメニューを見る。
あまり考えすぎるとガリとお茶でお腹いっぱいになっちゃうから、気になるものをすぐに頼んで食べる。
私達の趣味はかなり渋目だから、店員さんのオススメとちょっとずれるみたい。多分、若い女性用の接客なんだろうけど、いちいち断るのが申し訳ない。
けどオススメのカニ汁は、とても美味しくて満足でした。お腹もいっぱいになってきたし混んできたから、そろそろ店を出ることにしました。もう少し食べたいけどブレーキをかける。危険回避のブレーキは、鋼の意思で踏むのです。自意識過剰女子は本当に面倒なのです。
会計は早い者勝ちで支払うのが私達のルール!今回は私が払いました。
ちなみに、次の会計はアイリが払うことになると思う、いつもの流れだと。
よし、いよいよ温泉だ!ちょっと遠くまで行っても良かったんだけど、帰りが面倒だからスーパー銭湯にしました。天然温泉だから問題なし!
アイリが自動販売機で二人分の入館料を支払う。靴箱の鍵を渡してロッカーの鍵を貰う、鍵のバーゲンセールだな。館内衣を借りるために表を確認してサイズを言う。
「SSでお願いします」
「お子様体型┅」
私は無言でアイリを叩いてやった。アイリだってMなのに、チクショウ。
今日は私の退院祝いなので、ご褒美のオイルマッサージを予約してからお風呂に向かう。
ロッカーをみつけて服を脱ぐんだけど、ジャージのアイリは脱ぐのが早い。早々に脱いだアイリは私が脱ぐのをまじまじと見ながら極悪なセリフを口走る。
「お嬢様、お忘れものです┅むね┅」
私は容赦なくアイリの胸をビンタしてやった!チチビンタアイリ!
「ゴメンよ、アリス。僕が悪かったって。機嫌なおして、お風呂上がりにフルーツ牛乳買ってあげるから」
まぁ、いつもの儀式みたいなやり取りなんだけど一応不機嫌な顔をしてみたら抱き締められた。
「本当にアリスは可愛いなぁ。その年でロリなんて反則だよ」
「それって褒めてないよね?背中洗ってあげないよ?」
お風呂セットを持って1人で先にずんずん歩いていく私を慌ててアイリが追いかけてきた。
きっと今後、何があってもアイリとは仲良くしていくと思う。アイリは私が『傷心』なのを知ってても踏み込んで来てくれる友達だから┅。
大好きだよ、アイリ!
ありがとうございます