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A-2. 銃使い、町に到着する その2

微妙なとこで切っちゃったかもしれません。長くなりそうなので分割することに。

「なんとか日暮れ前に着きましたね。ここがリーウィの町ですよ、セイジさん」

 町の入り口のアーチを(くぐ)ったセイジの第一印象は『西部劇っぽい』であった。セイジは西部劇に詳しいわけではない。ただ木造の建物とむき出しの地面の道だけでそう感じたのだ。おそらく、石材やレンガが手に入りにくいのだろう。地面は(なら)されてるので、歩きにくくはなかった。

「セイジさん。セイジさんもギルドに寄りますか? 今回のことで説明がしやすくなるので、着いて来ていただけるとありがたいんですけど」

「別にかまわない」

 そう答えて、少し早まったかもしれないとセイジは思った。ギルドとはおそらくカーラの話していた冒険者ギルドのことだろう。この世界はゲームとは違うものであると、セイジは認識している。つまり、常識が通じない可能性が高いのだ。

 結局、話を撤回せずにセイジはカーラへついて行くことにした。どの道いつかはボロが出る。それに、カーラという補助(ガイド)なしで町を歩くのは危険ではないかと思い直したのだ。

「私も用があるから、案内を頼む」

「はい」

 まぶしいと感じるような笑みを浮かべ、カーラは元気よく返事をしたのだった。


 ギルドは町の入り口からそう離れていない場所にあり、すぐに到着した。それなりに大きな建物だが人気がない。静かすぎることを不思議に思いセイジはカーラに聞いた。

「カーラ、無人のようだが」

「? 一応、職員は一人いますよ」

 そう言いカーラはギルドのドアを開けた。話がかみ合っていない。入り口から中の様子を見たカーラはセイジの言いたいことがやっとわかったようだ。

「居ないってよくわかりましたね」

「なんとなくな。人が居ない場合はどうする?」

「隣の酒場に大体居ます。呼んで来ますね」

「私も行こう」

 そうセイジは返し、カーラの後に続く。異世界の酒場というのに興味があったからだ。セイジは酒が好きだ。大好きだ。たとえ飲めなくても気分だけならば味わえる。そんなノリで、セイジは扉を開けたカーラに着いていった。

 喧噪が消えカーラとセイジに視線が集まる。酒場にいた人々はセイジとカーラを交互に見てから、顔を元の方向に戻した。消えた音が戻る。

「セイジさん、こっちです」

 カーラは特に気にすることなくセイジを促した。そして、カウンター席に移動する。

「ラゥガンさん」

 スキンヘッドの大男にカーラが話かける。

「カーラじゃねぇか、随分早く帰って来たな」

「実は——」

 カーラが今まであったことを話すにつれて、男の眉が寄っていく。少女が一人森に置いて行かれたという事実は、男にとって腹の立つことだったのだろう。

「……奴が前に所属していた町を中心に連絡しておく。おいアンタ、証があるってことは冒険者だろう、ちょいとこっち来い」

 男は立ち上がりドアを指さす。歩き出した男をセイジとカーラは追いかける。そして、先ほど訪れたギルドに入り、二人は椅子に座った。その間に男は向かいのカウンターに移動していた。

「さあ、証をかざしてくれ」

 セイジは言われるがまま台座のようなものに、右手の甲をかざした。白色の石材で作られたそれは、紋様とおぼしき溝から淡い光を放つ。

(これもゲームと同じなんだなぁ)

 証というのはギルド証と呼ばれる、セイジの右手中指に()めてある指輪のことだ。このギルド証はアイテムボックスと呼ばれる道具収納機能を持つ魔法のアイテムだ。

 台座の上に赤色の文字が浮かび上がる。セイジの生まれ育った世界の言語ではない。しかしセイジはその文字を読むことが出来た。


————————

セイジ

種族:異界種

ランク:赤

————————

直近討伐履歴:

ウィトシア熊×1

ウィトシア中兎×3

ココナ狼×12

————————


(ゲームよりもすっきりしてるなぁ。確かに町に着くまでに熊と兎と狼を倒したけど、そんな名前だったんだ)

「赤……か、いなくなった冒険者の代わりにカーラの護衛を頼めねぇかって思ったんだが」

「私はこの世界の人ではないからわからないのだが、色に何か意味があるのか?」

「赤が一番弱くて、橙、黄、緑、青、藍、紫の順に強いってのは常識だぞって——この世界?」

 男はカウンター越しにセイジに詰め寄ろうとして、思い直したのか台座を見下ろした。見た方が早いと思ったのだろう。男が台座に表示されている内容を口に出す。どうやら、表示されている文字はこの世界の言葉のようだ。

「異界種……、オイオイ、アンタ本当に『異界種』なのかよ」

「ああ、そうだが。異界種を知っているのか?」

 設定に妙な拘りがあったのか、セイジの遊んでいたゲーム——ホワイトドラゴンズ——ではプレイヤーのことを異界種と呼んでいた。NPCに『プレイヤー』と呼ばせたくなかったのではないかと、セイジは思っている。

(ゲームの世界が現実になったとは思わないんだけど、なんでこんなに似てるんだろうなぁ)

 セイジはなぜかこの世界がゲームの世界と同一ではないという確信を持っていた。そのため、ゲームと一致するものがあることに疑問を感じていた。

「異界種って言やぁ三十年ほど前に突然現れて、半年もしないうちに消えちまった奴らのことだ」

「三十年……」

 男の言ったその年月に、セイジは何か心揺さぶられるものがあった。セイジは軽く首を振る。そんなことよりも(・・・・・・・・)今はこの世界のことを知る必要がある。そう考えた。

「……すまないが、私の認識と常識がどこまであっているのか確認してもいいだろうか」

 男は黙ってうなずいた。


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