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B-7. 銃使いとクエスト その1

 ある日、セイジがログインするとギルドの職員に呼び止められた。また依頼だろうかとセイジは足を止める。セイジはあれからもちょくちょく依頼を受けていた。理由は魔種を倒さなかったからだそうだ。どうやら人殺し(・・・)をするとギルド証の色が変化するらしい。色が変わらなかったことから、セイジが蜥蜴人の命を奪わなかったことが分かったそうだ。そのため、個体識別まではできないが蜥蜴人とはすっかり顔見知りだ。

「すみません。緊急の依頼ですがいいでしょうか?」

 職員の男性に了承しセイジは部屋に案内される。ドアを開けると二人の若者がいた。男の方はプレイヤーで、女の方はこの世界の人(NPC)だとセイジは判断する。職員が話始める。その女性は化け物に襲われたらしい。そのとき双子の姉が彼女を逃がしてくれたらしい。依頼は双子の姉の救出であることをセイジともう一人のプレイヤーに伝えられた。

 特に断ることもなく、依頼主を含めた三人は化け物に襲われたという場所へ移動する。アリュゼアの南にある緑の森。物理無効の敵と魔法無効の敵が混在する地だ。早足で移動する中、もう一人のプレイヤーがセイジに小声で話しかける。

「いやぁ緊急クエストが来るとはきついね−。このクエスト、失敗報告ばかりなんだよね」

 セイジは思わず彼の方を見た。困ったように笑うプレイヤーは攻略まとめ見ないタイプかとセイジに言う。セイジはゲームとしてのホワイトドラゴンズ(このゲーム)に興味がないため知らないが、攻略情報をまとめているものがゲーム内で閲覧可能だ。

 なぜゲーム内に限定されているのかというと、ネタバレ防止措置としてゲーム外では覚えていないためだ。現実とゲームを混同して犯罪が起きるのを防ぐためという名目で、過激な表現のあるゲームは現実に記憶の持ち出しができないようになっている。

 彼はセイジにクエストの概略を教えた。双子の姉あるいは妹を助けるというもので、失敗するとどちらか、または両方が死ぬというものだ。なぜか助ける対象に攻撃され失敗するケースがいくつもあり、どうすればクリアなのかが分からず仕舞いらしい。

「クエスト発生条件が死亡回数二百回だから、発生させた人自体が少ないんだよね。あ、俺コータね」

 今更ながらの自己紹介に、セイジもとりあえず名乗った。そうこうしているうちに、化け物に襲われた場所についたらしい。女性は足を止め二人に告げ、周辺を探すことにした。女性の護衛もかねているため、手分けはしない。

 暫く歩いていると開けた場所にたどり着いた。そこには黒い人型の揺らめく影たちに囲まれた女性がいた。

「姉さん!」

「セイジ、助けよう」

 コータがそう言うや飛び出し影一体に斬りかかる。コータのジョブは重剣士、盾戦士の壁特化だ。回避を苦手とする代わりに、耐久と火力あ高い。どうやら影は物理耐性が低いタイプのようで、あっけなく霧散した。セイジも投げナイフでコータのサポートに回る。十秒足らずで影は全て倒しきった。

「姉さん、大丈夫?」

「ええ、なんとかなったわ。ありがとう」

 女性が駆け寄ると、彼女そっくりの女性が礼を言う。それを見てセイジは首を傾げた。

「双子、だったな」

「はい、そうですよ」

 その答えにセイジは黙り込んだ。依頼主である女性と、助けた女性を見比べる。

(えっと、なんで助けた方はヒトじゃないのかな? 双子で片方はヒト、もう片方はヒトじゃないのって変だよね)

 考え込むセイジを三人は怪訝な顔で眺める。すると、セイジははっとした表情を浮かべ、突然走り出した。

「え? ちょっと!」

「依頼主を頼む」

 コータが引き留めようとするがするりと抜け、セイジはそれだけ言い放った。

 セイジには気配を読むことができなかった。そのため、ある方法で索敵を行うよう練習した。大気中の魔力を操作、把握をして、覚えた敵の魔力を当てるというものだ。最近では形になってきたそれを試した結果、セイジは少し離れた場所にヒトがいることに気づけたのだ。

 森を進んだ先には、双子の姉らしき人物が先ほどの影と同じモノと戦っていた。セイジは女性に当たらないように、やや離れた影にナイフを投げる。驚いた表情を浮かべる女性に、依頼で救援に来たとだけ伝える。そして、セイジは敵を倒すことに集中した。


「助かったわ。数が多すぎて限界が近かったの。でも、なんでこんな所に?」

 荒い息を整えつつ、女性は崩れるように座り込んだ。セイジがここへ来たことに疑問を持つ女性。セイジは彼女へ助けに来た理由を話した。双子の妹が依頼をし、もう一人の冒険者と近くまで来ていること。彼女はすぐにでも合流したいようだが、体が言うことを聞かないようだ。まだ歩けそうになかった。

「あっいた!」

 数分後、セイジたちが動くよりも、コータが見つける方が早かった。セイジは目を見開いた。コータの後ろには依頼した女性一人しかいない。セイジは思わずコータに詰め寄った。

「はぐれたのか?」

「え?」

 コータが後ろを向き、そして今度はセイジのすぐ横にいる女性を見た。先ほどセイジがヒトではないと思った『救出対象と同じ姿をしたもの』がそこにはいなかった。しかし、セイジが言いたいのはその事ではない。

 セイジは躊躇うことなく、依頼をした女性へ向かってナイフを投げた。眉間に刺さるナイフ。目をまん丸にするコータ。刺さった箇所から吹き出す影——。そう、今度は依頼した女性がヒトではなかった。

 状況について行けないコータと女性。二人を気にかけず、セイジは大気中の魔力を操り周囲を探った。銃使いであるセイジの魔力は低く、消耗によりふらつきかける。それでもセイジは魔力による探索を止め名い。しかし彼女は近くにはいないのか、セイジは見つけることができなかった。

どうでもいい情報。

救出対象の女性の方が、セイジより強い。

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