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A-1. 銃使い、森に発生する その3

分け方が下手なせいでその1や2と比べて短いです。

 その後も雑談を続けつつ二人は森を進む。

「ん? ――カーラ」

「セイジさん、どうしました?」

 セイジがカーラを肩を掴み足を止めさせる。振り返った彼女へ黙っているよう伝えるため、セイジは人差し指を口に当てた。

 それは、彼女と会った時のような大きな音を発しているわけではない。

(足音なしで害意あり。獣、だろうなぁ、狩りとかしそうなやつ)

 ホワイトドラゴンズはグラフィックを犠牲にしておきながらも、やたら無駄(・・)にリアル志向な体感型ゲームであった。ごく一部の敵を除き縄張りという概念があり、身を隠し襲いかかるものがほとんどだった。気配が読めなければ確定で奇襲される、という人を選ぶゲームだったのだ。その洗礼を受けたのはセイジも例外ではなく、こうして害意に気づく能力は自然と鍛えられていったのだ。

 セイジはとりわけ嫌な予感がした方へ投げナイフを放つ。発砲音のある銃は奇襲向きではない。ギャンという呻き声と共に四、五体の獣が姿を現す。すらりとした体。狼だ。

 セイジは現れた狼に向かってナイフを投じる。一体、二体、三体と狼は倒れていく。カーラは息を飲んだ。全て一撃で仕留めたようで、倒れた獣はもうピクリとも動かない。分が悪いと感じたのか、残りの狼の姿はすでになかった。

「セイジさん」

「ああ、もう終わった」

「お肉いっぱいですね。剥ぐのは手伝います」

「……肉?」

(え、狼って食べられるの?)

 セイジは常識の差異に、どう説明すれば良いかわからず目をそらしたのだった。そして――。

「意外でした、獣を(さば)いたことがないなんて」

「人任せにしていてな、一度もやったことがない」

 ゲームではステーキ肉のような食べやすいサイズに加工されたものが手に入る(ドロップする)ようになっていた。そのため、現実で肉を捌く機会を持たなかったセイジは、血抜きや毛皮を剥ぐなどをやったことがないのだ。ちなみにゲームではセイジが始めたころ生産という概念がなく、肉はただの換金アイテムだった。

 今、セイジたちは野営の準備をしている。薪になりそうな枝を集めて戻ってきたセイジはカーラの真向かいに座った。カーラが慣れた手つきで火を起こし、肉と香草を串に刺し焼き始める。まだ暗くはなっていないが、森は平地と違い日が傾けばすぐに暗くなってしまうだろう。

「調理具は荷物と一緒に取られてしまったので、今回はこれだけですね」

 セイジは次々に作られていく串焼きを眺める。セイジからすれば二人分以上あるように感じたが口には出さなかった。今日だけではなく明日も歩くのだ。運動量が多ければその分食べる必要もあるだろうと思ってのことだ。

「最低限の水しかないんですよね。道をずらして川によった方がいいかもしれません」

「水なら出せるが」

「えっと、セイジさんって私よりも身軽ですよね。もしかしてそういう道具を持ってるとかですか?」

「いや、小規模の魔法を発動する手段がある」

 そうセイジは口にし、左の太ももにあるホルスターをぽんと叩いた。『魔法銃(まほうじゅう)青燕(せいえん)』と呼ばれる威力の低い攻撃魔法が使える武器だ。セイジのゲームでの職業は銃使いである。サブ職業というものもありそちらは格闘家なのだが、メイン職業が銃使いの時限定で装備できる武器が今セイジの触れている青燕だ。セイジは青燕を抜き、呪文を唱えた。

「ディ・ゼノン・ミュ・ティス・シュナ、『(みず)下陽(かよう)水球(すいきゅう)』」

 青燕が光を発し、そこからサッカーボール大の水の塊が飛び出し、宙に浮かんだ。

「魔法士が魔法を使うところって、初めて見ます。――便利ですね」

「私は本職ではないがな」

「ちょっと残念ですね。鍋があれば汁物も作れたのですけど」

「それは残念だ」

 セイジが出した水はカーラの水筒に追加し、余ったものはそのまま横に捨てたのだった。

 夜も更け、一息ついた中セイジは考える。

(そういえば(もよお)したときって、どうしたらいいんだろう?)

 セイジのプレイヤー、つまり中の人は女だった。セイジには、いきなり男の体になってしまったという問題が存在しているのだ。今、セイジの頭の中には小便小僧の像の姿があった。


唐突な下ネタ。

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