92.夜を止めさせない
前回に続く思考回
ティアリスが押さえていた腕の傷口を布で拭って見せてくれる。
そこに慎重に解毒ポーションをかける。
治癒ポーション程見た目では効果がわからないので効いているかわからない。
『報告。
患部付近の毒素の除去を確認』
(はい?
わかるの?)
『オフコース』
(……。
これで治癒ポーションを使っても傷口が広がることはなくなったか)
「ちょっと治癒ポーションを使ってみるよ」
シュウが周囲に確認を取ると、ティアリスとビアンゼが頷いた。
三人の目で傷口を凝視する。
そして治癒ポーションを取り出して、解毒ポーションをかけた傷口に垂らしてみる。
スーッと傷口が消えていく。
祈る想いで傷を見つめる。
消えていった傷が……。
逆再生するように赤い線を引き傷が蘇る。
が、治癒ポーションをかける前よりも傷が大きくなっているようには見えない。
『毒の効果は治癒された傷の拡大、さらに出血量の増加と思われます』
アルテの報告を聞き、出血も吹き出すこともなく少し滲んでいるぐらいだ。
「やっぱり毒と呪いの二重の状態異常だったみたいだ。
効果がわかっているのは呪いが治癒された傷を戻すこと、毒が傷口を広げることとその時の出血を増やすこと。かな」
「きっと毒だから徐々に生命力も奪っていくはずよ」
「たしかに」
シュウの推察(アルテの報告)にティアリスが補足する。
「まるでこの呪いと一緒に使われることが前提の毒ね」
ビアンゼが呪いと毒の相関関係について考え込むように呟く。
「よし、とりあえず出血と生命力の低下を抑えるためにまずは解毒を優先しよう。
呪いは聖水をどうするか……」
『報告。
聖水の作成法を提示』
(は?)
『現在所持している錬金術の道具・素材によって作成可能』
(はい?)
『……』
(聖水って作れるの?)
『肯定』
(神様の祝福は?)
『祝福による作成法と異なる作成法には不要』
(あ、作り方が一つじゃないってことね)
『肯定。
代わりにいくつか薬草が必要』
(なるほど。
錬金の道具は昨日使って、部屋に置いたままだな)
「ティアとリンはここで解毒ポーションを使って解毒を進めてくれるかな」
「あなたはどうするの?」
シュウが指示をするとティアリスがシュウの行動予定を聞いてくる。
「僕は……。
聖水を作る」
「「は?」」
ティアリスとビアンゼの驚く声が重なる。
(僕も同じだったけど、そうなるよね)
数秒前の自分と二人の反応が同じで心の中で笑ってしまう。
(えーっと)
「ランブルさんに聖水と似た効果のある薬を教わっていたから試そうと思うんだ。
それには部屋にある器具を……」
シュウが錬金術の器具を置きっぱなしにしている自分の部屋の方へ視線を向けた時、
「「!?」」
シュウとビアンゼがそれぞれ自分の部屋の方に意識を向ける。
「ビアンゼさん……!」
「ああ……。
またお客様が来たようね……」
二階と一階の奥に突然気配が発生する。
気配察知のスキルで宿内を警戒していた二人はそのことに同時に気付いた。
「シュウ?ビアンゼさん?」
シュウとビアンゼの様子が変わったことにどうしたのかと疑問を投げるティアリス。
彼女はシュウやビアンゼほど気配察知ができなかった。
「ティアとリンはさっきの通りここでクランの解毒を。
ポーションはここに置いて行くから」
魔法鞄からありったけの解毒ポーションと下級治癒ポーションをテーブルに出していく。
「リームもここに残ってなさい。
ティアリスちゃん、リームをお願い」
「わ、わかりました」
ビアンゼからリームを託されて少し動揺するティアリス。
「僕は錬金術の器具もあるので二階へ」
「私は私たちの部屋へ。
一人で大丈夫かい?」
シュウとビアンゼが行く先の打ち合わせをする。
「少しでも早く薬を作らなきゃいけないのと安全の確保をするには二手に分かれた方がいいと思います。
けど、無理はしない方向で。
武器に毒が仕込まれているかもしれないので傷を受けないように」
「無理言ってくれるわね。
でも、わかったわ。
最初に来たレベルの相手ならまだなんとかなると思う」
「ティアリス、リン、リームちゃんもここに敵が来るかもしれないから注意して。
何かあれば大声で呼んで」
シュウの言葉にティアリスとリームが頷く。
「では、行きましょう」
シュウとビアンゼが同時に駆けだした。
今回短くなってしまいました
すみません
次話の話を食い込ませるか悩んだのですがキリがいい所で切ることにしました
次回頑張ります
がんばーれがんばーれ未来の私
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
それではまた~




