84.魔術師の装備
まだまだ続くよどこまでも
報告回はまだまだ続く
僕達の冒険はこれからだ
「え、私ですか?」
声をかけられるとは思わってなかったティアリスは驚いてしまった。
「ああ、術師は重い装備を嫌がるが、そこを突かれると一番致命的になる。
しっかり備えはしなきゃいかん。
ほれ、こいつだ」
小さくジャラと言う金属質の音をさせる防具をティアリスに差し出す。
「これは?」
「鎖帷子だ。
名前ぐらいは知っているだろう。
それほど重くもなく、対刃性に優れる。
ちょっと特殊な加工をしとるから、音も立てづらいモンになっとる。
ローブの下にでも着れるだろう」
「ありがとうございます。
私もまだまだだってことがここの所身に染みていますので、助かります」
「え?
ティアは魔術も使えるし、すごく強いじゃないか!
でも、身を護る装備を充実させるのは賛成」
能天気にティアが強いと主張するシュウだったが、
(身に染みさせたのはあなたよ)
(身に染みさせたのは小僧だろうな)
と言う、二人の視線には気づかなかった。
「あの、お代は?」
「代金か……」
また顎を擦りながら考えるシモン。
「まあ、この小僧の鉱石を増やすか。
小僧そんくらいできるだろ?」
「鉱石掘りはトレーニングにもなるので大丈夫です」
「で、でも……」
「ほれ、小僧もこう言っておる。
それが嬢ちゃんが譲れないなら小僧を手伝ってやるなり、自分や周りを護る術を得る努力をしてみるのもよかろう」
「自分や周りを護る術……」
「嬢ちゃん、ゆっくり考えるこった」
シモンの言葉の意味がシュウにはわからないが、ティアリスには伝わったようだ。
「はい。
ありがとうございます。
あの、差し出がましいのですが魔術師用の杖はありますか?」
「杖か……。
うちは元々金属加工が主だからな……。
上級素材の金属なら魔力の増幅能力が高い杖もあるにはあるが、希少な金属で高い。
木製の杖を加工や強化は可能だが……。
嬢ちゃんの杖だともう嬢ちゃんの能力についていけてなさそうだな」
「そんなことまでわかるんですか?」
今日何度同じ言葉を発したかわからないが、シュウは口にしてしまう。
「これがわからなくて、鍛冶屋ができるか。
わしの工房は持ち主に合った武器や防具を作るのが主だ」
所謂オーダーメイド。
それなりに稼げるようになった冒険者が自分専用の武具制作を依頼する。
シュウはこの時知らなかったが、シモンの工房はその筋では有名で、シモンが打った武具は王都でも自慢できる一品となる。
「嬢ちゃん。
杖の件は一旦こちらに預からせてくれ」
「え?
いいんですか?」
シモンの予想外の言葉に驚くティアリス。
「ああ。
こういう仕事柄、魔術師用の装備にも心当たりがある。
小僧は知ってるだろう?
コルの爺さんを」
シモンはティリアスに向けていた顔をシュウに向けて話を続ける。
「もちろんです。
クエストで何度かお世話になりました」
シュウはコルという名前を聞いて、魔術師の道具をを扱う魔術屋の店主を思い浮かべる。
ランブルと並んでシュウに魔術の基本を教えてくれた人だった。
「世話したの果たしてどっちだっただろうな。
まあ、ともかくあの爺さんに嬢ちゃんに合った杖の相談をしてみる」
「それなら私が直接行った方がいいのではないですか?」
「まあそうなんだが、今夜爺さんと飲む約束があるんでな。
そのついでだ。
それに、お前たちにはこの後ルーツのとこに行ってもらいたい」
「ルーツさんの所にですか?」
「ああ。
奴にもこの件の情報を当事者から入れておきたい。
あいつの所にもいろいろな筋から情報が集まるが今回は小僧以上に詳しい奴はいないだろう」
たしかにルーツの所にはシュウが行っていた間にも様々な人が出入りをしているようだった。
シュウは直接話している所を聞いたことは無かったがお手伝いさんが対応しているようだった。
「クエスト終わりのお前達は疲れているだろうが、もうひと踏ん張り頼みたい」
「わかりました。
この長剣の振り方も教えてもらってきます」
「ああ。
それがいい。
そういう訳で嬢ちゃんも杖の事は任せてくれ」
「わかりました。
それではよろしくお願いします」
「ああ、任された。
結果については小僧伝いに伝えよう」
「ありがとうございます。
シュウさんもお願いね」
「ああ。
わかったよ。
任せて」
右手をサムズアップさせて了承の意を伝える。
「じゃ、ルーツさんの所に行こうか」
「うん」
「気をつけてな。
くれぐれも無理はするんじゃないぞ」
シモンにお礼を言って工房を後にする。
シュウは長剣を腰に佩き、ティアリスの鎖帷子は預かって魔法鞄にしまった。
そして、ティアリスをルーツの家まで案内する。
「もうここに来た時とすっかり立場が逆になっちゃったわね」
「そうかな。
怖くて街の外に出てなかっただけだけどね。
でも、二人で道に迷わずに済むからいいよね」
離れていく二人の背中を見ながら、
「あいつらなんでパーティじゃねえんだ……」
シモンが首を捻りながら呟いた。
読んでてお気づきになってるかと思いますが
ここ数話はロックホーンとナイフの事を書くのに飽きて
違うことを書きつつ報告をしていく回
何人の人が付いてきてくれているのか……
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を少しでも埋めるお手伝いが出来ていれば幸いです
それではまた~
あれ?今日は大晦日?
良いお年を!




