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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
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8.空は変わらず青く、遠い

 封印の間にできた出口に入り真っ直ぐな通路を進んだ。

 迷宮が地下にあったというのが本当だったのか、通路は少し上っているようだった。

 三十分程歩いた頃に、シュウはどこまで続くのかわからない通路の先に壁が見えるのに気づいた。

 壁までさらに十五分は歩き、たどり着いたがここからどうすればと扉かスイッチがないか調べようと壁に手を当てた。

 すると、この出口ができた時と同じ岩が擦れる音と地響きを起こしながら目の前の壁が右に動いていった。

 音と振動に二、三歩後ろに下がったシュウに、正面の壁が動いたことによってできた隙間から眩しい光が射し込み、暖かい風が吹き込んできた。

 手を持ち上げ光を遮りながら壁がゆっくり開いていくのを待った。

 壁は半分程開いたところで止まり、そこからシュウは外に出た。

 まず目に入ってきたのは、青い空。

 この世界に初めてきた時も部屋の窓から空を見たが、その時は異世界だとは思ってもみなかった。

 空は元の世界と同じで青かった。

 そして、シュウが出てきたのは小高い丘で見渡すと青々とした草に覆われた草原だった。

 見回していると、丘を下った所に草が生えていない道が見えた。

 左手からずっと続いており、丁度シュウが今いる丘の麓辺りで緩くカーブして、正面に真っ直ぐになり、その先には壁に囲まれた街が見えた。

 その街の周囲に視線を向ければ、左側はずっと草原が続いており、右側には草原の向こうに森が広がるのか木々の濃いい緑が見えた。

 振り返って出口を見ると、出てきた壁は丘の中腹にある高さ二メートル半はありそうな大きな岩だった。

『今出てきた通路は魔法の力で作ったもので、この岩を戻してから塞いでしまうからね』

 頭の中にシンの声が響いてきた。これも、魔法なのだろうか。

『今回は特別で本来は試練を乗り越えないと入れない場所だったから。

 今度行く時はきちんと表から入ってね』

「表と言われても、さっきは知らない間に・・・ま、いっか・・・」

 出てきた岩の出口の隙間から、もう見えなくなっている封印の間、そして、そこにいると思われる優しい微笑を浮かべているであろうシンに向かって、

「本当にありがとうございました。

 では、行ってきます」

 と、頭を下げた。

『あはは。そう何度も頭を下げなくても。

 行ってらっしゃい。頑張って』

 封印の間でも今も姿が見えないのにシンにはシュウが見えているのか楽しそうな声だった。

 頭を上げ、丘を下りようと踵を返した。

 歩き出した背後で岩が閉じていく音と地響きが聞こえ始めた。

『・・・ほんとおもしろい・・・』

 数歩進んだところで、微かにシンの呟きが聞こえたような気がして振り返ったが、丁度岩が閉じて通路が見えなくなったところだった。

 視線を丘の下へ戻し、

「よ~し、とりあえずあの街へ向かってみよう!

 あの街で情報を集めてみて、帰る方法がわかればいいけど。

 あんな壁があるから街の中は安全かな~

 鍛えなくても済むかもな。

 ま、ぼちぼち頑張るか~」

 と、これからの目的を独り言で確認し、

(兄さん、心配かけてごめん。

 なるべく急いで帰るから。

 とりあえず、無事いきてるから)

 心の中で元の世界に帰還する決意を固め、街に続く道に向け地を強く蹴って進んだ。

 空は同じようで元の空は遠かった。

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