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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第二章 冒険者と仲間
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65.噂達

 ティアリスの去る背中を、また暫く避けられて会えなくなるのかなと思いながら見送ってしまった。

 自分がいるとシュウ達に迷惑がかかるからと気遣ってくれた言葉が止めるのを躊躇わせた。

(また何かあれば頼ってくれたらいいけど、あの性格だとそうしてくれない気がするなぁ)

 サーシャにティアリスに何かあれば教えてくれるように頼んでギルドを後にした。

 帰りにルーツの家に寄って、ティアリスの名前は伏せてクエスト中の出来事を話しておいた。

 クランとリンは頑張って修行していたようだ。

 宿に帰るとどっと疲れが押し寄せ、夕食後はすぐに眠りについた。


 クランとリンと一緒に次の日もルーツの家に行く。

 二人は今日もここで修業するつもりのようだ。

 クランは剣気と共に剣術や盾の扱いを基本から教えてもらっているようだ。

 リンも治癒術や、その他にも自衛の為の身のこなしを教わっているそうだ。

 早くパーティでクエストに行きたい。

 眺めているとルーツにギルドで仲間を探してこいと放り出されてしまった……。

 ひどい。


 そして、今ギルドに到着。

 ギルドの中でさようならと別れた背中を探す。

 いないとわかってる背中を……。


 いた。

 普通に大きな荷物を持ったティアリスがそこにいた。

「あ。おはよう」

「あ、うん。

 おはよう」

 さようならと言われ別れた感傷に浸っていた気持ちがついてこない。

 ティアリスは平然とした顔で挨拶をしてきた。

「どうしたの?」

「い、いや。

 昨日ティアリスさんからさようならって言われてまた暫く会えないんだと思ってたから……」

「ああ。

 そうね……」

 無表情に近い顔でシュウに質問をしてきたティアリスだが、シュウの言葉に少し顔を伏せる。

「お待たせしました」

 そこに割って入る声があった。

「あら?

 シュウさん。

 おはようございます」

「おはようございます。

 サーシャさん」

 書類を持ったサーシャがこちらに小走りで近づいて来ていた。

「頼まれていた件を確認してきましたけど……。

 ここでお話しますか?」

 ティアリスはサーシャに何か頼みごとをしていたようだった。

 ティアリスがチラッとシュウを見てから、

「個室で」

 と、小さく答えた。

「じゃあ、こちらに」

 サーシャがティアリスを個室に連れていく。

 昨日持っていなかった大きな荷物を持ったティアリスがサーシャについて歩き出した。

「じゃ、僕はクエストボードでも……。

 ティアリスさん、またね」

 その言葉にティアリスが足を止め、振り向く。

「……」

 何かを言おうと口を開いた時に、

「あ、シュウさんもお時間があれば、お付き合いできますか?

 ちょっとお願いしたいことができると思いますので」

「へ?

 僕にですか?」

 サーシャの言葉に自分を指差してハテナを浮かべる。

「そうです。

 ティアリスさんにも中でご説明しますので、いいですね?」

 ティアリスは少し考えた素振りをして、コクリと頷いた。

「では、お二人ともこちらに」

 サーシャが昨日と同じ個室に向かって歩き、ティアリスが続く。

 シュウも慌ててついて行った。


「ではまず、ティアリスさんはシュウさんに事情を話されましたか?」

 個室に入って、サーシャが用意してくれた席に着くとサーシャがティアリスに話しかけた。

 それに首を横に振って応えるティアリス。

「あ、そうですか……。

 声かけておいてなんですが、シュウさんに席を外してもらいますか?」

 サーシャは申し訳なさそうにシュウを見てから、ティアリスに確認する。

「……」

 ティアリスは横に座るシュウの顔を見上げながら考えている。

「……サーシャさんの話しぶりから僕は関係ないんだろうけど、何か困ってることとかあるなら聞かせてもらえるかな?

 もちろん、聞かれたくないなら出て行くけど」

 見上げてくるティアリスにそう答えるシュウ。

 ティアリスは顔を俯け、少し考えた後で頷いた。

「いいのね?

 ああ、よかった。

 二人で一緒にいたから話されているかと思っちゃってたわ……」

 サーシャがホッと安心したのか、いつもの丁寧な口調が少し砕けたものになっている。

 普段はこういう口調なのだろう。

「で、何があったんですか?」

 シュウが事情の説明を促すと、

「ああ、ごめんなさい」

 サーシャが謝りながらティアリスに目を向ける。

 ティアリスはその視線に「説明はしますか?」と込められているのを読み取る。

 サーシャに頷いてから、シュウを見上げる。

「今日、宿から追い出されてしまったの」

「え?」

 ティアリスの言葉に再度ハテナを浮かべるシュウだった。


 ティアリスの少ない言葉とサーシャの補足による内容をまとめると、

・朝起きて二階の部屋から階下に降りると宿の店主が待ち構えていた。

・店主がティアリスが参加するパーティに不幸が襲い掛かり、冒険者の間で死神と呼ばれていることを聞いたらしい。

・そして、そんな不気味な冒険者を宿に泊めておけないので出て行ってくれと言ってきた。

・実は今日が初めてではなく、今まで何度か同じようなことがあって宿を追い出されていた。

 と言う事のようだ。

 今朝の件は、昨日のパーティが原因で間違いないだろうが、今までにあったことは確証がもてない。

 けど、同じような手口のようなので同じと見ていいのかなと考える。

「今までは追い出されても別の宿を探していたのだけど……」

「この街もそれなりに宿がありますが、噂が広まっているのか先に手が回っているのか宿泊を断られてしまったようで、宿の斡旋を依頼されたのですよ」

 安心できるレベルの宿をですが。と、小さく付け足された。

「そして、依頼されて宿を探してきたのですが」

 そこまで話してから、サーシャはティアリスを見つつ一拍置いて続ける。

「断られたと聞いた宿を除いていくと一軒しか……」

「一軒ですか?」

 サーシャの報告に驚いて声が出てしまったシュウ。

「はい。

 安すぎて女性であるティアリスさんの安全が保証できない宿、伺った予算を超える宿代が高い高級な宿、そもそも入ることのできない貴族区の宿を除くと……」

 なるほど……。

 条件が重なっていくと残りが一軒となってしまったのか。

「その一軒は……?」

 ティアリスがサーシャに尋ねる。

「ええ、たぶんですがティアリスさんの噂を聞いても大丈夫だと思います。

 ギルドからの信頼も厚い宿ですので。

 ですが、こちらはこちらで……」

 そこまで言ったところで、サーシャはチラッとシュウを見て目をティアリスに戻す。

「何か問題のある所なんですか?」

 シュウがティアリスに代わって聞くと、

「いえ、ギルドとして問題のない十分信頼のおける店主の宿です。

 ですが……」

 そこでサーシャが言い淀む。

「一体どこなんです?」

 気になるシュウが先を促す。

「ええっと、宿の名前は『名色(めいしょく)のいなか亭』です」

 どこかで聞いたことのある名前だな……?

「あれ?

 それって……」

「シュウさんにご紹介した宿です」

「あ、やっぱり?」

 聞き覚えのある宿だとは思っていた。

 だが、紹介された段階ではこの世界の字が読めず、場所と目印で宿を探し、最終的には宿の娘であるリームに連れられて行ったので、それからは宿名を意識せずに場所を覚えてしまっていた。

「何か紹介し辛いことがあるんですか?」

 シュウはサーシャが言い淀む理由が気になった。

「あっ」

 しかし、シュウは、

・シュウという知り合いがいる宿

・シュウに頼む事があるかもしれないという言葉

「僕が理由ですか……?」

 自分に原因があるのではという結論に至ったのだが、

「あ、いえ違います」

 即、サーシャに否定された。

「泊まられているシュウさんはあまり耳にされませんか?」

「何をですか?」

「いなか亭の噂を」

「いえ、全く」

「そうですか……。

 では、いなか亭で他のお客様を見られたことは……?」

「ええっと、僕の紹介で連れて行ったパーティの二人を除いてですか?」

「そのお二人は除いてです」

 今までの宿の様子を思い浮かべる。

「……見たことないですね」

「やはりですか……」

「やはりとは?」

「『名色のいなか亭』にもティアリスさんのように事実とは異なる噂が流れてまして、お客さんが寄り付かないようにされている疑いがあるのですよ」

 個室で誰にも聞かれていないはずだが、サーシャは身を乗り出して小さな声で告げてきた。

「こっちも噂ですか……」

「そうです」

「一体どんな?」

「あくまで噂ですが」

・自殺した男性店主の幽霊が出る。

・食事に毒が入っていたことがある。

・女性店員が夜誘ってくる。

・窓から怪しい光が見える

 といった噂が聞かれるらしい。

(ん?

 他のは知らないけど最後のは……

 原因僕かもしれない……)

 夜になって、部屋で魔術の練習で『ライト』の魔術を使っていたりする。

(今度からカーテン付けて光が漏れないようにしよう……)

「何か気になる噂はありましたか?」

 サーシャが考え込んだ様子のシュウに尋ねる。

「イエ、ナニモナイデス」

 冷や汗を流しながら片言で答えるシュウだった。

「そうですか?」

 ここまで口数少なく話を聞いていたティアリスも不思議そうに見上げてくる。

(そんな顔で見ないで……!)

 心の中で叫びながら顔を平静に保つ。


「そういえば、最初に僕にお願いするかもしれないって言うのは」

 個室に入る前にシュウに同席を頼むことになった言葉だ。

「はい。

 シュウさんにティアリスさんを宿まで案内と宿で事情を説明する手伝いをお願いできたらと思いまして」

「それは、僕は大丈夫ですけど。

 ティアリスさんはそれでいいの?」

 宿に案内するのは問題ない。

 問題があるとすれば、噂の話をきいてティアリスがそれでも泊まることを選ぶかどうかだった。

「……問題ありません。

 お願いします」

 少し考える素振りをしたものの、ティアリスは宿に案内することを受け入れた。

「私が行くことで迷惑にならなければ……」

 ここでも自分が迷惑をかけるのではと考えるティアリス。

「大丈夫ですよ。

 宿の人達はいい人ですし、噂はほぼ噂で僕は幽霊なんか見たこともないですから」

 シュウがティアリスを安心させるように笑顔で応える。

「わかった……。

 ……ほぼ?」

 ティアリスの言葉に全力で明後日の方を向くシュウだった。

本編で語られなかった裏話

シュウとティアリスがオーガと戦っていたシーンで

シュウはティアリスの治癒にポーションしか使用していません。

今までの話でシュウは魔術書によって「ヒール」が使えるようになっており、

実際にクランに使用しています。

これは、治癒術は他の魔術に比べ集中と冷静さが必要となるからで、

駆けつけるまでの疾走とオーガとの戦闘中やその後も疲労や魔力の消費でまだ未熟な状態の治癒術の使用を避けたのでした。

ただの焦りで自分が使えることを忘れていた。と言う事はない……ハズです。

ティアリスが自分で使用しなかったのはただ単純に魔力が足りなかったからです。



また、こんな風に考えてたけど尺や語るところが無かった話を書けたらなってところで、

ではまた~。

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