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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第二章 冒険者と仲間
61/303

58.空白地帯

今話もかなりなタイトル詐欺になった気がします。

王道?冒険?

ちょっと辞書買ってきます。

 シュウ


 なぜかオーガがゴブリンを止めてくれたので、弓の二射目は来ないようだった。

 だが、逃げていったゴブリンが場所を移して不意打ちをしてくるかもしれないので注意するに越したことはない。

『提案。

 ティアリスを拘束している魔術との接触』

 魔術書の声が響く。

(これ魔術なのか?)

『告。

 足を拘束するような植物の自然発生は不自然。

 再考を推奨』

 すごい馬鹿にされた気がする……。

(これに触るっていってもどうなるんだ?)

 魔術書の提案を怪訝に思いながら膝をおり、ティアリスの足を拘束している蔦に手を伸ばす。

「これは一体何があったんです?」

 手を伸ばしながらティアリスに問う。

 ティアリスは悔しそうに唇を噛んだ後に、シュウから目を逸らした。

「ここには、パーティを組んできた。

 魔物の討伐クエストを手伝わないかって誘われて」

 冷たく固い口調でティアリスはここに至る経緯を話し始める。

 シュウは蔦に触れながら、ティアリスの話を聞く。

 なぜかオーガ達は動く気配ないようだ。

「あと少しで目的地という所まで来て、対象と戦う前に休憩してた。

 軽戦士が目標を探しに行ったのだけど、あのオーガ達が出てきて……」

 ティアリスはオーガに目を向ける。

「オーガかゴブリンの魔術に捕らわれちゃったのか……。

 他の仲間は?」

 シュウは推測を話してみるが、ティアリスはさらに唇を噛んで、

「これは、オーガの魔術じゃない……。

 この魔術は……。

 私をクエストに誘った戦士のパーティにいた魔術師のものよ……!」

 ティアリスは悔しさに声が大きくなってしまう。

「え!?

 こ、これは、仲間に!?」

 予想外の言葉にシュウは驚きの声を上げる。

「逃げる前の話しぶりから、元々依頼の最中に何かしら私を罠にかけるつもりのようだったけど」

「な、なんでそんなことを?」

 続けて発せられたティアリスの言葉にさらにシュウは驚く。

「それは、わからないけど……。

 でも、私を囮にするために足を縫い止めて逃げて行ったわ」

「そんな……」

 こんなの……まるでトカゲが捕食者から逃げるための尻尾を切るような……。


 事情を説明して、少し落ち着いたのかティアリスがシュウに向かって言う。

「私は動けない。

 だから、あなただけで逃げて。

 冒険者になったばかりのあなたでは、あのオーガに勝てない。

 私の魔術でオーガの数も少ないから時間を稼いでみせるわ」

 そう告げて、肩に刺さっている矢に手をかける。

「う、ううううー」

 痛みに歯を食いしばりながら矢を引き抜く。

 矢のあった傷口から血が流れるのを、手で押さえる。

 それから、足は拘束されたままだが立ち上がろうとする。

「つっ……!」

 立ち上がろうと足に力を入れたティアリスが痛みに顔を歪める。

 倒れた時に捻ってしまったのかもしれない。

「そこの杖を取って。

 あなたを逃がすだけでも」

 少し離れた場所に転がる杖を指差してティアリスが言う。

 シュウがここに到着する少し前から降り出した雨が強くなってきた。

 ティアリスの綺麗な銀髪から雫が垂れる。

 シュウは立ち上がり杖の元まで歩く。

 杖を手に取り、ティアリスの横に突き立てる。

 ティアリスはその杖に手を伸ばし、

「ありがとう。

 さぁ、行って……」

 ティアリスが杖を握ろうとした瞬間、


 スッ


 と杖を引くシュウ。


「え?」

 戸惑う声を出すティアリス。

「何をしているの?

 早く返しなさい!

 あなたは行くのよ!」

 ティアリスが声を大きくし、シュウに手を差し出す。

 そんなティアリスに、


 バサッ


「えっ?」

 頭から分厚い布が優しく被せられた。

 シュウが杖を横に置き、魔法鞄から取り出した外套だった。

 続けて魔法鞄から自作のポーションを取り出し、ティアリスに差し出す。

 ティアリスは被せられた外套をはねのけ、

「何をしているの!

 あなたは早く行くのよ!

 杖を貸しなさい!」

 ティアリスはポーションではなく杖に右手を伸ばす。

 そんなティアリスにシュウは腰を落とし、目線を合わせる。

「ここは僕がやります。

 そして、一緒に逃げましょう」

 杖を求めて差し出された手を優しく取り、ポーションをそっと握らせる。

「その魔術が解けるまで持ち堪えてみせますよ」

 手を離し、はねのけられて落ちた外套をまた被せる。

「なんで……?

 あなたは私を……置いて逃げないの……?」

 外套の隙間から覗く驚いた顔のまま小さく呟く。


 ティアリスは自分の日頃の行いで他の冒険者に好かれているとは思ってない。

 自分が受けるクエストやパーティ募集に参加するのは魔物の討伐の依頼のみ。

 冒険者の依頼を管理しているギルドの受付が知っているのは当然だが、最近は他の関係ない冒険者もティアリスの受けるクエストの内容を知っている様子だ。

 シュウと一緒に冒険者となった日から数日は同時期に冒険者になった者や先輩冒険者に声を掛けられていた。

 治癒術が使えると知れるとクエストの同行にしてほしいとパーティ参加の依頼が増えた。

 その依頼の中には魔物討伐以外のものもあった。

 それが同ランク冒険者・先輩冒険者からの依頼でも討伐以外のクエストは断っていた。

 時にギルド内がざわつくこともあったが、ティアリスは関係なく討伐クエストを毎日受け続けた。

 段々と向こうからパーティに誘ってくることも少なくなった。

 近頃はパーティ募集の掲示を見繕って参加することが多くなってきていた。

 同時期に冒険者になった者たちもパーティを組み始めてきていたが、ティアリスがギルドに現れると隠れるように出て行き、声を掛け合うこともなくなった。


 周囲から避けられている。


 そう気づくのに時間はかからなかった。

 たくさんの人が集まるギルドの中でも彼女の周囲に人はいない。

 人除けの魔術の様に彼女の周りから人が去っていく。

 しかし、気づいても彼女のクエスト受注の内容は変わらない。

 どんなに天候が悪くても体調が良くなくても、受けるクエストは魔物の討伐。


 強くならなければいけない。


 その想いを糧に、どんなに周りから避けられても後ろ指を指されても無関心を貫く。

 こちらから関係ない事には干渉しない。

 だから余計な干渉はしないでくれ。

 そんな雰囲気を常に発するようになっていた……。


 ……そのツケが一気に回ってきたのが今日なのだろう。

 囮に利用できるだけして、彼女を助ける者なんていない。

 彼女の周りには誰も寄せ付けない空白地帯が広がっているから。

 

 ……そのはずだった。

 目の前の少年はその空白地帯に土足で踏み入ってきた。

 ギルドの前で別れたあの日から少年を意図的に避けてきたのはティアリスだったのに。


 シュウは外套の上からティアリスの頭に右手をおいて、

「泣いてる友達を置いて逃げれる訳ないでしょう?」

 諭すように話しかける。

 ティアリスはポーションを持たされた右手ではなく、左手で頬に触れる。

 そこに雨ではない今零れ落ちた熱を持った雫が手を濡らす。

「こ、これは……!?」

「逃げてって言っておいて、行かないでって顔してるのはずるいですよ」

 ティアリスの頭を右手で優しく撫でる。

「僕が来るまで頑張って耐えてたんだ。

 もう少し待ってて」

 優しく微笑み告げるシュウ。

「う、うっ……。

 わ、私は……」

 外套の隙間から覗くシュウの顔が涙で滲んだ。

 自分が泣いていると自覚すると、急に体が震える。

 雨に濡れた寒さだけではなく、オーガに突き付けられた剣による死の恐怖が今になって体を震わす。

「ポーション飲んで、その魔術が解けたら逃げる準備をしておいて。

 怖かったら先に逃げてもいいから」

 シュウの優しく撫でる手から熱が伝わるようなぬくもりがティアリスを包む。

 

 ……一人で逃げたくない。

 逃ゲナイト死ンデシマウ……。

 ……今逃げると負けてしまう。

 負ケテモイイジャナイ……。

 ……彼を残して逃げたら、あいつらと一緒になってしまう。


 そんなのは嫌だ!


 嗚咽を堪えるために口を引き絞って、ブンブンと頭を左右に振って応える。

「そっか、なら少し休んで魔力を回復してて。

 助けをお願いするかもしれない」


 コクッと今度は頭を上下に振って頷く。

「じゃ、いってくる」

 ポンポンと右手で優しくティアリスの頭を撫でてシュウは立ち上がる。

 離れていく手を惜しむようにティアリスの顔がシュウを追う。


 シュウがオーガに向き直る。


「話は終わったか?」

最初に書いたものから投稿する直前に短いかなと思い追加した部分があります。

だいたいどのくらいが読みやすいんでしょうね。

追加した文は書く予定になかった所なので今後どうなるか私自身もわかりませんが、

いい方向に転ぶといいなぁ……


編集

ティアリスに刺さった矢を抜く描写を追加しました。(忘れてた)

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