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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第二章 冒険者と仲間
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57.戦士

 シュウは剣を抜き、斧を持つオーガを油断なく見据え構える。

「援護します。

 先に逃げてください」

 後ろにいる冒険者に伝える。

 が、

「……どうして?」

 了承の返事が来るだろうと思っていたが、聞こえたのは小さな戸惑いの呟きだった。

「どうしてって、え?」

 その小さな呟きが耳に停まり言葉を返そうと思った時に、ふと頭によぎるものがあった。

(この声聞いたことが……)

 

 斧を構えるオーガが気になりつつも、後ろの冒険者の事も気になりだしてしまった。

 ここに走ってくるまで、目前に大柄なオーガが立っている圧倒的なピンチの冒険者に注意を向ける暇がなかった。

 チラッと横目で後ろを見る。

 そして、すぐにオーガに視線を戻す。

 見えたのは灰色っぽいローブを着て座り込んだ姿勢のまま長い銀髪の女性。

(ローブ……魔術師……長い銀髪?

 あ?)

 シュウは一瞬オーガの事を忘れて首ごと後ろを振り返る。


 座り込んだままこちらを驚いた顔で見上げるティアリスと目が合った。

「え?

 なんでこんな所にティアリスさんが?」

 思わず疑問が声に出てしまっていた。

「それはこちらのセリフです。

 どうしてあなたがここに?」

 驚いた顔から一転ムッとした顔になってティアリスが返す。

「え、あ、その……。

 近くにクエストで来てて、それでこっちの方から嫌な感じがして……」

 なぜか怒っているような顔のティアリスにしどろもどろになりながら、ここに来た経緯を話す。

(あれ?

 僕助けにきたんだよな?)

 助けに来たのに喜ばれていない気がする。


「それよりも立ってください!

 逃げましょう!」

 状況を思い出し、オーガに顔を戻してティアリスに言う。

 幸い、まだオーガに動く気配はなかった。

「……足が」

 後ろから小さいティアリスの声が聞こえた。

「足が動かないの……」

(足が?)

 ティアリスの声に再度驚いて、振り向く。

 そして、やっと彼女が陥ってる状況がわかった。

 植物の蔦のような物が地面から生え、彼女の両足を地面に縫い付けているのである。

 思えばシュウが彼女の姿を目に入れてからずっと同じ姿勢だった。

(どうしてこんなことに!?)

 シュウがティアリスの足のことに驚いている時に、


 シュウは何かわからないが良くない予感がして、敵の方に振り向き、剣を一閃した。


 ヒュッ!バキッ!


 一閃した剣が飛んできた矢を叩き斬った。

 そして、飛んできた方に目をやると一体だけ残っていたゴブリンが移動して矢を放ったのが目に入った。

 狙いはシュウではなく、ティアリスだった……。

 動けない彼女を狙ったことにシュウの中に怒りの炎が芽生える。


 と、そこにもう一人動く者がいた。

 シュウと相対していたオーガが斧を振りかぶった。

 そして、その斧を投げた。

 ()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()


 ゴスッ!


 斧はゴブリンの足元を爆発させるように刺さり、驚いたゴブリンは尻餅を付いた。


 斧を投げたオーガは無言でゴブリンに近寄り、地面に刺さる斧を手に取った。

 その際、小さくゴブリンに何か言ったように口が動いた。

 慌てたゴブリンは弓を捨て、未だに微動だにしない残りのオーガの後ろに走って行った。


 ???(オーガ)


 面白そうなヒト族が来た。

 偵察部隊ではないが、そこそこ気配察知には自信があった。

 現に数分前の別のヒト族の斥候役と思われた男の拙い隠蔽術は看破し、切り殺した。

 それが、目の前のヒト族は魔術を放つ瞬間まで全く気配がなかった。

 あの魔術が別人からの可能性もあったが、目の前のヒト族以外に周囲に気配は無く、自分に感知されない程の手練れが人族にゴロゴロいるとなると別の問題に発展する。

 それに、姿を現してからのあの移動術。

 なんらかのスキルかと思われるが、ヒト族に気付いて目をやった次の瞬間には目の前に迫っていた。

 体術をこの身に受けたが、久方ぶりの痛みという衝撃だった。

 ヒト族の年齢はわからないが切り殺した斥候よりも若いだろう。

 現れたヒト族が逃げ遅れた冒険者を庇う様に立つ。

 追撃が来るかもと斧を構えていたが、ヒト族は互いに顔見知りだったのか驚くような顔をしていた。

 今ならこちらから打って出ることもできる。

 だが、彼はしなかった。

 戦いは常に正々堂々とやり合い、楽しむものだ。

 逃げ遅れたヒト族は()()()足を拘束されており、それに気づいた途端興味がなくなった。

 同行していた同族はヒト族に止めを刺そうとしていたが、あんな抵抗もできないような状態で斬って何が面白いのか。

 しかし、目の前でこちらを伺いながらも後ろのヒト族を庇っているコイツは強い。

 中々の戦士だ。

 久しぶりの感覚に胸が躍る。

 後ろのヒト族と話をしているようだが、こちらにも気を配っている。

 

 部隊長の後ろに控えていたゴブリンアーチャーがコソコソと移動している。

 あいつは矢が無くなり、投石に切り替えていた。

 ヒト族の抵抗で放たれた魔術によって倒れているゴブリンの元で何かしている。

 倒れたゴブリンから矢を回収したようだ。

 矢を番えてヒト族に向けている。

 オレの楽しみを邪魔する気かと怒りが沸き起こる。

 怒声を発して止めようかと思ったが、遅かった。

 矢が放たれてしまった。

 狙いは倒れているヒト族の様だ。

 戦士の方ではなく安心し……。


 ヒト族の戦士がこちらに振り返り、手に持つ小剣を振り、飛んでいる矢を止めて見せた。


 その光景に口の端が自然と上がるのがわかった。


 面白そうなヒト族が来た!


 胸の中が歓喜に満ちる。

 この戦士と戦いたい!


 オーガは心の底から願う。


 視界の端でゴブリンアーチャーが矢を射った姿勢のまま驚いているようだった。

 オーガは手に持つ斧を振りかぶって、ゴブリンアーチャーの足元に向けて投げる。

 斧は狙い通りの場所に刺さる。

 ゴブリンアーチャーが足元に刺さる斧にまた驚き、尻餅を付く。

 オーガゆっくりと歩いて斧の元に行き、

「アレはオレの獲物だ。

 邪魔をするな」

 ゴブリンアーチャーに向かって命令した。

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