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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第二章 冒険者と仲間
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37.無言の威圧

 ランクEに昇格した次の日。

 宿からクランとリンを連れてルーツの屋敷へ向かった。

 

 昨日、宿ではクランとリンという客を連れて帰ってビアンゼとリームから大変喜ばれた。

 そして、気になった宿代について聞いてみると、客を呼び込むためにシュウに安く言ったとビアンゼが白状した。

 普通なら八〇〇ガルらしい。

 それを無理して安くしてくれていたらしい。

 これからもこのまま宿を維持してほしいと前置きしてシュウは自ら八〇〇ガルにしてもらった。

 クランとリンも前の宿から安く泊まれること、昇格クエストの報酬があるとこもあり、八〇〇ガルに納得してくれた。

 その日は、新たな客と昇格クエスト突破をみんなでお祝いした。


 ルーツの屋敷までもう少しといった所で、クランとリンの足が止まった。

「シュウさんなんかすごい圧を感じます……」

「わ、私も……」

 クランの訴えにリンも同調する。

「お、さすが二人ともこんな離れてても感じるなんてすごいね。

 ほらもう少しあのお屋敷だから、行こう」

 シュウは二人に構わずスタスタと指差した屋敷に向かう。

 二人は顔を見合わせ、遅れないように足を踏み出した。


 近づくにつれ重くなる圧に耐えるようにクランは足を進める。

 歩くだけで何もしていないが汗が流れる。

 同じ圧を感じているのかいないのか前を行くシュウはなんでもないように歩いている。

 やっと門の前まで来たところで、門の中を見るとーー。

 ……鬼が立っていた。

「ひ、ひぃ……」

 クランの後ろで同じように中を覗いたリンが泣きそうな悲鳴を短くあげた。

 気持ちはわかる。

 クランも一人で来ていれば、悲鳴を上げて回り右をしている自信がある。

 そんな二人を置いて、シュウは門をくぐって行ってしまう。

 シュウは数歩進んだとこで、こちらを振り返り、

「あ、あの鬼に見えてると思う方がルーツさんだよ。

 初めて見たらちびりそうな程怖いよね~。

 さ、入ってまず挨拶しよ」

 ニコニコした笑顔をこちらに向けてシュウは再び歩き出した。

 このまま門の前で立ってたほうが怒りを買って危なそうだと意を決し、

「い、行くぞ。リン」

 と、妹を促し一歩足を踏み出す。

 その後ろで小さく

「……少しだけ。

 少しだけだもん……グスッ」

 と、小さな呟きが聞こえたが、詳細は妹の尊厳を保つためにも聞かないでおくとしよう。


 クランとリンが恐る恐る入ってきて、シュウの後ろまで来た。

「ルーツさん。こんにちは!

 今日は昇格クエストを突破した報告とその時一緒になって、パーティを組んでもらった二人を紹介したくて連れてきました。

 こっちの男の子がクランで女の子がリンです。

 今後もパーティとして一緒に活動しようと思って、パーティの動き方とかについてまたご教授頂きたいんですが」

 シュウがクランとリンを紹介する。

「ク、クランです」

「……リ、リンです」

 リンはいつも以上に緊張しているのか、声も小さくもじもじしているようだった。

「俺が……」

「あなた……」

 ルーツが自己紹介をしようと口を開きかけたところに、ルーツの後ろから声がかかった。

 ルーツが驚きを隠さずに後ろを振り返る。

 シュウも驚いてルーツの後ろを覗くと、顔は笑顔だが雰囲気が笑ってないフランがそこにいた。

 見えないはずオーラが金色に輝き立ち昇っているようだ。

 これはまるで後光……!?

「あなた、いつも初めて来る方の気配を感じると試験だ、と言って鬼気闘装を使われますが、こんな幼気な女の子にまで使わなくてよいでしょう?

 もう、ほらこんなに怯えてしまって。

 早く納めてくださいまし。

 ほらほら、リンさんって言ったかしら?

 こっちに来て」

 ルーツさんの鬼気闘装に勝るとも劣らないオーラを放ちながら、ルーツに詰め寄る。

 ルーツもそれに気圧されると同時に鬼気闘装を解除した。

「すまん」

 しゅんとしてしまったルーツを放置して、リンを手招きするフラン。

 リンは驚きシュウをちらっと見て俯き、もじもじしながらフランに連れられていった。

 その顔は耳まで真っ赤だった。


 数分後フランに連れられリンが戻ってきた。

 真っ赤ではないが、まだ耳がピンクっぽい。

 シュウを見ずにすごすごと通り過ぎ、クランの陰に入ってしまった。

 中でなにがあったのだろうか。

 フランはいつもは用事が無くなれば屋敷に戻るのだが、笑顔のままルーツの後ろに立っている。

「コ、コホン。

 俺がルーツだ。

 ここで薪を作って売っている」

 コツッとフランが足音をさせて前に出た。

 フランさんも足音するんだな~とシュウは暢気に考えていた。

「こ、こっちがーー」

「ルーツの妻のフランでございます」

 フランがルーツの言葉を横取りし、自己紹介をして丁寧なお辞儀をする。

「「よ、よろしくおねがいしますっ!」」

 クランとリンもフランに向かってお辞儀を返した。

 ルーツさんは紹介しようと上げかけた手の行き場に困り、頭を掻いていた。

 珍しく助けて欲しそうな目をシュウに向けている。

 いや、僕にそんな目を向けられても……

「え、えーと。

 ルーツさんとは、住民クエストで毎日薪を割る手伝いのクエストを受けて知り合ったんだ。

 そして、剣術や戦いに関することにも精通してるから、いろいろ教わってるんだよ」

 クランとリンにルーツとの出会いから説明し、場の雰囲気を変えようと試みた。

「ルーツさん。

 この二人も一緒にEランクに昇格しましたが、僕同様に冒険者になって日が浅いので、基礎的な動きを教えてあげてほしいのですが」

 今度はルーツに二人の状況を説明する。

「「よろしくお願いします!」」

 二人が今度はルーツに向かって頭を下げる。

「う、うむ。

 順序は逆だが、また薪割りのクエストを出しておくのでふた」

「リンさんにも薪を割らせるのですか?

 女の子にさせるのですか?」

 ルーツがシュウと同じように二人も薪割のクエストを受けさせようとしていたが、途中でフランが遮った。

「だ、だが、この子たちはパーティで……

 クエストはパーティで……」

 ルーツはしどろもどろになりながら説明しようとしている。

「じゃ明日、ここに来る前に三人でギルドに行って、薪割のクエストを受けなおしてこようか?」

 シュウはクランとリンに向け提案する。

 フランの方は見ない。絶対にだ!

「ルーツさんが薪割をやらせたいのは、硬い木があって、それを斧で割るのに剣気の流れを掴ませる狙いがあるからなんだ」

 二人にルーツが薪割のクエストに拘る理由を説明する。

 ルーツ的には自分の力で気づいてほしいところだろうが、このままだとルーツへのフランのプレッシャーが収集付かなくなりそうだった。

「剣気の流れを掴むのは、リンにとっても無駄にはならないと思うから掴むとこまでは一緒にやって、薪は僕とクランで頑張ろう」

「そ、そうだな。

 クエストには人それぞれ向き不向きがあるからな。

 剣気を知っていれば、いろいろなところで応用が効く」

 ルーツさんもその提案に賛成のようだった。

 ただリン本人が、

「でも、私だけ楽をするのは……」

 リンがパーティで受ける薪割のクエストで自分だけ実際には薪を割らないのはどうかと悩んでいる様子がありありとわかる。

 別に他のクエストでも役割によって向き不向きが生じるので気にすることはないと思うのだが……。

「では、リンさんにはお二人が薪を割っている間は私のお手伝いをしていただきましょう!」

 手を打ち合わせて、フランが提案する。

 ルーツが勢いよくフランに振り返る。

「そ、それはだいじょ」

「リンさんもお二人がお仕事している間、自分が何もしないのは心苦しいかと思いますので、その間、私のお手伝いをしませんか?」

 フランがニコっと笑顔をリンに向ける。

 リンは迷う素振りを見せながら、クランとシュウに目で尋ねる。

 二人はリンに頷いて応えた。

「お、お願いします」

 リンはフランに再度頭を下げてお願いをした。

「はい。お願いされました」

 フランも笑顔でリンに答えていた。

 フランとルーツの事情を察しているシュウと初めて二人に会うクランは二人の関係をだいたい察して、寂しそうにしているルーツを少し不憫に思うのだった。

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